おっさん暴れる

「ふざけんなよ糞がー!!」


よう。アトゥム神に転生させてもらったおっさんこと、ジャンだ。

つい先日に、自分の頭がおかしくなりそうな具合の異常さに気付いたので、手加減を覚えるために森に入ったんだが…………。どうやらこの森もまた異常なようだ。



ハイ・ゴブリン:Lv98.属性:無,地.耐性:地.弱点:斬,風



ファンタジー定番のゴブリンの、どう考えても進化後の、しかもレベルが百近い。これだけでも十分頭が痛くなるが、ゴブリン種と言えばやっぱり群れ。つまり、


「レベル百前後が千単位で群れてるとか、頭可笑しいのかこの森はー!!?」


現在その群れ軍団に追われてます。


「くそっ。これじゃ手加減なんて言ってる場合じゃねぇな。ハァハァ しゃあねぇ!」


俺は一度ゴブリン軍団との距離を確認し、今一番殲滅に最適な方法を探しだす。


「やっぱり魔法だな。無詠唱にすりゃ威力も押さえられるだろうな、と。ここで良いか。」


未だ森の中ではあるが、少し開けた場所に辿り着く。しかし、


「ギャアギャア!」


「おいおい、まじでか。まさかこいつら、ここが本拠地だったのかよ!?」


これは、周囲の被害がどうとか以前に俺がヤバい。既に俺に気付いて向かってくる個体がちらほら。しかもなんか滅茶苦茶歴戦の猛者な空気オーラを纏ってやがる。


「何で雑魚の代名詞がこんなヤバいオーラ垂れ流してんだよ。駄目だな。環境破壊はしたくなかったんだが、な。」


溜め息を一つ吐き、逃げ回りながらも感じていた魔力に集中する。


「飛べ、≪八咫やたの翼≫」


そう呟くと、俺の背中から真っ黒な翼が四対八枚生えてくる。

これは俺が作った魔法で、効果は単純に空を飛ぶだけ。ただ、一対二枚の羽だとバランスが取りづらく、若いの位しか使いこなせなかった。その後、見た目と飛翔時両方の点のバランスを鑑みて、この数になったのが、この≪八咫の翼≫だ。


「死ね、ゴブリン共。≪科学の勝利サイエンス・ウィン≫」


ゴブリンが使っている弓矢が全く掠りもしない高度で、最悪の魔法を発動する。

これは、空気を圧縮した爆弾をほぼ無限に打ち続ける魔法だ。しかも、何の補正が懸かっているのかは分からないが、爆発した瞬間に、約3倍程の重力が発生する。

勿論、使い手が放出を止める事は出来るのだが、それまでに打ち出された物が消える訳ではない。


「しまった!ストップ!」


ジャンが途中で止めたから良かったものの、このまま打ち続けていたら、確実にこの森が消え去っていただろう。

魔法と科学が噛み合うと、真に恐ろしいものを生み出すようだ。



▲▼▲▼▲▼▲



「ギ、ギギ。」


運良く生き残ったそのゴブリンは、目の前の敵の異常とまで言える強さを目の当たりにしても、戦意を失わなかった。それは同胞のかたきをとると言う理由もあるのだろう。しかし、彼の胸の大半を占める感情は歓びであった。未だ見た事のない強者。それが目の前に居る。そう考えるだけで、身体中の血が湧き、躍るのであった。

彼は、武力でゴブリンを纏めた戦士だった。



▲▼▲▼▲▼▲



「ん?」


どう考えてもやり過ぎオーバーキルもの魔法を使い反省をしていると、戦意の籠った視線がこちらに刺さる。

どうやら、俺が潰してしまったゴブリンの国の王様らしい。俺が言うのもなんだが、こんなあぶねぇ魔法をぶっぱなすおっさん相手によく逃げねぇもんだな。


「ギギ、ギャア!」


何言ってんのかは全く分からんが、この眼を見る限り、どうやら俺に戦いを挑みたいらしい。


「良いだろう。もし俺に勝ったら、おめぇにぴったりの武具を拵えてやりゃあ。……練習は必要だから多少時間は掛かるがな。その代わり、俺が勝ったら俺の下につけよ?」

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