第8話


 「どうぞ」


 俺は恐る恐るリビングの扉を開き、ジュリアを中へ招き入れる。

 ジュリアを家の中に入れて良いものなのかかなり迷ったが、CIAの捜査協力を断る事訳にはいかない。

 それにもし断る事が出来たとしても、彼女はそれを不審に思い、うちへのマークをより強めることだろう。今だって連日緊迫状態が続いているのだ。そんな状況がさらに過酷さを増せば、俺も母ちゃんも精神的にまいってしまうのは間違いない。


 幸い今のミラは、カクタスが承認した者しか知覚する事が出来ないらしいので、ジュリアを家の中に入れてもさほど問題はないだろう。と言うか、これは逆に彼女の疑惑を晴らすチャンスでもある。ジュリアに家の中を捜索させ、どこにもミラ達が居ないという事を確認してもらえば、俺達の疑いも晴れるかもしれない。


 ただ、一つ不安があるとすれば美鈴の事だ。

 ジュリアはうちの家族構成を把握しているだろうから、美鈴が居る事に必ず疑問を抱くはず。

 しかし、こればかりはどうする事も出来ない。親戚の子を預かっているとか適当なことを言って、この場は乗り切るしかないだろう。そう思い立った俺は、意を決して彼女の提案を呑む事にしたのだった。


 ジュリアはリビングを軽く見渡した後、「ふーん。日本人の家って殺風景なのね」と言って、中央に設置されたテーブルの椅子へと腰掛けた。どうやら本当にミラの姿は見えていないらしく、ソファーに座っている裸エプロンの宇宙人の存在にまったく気付いていないようなのだ。

 ステルスモードが正常に作動している事を確認した俺は、彼女に気付かれないよう安堵の息を漏らした後、ミラの方へと目を向けた。


 ミラは先ほどと変わらず無表情のままだったが、頭の上に生えた触覚がピンと伸びている事から察するに、かなり警戒しているようだ。その証拠にすぐさまソファーから立ち上がろうとしたが、俺は小さく首を横に振りミラの行動を制した。今ここで下手に動いて物音などを立てられては、ジュリアの警戒心をより強める事になると思ったからだ。ミラもその真意を受け取ってくれたのだろう。小さく頷くと、そのままじっと彼女を見つめ静かに観察し始めた。それを見届けた俺は、キッチンへ行きインスタントコーヒを入れた後、湯気が立ち上るマグカップをジュリアの前に置き、彼女の向いの席へと腰を下ろした。


 「それじゃあ、早速貴方の話を聞かせてもらえるかしら?」


 ジュリアはマグカップを手に取り、コーヒを一口飲むと鋭い視線をこちらに向けた。


 「その前に、なぜ俺達があの日、プリン山に行った事になってるんです?何を根拠にそんな事が言えるんですか?」


 そうなのだ。まだこいつにミラ達の事がばれているとは限らない。

 もしかしたら俺にカマをかけているのかもしれない。

 仮にミラがここに居る事を知っているなら、他の捜査官や自衛隊と共に押し入って来てもいいはず。なのに、なぜこいつは一人でやってきたんだ?裏を返せば、こいつはまだ確証を得ていないっていう事じゃないのか?


 「ふふっ、根拠ねー。まるで犯人の常套句ね。まぁ、いいわ。なぜ私が貴方達に行き着いたか説明してあげる。それはねーー」


 ジュリアはマグカップをテーブルに戻すと、両腕を組みながら俺を見据えた。


 「ーー靴よ」


 「......靴?」


 「えぇ、そうよ。あの事件の前日、大雨が降ったでしょ?かなりの降水量だったみたいね、地面はすごくぬかるんでいたわ。だから当然、登山者の靴跡もくっきり残っていたの」


 「!!?」


 「あの日、山に行った人間はそう多くはなかった。まぁ、当然よね。ぬかるんだ山道なんてかなり危険だもの。私の調べたところによると入山者は四人。その内の二人はバードウォッチングをするため入山したそうよ。けど、あまりにも地面が滑りやすかったため、山頂には登らず途中で引き返したそうなの。じゃあ残りの二人はと言うと、しっかり頂上まで登っていたようね。その証拠に、山頂にはくっきりと靴跡が残っていたわ」


 靴跡だって?!たかがそれだけで俺と織春のもとまで辿り着いたっていうのか?

