第4話


 『ーーと、言う訳なんですよ。いやー参りましたー』


 事の顛末を話し終えたカクタスは、丸い目と口をカシューナッツのような形に変形させ、『はははは』と陽気に笑う。その笑い声に連動して、ミラは腰にあてていた右手を頭の後ろにやり軽くのけぞった。いわゆる『いやー参った』のポーズだ。

 さっきからカクタスが話す度、ミラは全身をフルに使ってその時の状況を表現していた。俺も話すとき多少身振り手振りはするが、ミラのは動きは大げさで、しかも妙に躍動感がある為どちらかというとパントマイムに近い。

 だが、やはり顔は無表情のままだ。おそらくだが、体を動かしているのはカクタスで、ミラはされるがままなのだろう。じゃないと、あんな二人羽織ににんばおりみたいな印象は受けない。


 「おい、夜真十。......これは一体どういう事だ?何で服が喋ってる?あれはピョン吉の親戚か何かか?」


 と、今まで横でおとなしく話を聞いていた母ちゃんが、青白い顔で訳の分からない質問を投げかけてきた。まぁ、状況が呑み込めなくて当然だ。こんな現実離れした出来事を素直に受け入れられる奴の方がおかしい。俺だって未だに信じられないのだから。そもそも母ちゃんがこういった事に否定的なのは、幽霊や宇宙人といったオカルト的なものが大の苦手だからだ。だからそういったものはこの世に存在しないと自分に暗示をかけ、恐怖心を押さえ込んでいるのだ。


 同じ否定的でもオカルトなんてはなから信じちゃいない俺に対し、母ちゃんは信じているからこそ逆にそれを認めたくない、といった、とても面倒な性格なのだ。

 それにしても......ピョン吉はないだろう。どう見てもカエルじゃなくハニワじゃないか。それに、あいつのまぬけ面からはど根性など微塵も感じない。

 ここでちゃんと突っ込んでやるのが、子の優しさというものなのだろう。


 ーーだが、そんな余裕は無い。


 今のカクタスの話を聞いて、早急に確かめなくてはならない事が出来たからだ。

 俺はひとまず母ちゃんの質問を無視し、すぐさま話のまとめに入った。


 「んじゃ何か?お前とミラは、地球から二百四十五万光年離れたアンドロメダ銀河の中にある惑星ケプラスってところから重大な使命を負ってこの地球にやってきたと」


 『はい』


 「んで地球の大気圏近くで待機していたら、突然、巨大な小惑星とぶつかってプリン山に墜落してしまったと」


 『そうです』


 「その事故の原因は......お前が地球のアニメに夢中になって警戒をおこたったからだと、そう、お前は言いたいんだな?」


 『はい!おっしゃる通りでございます!まったくyoutubeは最高ですね!』


 「それって............全部お前のせいじゃねーかー!!!」


 俺は怒りのあまりカクタスに飛びかかろうとしたが、後ろから織春に羽交い締めにされその場でじだんだを踏む。


 『いやーそれにしても日本のアニメは面白いですねー!でも個人的にはセル戦で終ってた方がよかったと思うんですよねー。そこんとこどう思われます?』


 「離せ織春!あいつは殴る!絶対殴るー!」


 「おっ、落ち着け夜真十!あいつを殴ったら、あのミラって子まで殴る事になるぞ!」


 「くっ......」


 俺は拳を握ったままカクタスを睨む。

 何が惑星ケプラスが生んだ宇宙一の人工知能だ。自己防衛すら出来ないただのポンコツじゃないか。それにどうやってインターネットに接続したんだ?まさかあの流暢な日本語もアニメで勉強したとか言うんじゃねーだろーな!

 再び頭に血が上りかけた俺の背後から、織春の冷静な声が響く。


 「それで、重大な使命ってのは何なんだ?まさか、地球を滅ぼしに来たとか言うんじゃないだろうな?」


 織春のその問いに急にカクタスの表情が変わる。

 穴のような目をぐっと閉じ、口をへの字に曲げ考え込むそぶりを見せたのだ。

 どこか顔文字を思わせる滑稽なものだったが、先ほどとはまるで違い、その面白い表情の中にも真剣さが滲み出ている。どうやら部外者に機密事項を話して良いものなのか迷っているようだ。

 熟考の末ようやく考えがまとまったのか、カクタスはゆっくりと目を開き俺達を見据え話し始めた。


 『いいえ、この星には学びに来たのです。お気づきかもしれませんが、ミラ様には感情と呼べるものがほとんどありません。いや、ミラ様だけでなく全てのケプラス星人が感情を失ってしまったのです。それを取り戻すため、我々はこの星へとやってきたのです』