 どんだけスゲーんだよCIA!


 「へっ、へぇー。そうなんですね。でも、その靴跡と俺達が何の関係があるんです?」


 「あくまでもしらを切るみたいね。まぁ、いいわ。それじゃあ教えてあげる。靴跡を見ればその人がどいう人物なのか?だいたい検討がつくの。例えば、靴のサイズや靴跡の深さからその人物の身長や体重が大方予想できる。それだけじゃないわ。メーカーや種類を割り出し、靴跡から得た身体的特徴と照らし合わしながら捜査を続けていけば、その人物に辿り着く事なんて雑作も無い事よ」


 「..................」


 「そうそう。玄関にあった貴方のスニーカーね、山頂で発見されたものとまったく同じ種類なの。あのスニーカーを調べれば、あの山と同じ土が靴の溝から出てくるんじゃないかしら?おそらく、八雲 織春の靴からもね......。これで理解していただけたかしら?」


 ジュリアはテーブルの上に両肘をつき、顎の下で両手を組むとニヤリと笑った。

 ダメだ......。これだけの物的証拠をつきつけられては、俺達がプリン山に行っていませんでしたなんて言えるはずがない。ここは山に行った事は認めて、その後は知らぬ存ぜぬで通すしかない。


 「わっ、分かりました。本当の事をお話しします。貴方のいう通り、あの日、確かに俺と織春はプリン山に行ってました。でも、急に隕石が降ってきて慌てて家に帰ってきたんです」


 「ふーん。じゃあ、なぜそれを黙っていたの?最初からそう言えば良いじゃない」


 「そっ、それは......目立つのが苦手というか......もしそんな事を知られれば、マスコミがうちに押し掛けて来るかもしれないでしょ?それが嫌だから黙っていたんです......」


 「なるほどねー」


 ジュリアは再び両腕を組み、背もたれに体をあずけると不敵な笑みを浮かべる。


 「で、本当にそんな嘘がこの私に通用するとでも思っているの?」


 「え?!」


 急にジュリアの眉間に皺がより、その眼光に鋭さが増した。


 「貴方、さっき言ったわよね?慌てて家に帰って来たって」


 「はっ、はい」


 「じゃあ聞くけど、どうやって帰って来たのかしら?貴方達の靴跡は、行きのものしか発見されていないの。帰りのものはどこを探しても見当たらなかったわ。それっておかしいわよね?まるでその場から一瞬でいなくなったみたいな......まさか貴方達、空でも飛べるのかしら?」


 「そそっ、それはーー」


 俺の言い訳を遮るようにジュリアが言葉を続ける。


 「ーーそれに、隕石が降って来たなんてのも嘘よね?貴方達は、あそこであるモノに遭遇したはずよ。じゃないと、こんな奇妙な事にはならないわ。さぁ吐きなさい!あそこで一体何があったの?!」


 ジュリアは声を荒げ、机をバンと叩く。

 くそ......。どう考えてもこれ以上ミラ達の事を隠し通す事は出来ない。

 嘘を突き通す事も可能だが、それでこいつが納得するとは到底思えない。

 何か他に策はないのか?と、死に物狂いで頭を働かせていたその時、ふいにミラが立ち上がり、その美しい顔をこちらに向けた。


 ーー夜真十様、聞こえますか?私です、カクタスです。聞こえているなら声は出さずに、心の中で返事をしてください。


 突然頭の中にカクタスの声が響いた。

 一瞬驚いた顔になった俺を見てジュリアは訝しげに目を細めたが、まだこちらの事を悟られた訳ではなさそうだ。


 (カクタス?!......一体どうやって?)


 ーーまぁ、テレパシーってやつですよ。それはさておき、この者に我々の事を知られるのはかなり危険です。よって、これから対処を行います。


 (おいおい!対処ってまさか、殺すつもりじゃないだろうな?!)


 ーー安心してください。そんな野蛮な事はしませんよ。ただ、夜真十様にも協力していだきますので、あしからず。


 (協力って......一体何を?)


 カクタスの言葉と同時にミラがこちらまでやって来たかと思うと、いきなり俺の後頭部から髪の毛を数本むしり取った。


 「痛って!」


 「なっ、何よいきなり!?貴方、さっきからちょっと様子がおかしいわよ」


 「いっ、いや。急に偏頭痛が......」


 ジュリアは一瞬何か言いかけたが、後頭部をさすりながら苦笑いを浮かべる俺を見を見て、あきれたように首を振る。


 「はぁ......まぁ、いいわ。それでどうなの?そろそろ白状した方が身のためだと思うけれど!」


 再び真剣な顔に戻ったジュリアは、腕を組み直し威圧的な態度で俺を見据える。

 そんなジュリアの横にミラがすっと移動したかと思うと、まるで拾って来た貝殻でも見せるように彼女の目の前で右手を広げた。一体何をする気だと不安にかられた俺は、ミラの掌へと目をやった。

 そこには先ほど俺からむしり取った髪の毛が数本。それがフワフワと宙に浮き出したかと思うと、淡い光を放ちながら徐々に細かい粒子へと姿を変えていく。だが、それだけでは無い。その光の粒子は弧を描きながら互いに連結し合い、まるでDNAの二重螺旋構造を思わせる形へと変化していったのだ。


 「ちょっと!ちゃんと話を聞いてるの?!あくまでも黙秘を貫こうて言うなら、こちらも手段は選ばないわよ!」


 とうとう痺れを切らしたジュリアは、急に立ち上がり懐から拳銃を取り出すと俺の眉間へと狙いを定めた。


 「おっ、おい!ちょっと待て!なんちゅう物騒なもん出してんだよ!」


 「貴方が一向に話そうとしないからよ。私達CIAは殺しも任務の内なの。相手がこちらの要求に応じない場合、強硬手段に打って出るのは当たり前でしょ?そうね......貴方を殺した後、この家をじっくり調べさせてもらうわ」


 両手を上げ震え上がる俺を見下ろし、ジュリアは冷笑を浮かべる。その目にはドス黒い殺気が満ちており、これが脅しじゃない事をひしひしと感じさせた。

 ジュリアが拳銃の安全装置を外し、いよいよ引き金を引こうと指に力を込め始めたその時、彼女の隣に立っていたミラが突然行動を開始した。


 ミラが掌に優しく息を吹きかけると、光の粒子はぱっと飛び散り、あたかも意志があるかのようにジュリアの鼻の穴から体内へと流れ込む。

 そして、全ての粒子がジュリアの体内に収まった次の瞬間、突如、彼女の体に異変が起こった。

 急に顔が赤らみ、今までつり上がっていた目はトロンと垂れ下がって大きく息が乱れていく。


 「はぁ、はぁ、なっ、何なのこれ?......かっ、体が勝手に......」


 俺に向けられていた銃口がゆっくりと下がっていき、やがて彼女の手から滑り落ちるようにして拳銃がゴトンと床に転がった。ジュリアは両手で自分の体を抱え、ブルブルと身を震わせる。そして急にフラフラとそのまま床に倒れ込んだのだ。


 「おっ、おい!大丈夫か!急にどうしたんだ?!」


 何が何だか分からないまま、すぐにジュリアのもとまで駆け寄った俺は、彼女の肩を揺し意識の有無を確かめる。


 「ダッ、ダメ!触っちゃ、あっ、あ~~ん」


 ジュリアは体をくねらせ、奇妙な声を発しながらビクビクと痙攣し始めた。


 ーーふー。これでしばらくは安全です。当分の間、彼女が夜真十様に危害を加える事はありません。


 困惑しながらジュリアの体を揺すっていた俺の頭に、再びカクタスの声が響く。

 ふと顔を上げると、ジュリアを見下ろすミラの胸の上でカクタスが満足そうな笑みを浮かべていた。


 (おい、お前!コイツに何したんだよ!)


 ーー落ち着いて下さい、命に別状はありません。これはスレイヴモードと言いまして、自分の思うがままに相手を支配できるモードなのです。と言っても、彼女の支配権は私にではなく、今のところ夜真十様にあるのですが。


 (支配権?!一体どういう事だ?)


 ーー先ほど夜真十様からいただいた髪の毛を媒体に、彼女を操作するプログラムを創り出しました。彼女が夜真十様に危害を加えようとすると、防衛システムが作動し、ある感覚に襲われるようセットしておいたのです。


 (ある感覚?......それって、激痛とかじゃねーだろうな!?)


 ーーいいえ、快感です。


 (はっ?快感?!んじゃ何か?こいつは今、苦しんでるんじゃなくて......その......つまり、感じまくってるって事なのか?)


 ーーはい、いかにも。彼女は今、想像を絶する快感に襲われているのです。夜真十様が近くに居るだけで立ていられないくらいですから、そんな風に触られでもしたら、それはもう......。


 カクタスの言葉を理解した俺は、すぐにジュリアから手を離した。

 すると先ほどより少しだけだが彼女の痙攣が収まっていく。


 (おいおい!何だよそれ?!そんなモード、とっとと解除してやれ!)


 ーーそれは出来ません。これ以上、彼女にこちらの事を詮索される訳にはいきませんので。


 (そりゃ、そうだけど......)


 ーーそれに、このまま彼女を放置しておけば、ミラ様や美鈴様はおろか、九家や八雲家の皆様にまで危険が及ぶ可能性があります。そのような事は絶対に避けなくてはなりません。


 確かに、カクタスの言う通り。こいつはかなりの危険人物だ。

 カクタスが対処を行っていなければ、俺は今頃、命を落としていたかもしれない。

 いや、俺だけならまだいい。もしかしたらこいつは、母ちゃんや美鈴まで手にかけていたかもしれないのだ。そんな奴を野放しにしておくよりかは、ちゃんとこちらで手綱を握っていた方が得策かもしれないな......。


 (分かった。こいつには悪いが、少しのあいだ大人しくしててもらおう)


 ーーご理解いただけて何よりです。それでは早速、夜真十様には彼女と主従の関係を結んでいただきます。


 (は?まだ何かやんのか?)


 ーーええ。これはあくまでも下準備。スレイヴモードを完全に定着させるためには、夜真十様が彼女を屈服させなければなりません。


 (屈服って......どうすりゃいいんだよ?)


 ーー簡単です。彼女に夜真十様の方が上だと認めさせれば良いのです。そうすれば、彼女もいま受けている快感から解放されます。そうですね......試しに彼女の胸でも揉んでみましょうか?


 「はー!?アホかお前!」


 思わず声を上げてしまった俺は、慌てて両手で口を塞ぐ。


 (何でそんな事しなくちゃなんねーんだよ!もっと他に方法は無いのか?)


 ーーありますよ。一番手っ取り早いのは、彼女の股間をまさぐる事なんですが、それ、出来ます?


 (出来るか!!!)


 ーーですよねー。なら胸しかないです。


 (だから何でそうなる!てかそもそも、何で快感なんてものをチョイスしたんだよ!感覚なんて他にも色々あったただろが!)


 その問いにカクタスは、真剣な面持ちで答える。


 ーーさっきCIAなるものをググってみましたが、主にスパイ活動を行う機関だそうですね。なら当然、拷問に耐える訓練なども行っていたはず。おそらく、飢えや苦痛を与えるくらいでは彼女の心を折る事は出来ないでしょう。ですからあえて、『快感』を彼女にセットしたのです。まぁ時として快楽は、苦痛より遥かに人間のたがを外しやすいそうでですから、平和的に事を進めるには絶好の感覚と言えるでしょう。


 無抵抗な女子の胸を揉む事のどこが平和的なのかは分からないが......なるほど。言われてみればそうかもしれない。苦痛などは訓練によっていくらか我慢できるようになるのは確かだ。

 自慢じゃないが俺も痛みにはかなり強い方だ。なにせ、小さい頃から修行と称して母ちゃんに護身術など、あらゆる事を叩き込まれたせいでケガを負う事なんてしょっちゅうだったしな。

 今じゃ骨が折れたくらいの痛みなら、余裕で耐える事が出来る。

 だが、快感はどうなんだろう?仮に立場が逆だったとして、想像を絶する快楽を前に、俺は平常心を保ている事が出来るのだろうか?


 ーーまぁそんな訳で、今の彼女は夜真十様に触れられるだけで昇天しそうなほど敏感になっていますから、胸を揉むだけでもかなりの効果が期待出来ると思うんです。あっ、そうそう。一つ重要な事を言い忘れていました。


 急にカクタスが目を細めこちらを見据えた。


 ーースレイヴモードはすごく便利なモードなんですが、一つリスクがあるのです。


 (リスク?)


 ーーはい。制限時間内に相手を屈服させる事ができなければ、支配権が相手に渡ってしまい、代わりに自分がその苦しみを味わう事になるのです。制限時間はこの星で言うところの五分ですから、そうですね......残り三分弱といったところでしょうか?


 (なにー!!!それを早く言え!)


 冗談じゃない。もし立場が逆転してしまったら、止めどなく続く快楽に耐え切れず俺はミラ達の事をべらべらと喋ってしまうだろう。そうなれば当然美鈴の事もバレ、どこかの研究施設に送られてしまうかもしれない。それだけは絶対に阻止しなければならない。


 それに、こいつに支配権なんて持たれた日にゃ大変な事になる。

 さっき会ったばかりだが、こいつの言動や行動を見る限り確実にSだ。

 そんな奴を主人に持てば、何をさせられるか分かったもんじゃない。

 ゾッとしながらも俺は、即座にジュリアを仰向けにし、そのはち切れんばかりに盛り上がった双丘へと目を向けた。


 落ち着け、ちょっとだ。ちょっとだけ触らせてもらえば良いだけの話じゃないか。

 そうすればこいつもこの苦しみから解放され、俺もみんなを守れる。全て丸く収まるんだ。

 と、自分を正当化しつつ彼女の胸に両手を伸ばす。


 ーー残り二分です。


 カクタスの非情なカウントが鼓膜を揺らす。

 くそ!カクタスの野郎、こんな事させやがって後で覚えとけよ!と 、俺は苛立ながらもYシャツ越しにジュリアの胸を優しく握った。


 「え?!なっ、何?あんた何やって、あっ、あ〜〜ん」


 ジュリアはピンク色の声を上げながら、再びビクビクと痙攣し始めた。

 それにしても......デカイ!服の上からでも分かっていた事だが、彼女の胸は想像以上に大きく、全然手の中に収まる気配がない。いや、驚いた事はそれだけは無い。

 なんとジュリアはノーブラだったのだ。そのせいで彼女の体温や胸の柔らかさが、薄い布一枚を通して俺の手に伝わって来る。


 「すまん!お前のその苦しみを止めるには、こうするしか方法がないんだ!」


 自分に都合の良い言い訳を並べながらも俺は必死でジュリアの胸を揉む。

 彼女の胸はまるで水風船のように柔らかく、グッと力を込めるとその余肉が指と指の間からはみ出てきた。


 「あっ、あ〜〜ん。ダメ〜〜」


 ジュリアは悶えながら、さらに顔を紅潮させていく。

 だが、一向に屈服する気配はない。それどころか、歯をグッと食いしばり迫り来る快楽を必死に押さえ込んでいるようなのだ。


 ーー夜真十様、急いでください!残り一分を切りました!


 今まで何食わぬ顔で見物していたカクタスもとうとう焦りだしたのか、声を荒げ残り時間を告げ始めた。

 くそ!このままじゃらちがあかない。もはや手段を選んでる場合じゃねー!

 そう覚悟を決めた俺は、ジュリアの上にまたがり、彼女のYシャツのボタンを引きちぎって直接胸を揉みしだく。


 「はぁ、はぁ、ちょっ、ちょっと、やめーー」


 「ーーうるせー!俺もやりたくてやってるんじゃねー!でも、こうでもしねーと大変な事になるんだよ!」


 自分でも何をやっているんだとほとほと情けなくなったが、他に手がない以上仕方がない。

 だが、その選択は間違っていなかったようだ。ジュリアは弾かれたように痙攣しだし、固く結んでいた口元が徐々に緩んでいく。


 ーー残り十秒。夜真十様このままじゃーー


 「ーーうるせー!分かってるよー!うおおぉぉぉぉー!」


 俺はジュリアの胸の突起物を重点的にこねくり回し、最後の賭けに出る。


 「はぁ、はぁ、ダッダメ、許して......それ以上されたら......わたし......」


 「ぬぅおぉぉー!いっけーー!!!」


 「ダッ、ダメェエエェェ〜〜〜〜」


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