 そう言った後カクタスは、惑星ケプラスの現状について語り始めた。

 カクタスが言うにはミラ達ケプラス星人は今、絶滅の危機に瀕しているという。

 その理由は、感情を喪失する事によって引き起こされる『無関心』が原因らしい。

 一見何も問題なさそうに思えるが、よくよく話を聞いてみると、それはとても恐ろしい事だった。

 カクタスの話では、生物が繁栄していく為には少なからず欲というものが必要になるらしい。例えば、金持ちになって豪邸を建てたい、もっと安全で快適な暮らしを人々に提供したいなど、そういった願望が金を稼ぐ事や技術の進歩を生み、その結果、経済が活性化され文明の発展へと繋がっていくそうなのだ。


 しかし無関心になってしまうと何かに執着する事もなくなり、そういった行動を起こす際のエネルギー源となる欲が生み出されなくなる。言うなれば、欲とは車を動かす時に使うガソリンのような物だ。

 その欲が今のケプラス星人にはまったく無いらしい。そうなれば誰も努力をしなくなり、自然と文明は衰退していき、やがては岩が風化するように崩れ去る。今のケプラス星はそんな時限爆弾を抱えた状態だとカクタスは言うのだ。

 だが、ここで一つ疑問が浮かび上がる。はたしてただそれだけで絶滅という考えに至るだろうか?確かに文明が衰退する事によって多くの死者が出るかもしれない。

 しかし、みんながみんな死ぬとはどうしても思えないのだ。そう感じた俺は、ふと頭をよぎった疑問をカクタスにぶつけてみる事にした。


 「話はだいたい分かった。そりゃ確かに一大事だ。でも、絶滅するってのはちょっと大げさじゃねーか?仮に文明が衰退して原始的な生活に戻ったとしても、そう簡単に絶滅するか?俺達人間のご先祖にあたる原始人だって、今ほど便利な暮らしをしてた訳じゃねーが、滅んだりはしてねーぞ。その証拠が今の俺達だ」


 『確かに、文明が滅ぶだけなら何も問題はありません。また一から築き上げれば良いだけの話です。しかし、ケプラス星人が抱える一番の問題点は、異性にまで関心を失くしてしまった事にあるのです』


 「えっ?!それってまさか!」


 後ろで俺の動きを止めていた織春が、急に手を離し驚きの声を上げた。


 『はい。お察しの通り、ケプラス星人達は繁殖行動を一切行わなくなってしまったのです。それがケプラス星人が抱える絶滅の危機の真相です』


 そう言った後カクタスは、重く息を吐き出し、さらに言葉を続ける。


 『ケプラス星人は地球人と違って寿命が長く、だいたい千年近く生きる種族でして、それゆえ繁殖行動を頻繁には行っていませんでした。地球人のように常に繁殖行為をしてしまうと、惑星内はケプラス星人で溢れ、生態系が狂ってしまいますからね。なので、一家族に子どもは一人という政策を実施していたのです。ですが、今回それが仇となりました。元々それほど数が多くない上、繁殖行動をとらなくなってしまったせいで、ケプラス星人の数はみるみる減っていってしまったのです』


 確かに、それなら絶滅という言葉に納得がいく。

 生物は交配することで自分の遺伝子を後世に残し未来へと繋いでいく。

 地球上に生命が誕生してから約三十八億年。その間、一度もその行為が途切れる事が無かったからこそ、今の俺達がいるのだ。繁殖行動を止めてしまえば、当然その種は滅ぶ事になる。でもーーと言いかけた所で、先に織春が口を開いた。


 「でも、君らの星は地球なんかよりもっと科学技術が進んでるんだろ?なら試験管ベイビーみたいに人為的にでも数を増やす事なんて朝飯前じゃないのか?」


 どうやら織春も同じ疑問を抱いていたらしい。まぁ、俺が思いつくのはその程度が限界だが、奴は違う。なんてったって俺と織春では頭の出来が全然違うのだ。

 こういう時は頭の良い奴にまかせるのが一番だと踏んだ俺は、二人の邪魔をしないよう、当分聞き役に徹する事にした。


 『ええ、もちろんそれは可能です。実際、数を増やす事には成功しています。ですが、それだけではダメなのです。なぜなら、産まれてきた子ども達も皆、感情を持ってはいませんでした......。数を増やした所で問題を先送りにしているとしか言えない。感情の喪失という根本的な原因を解決しない限り、ケプラス星人に明るい未来はやって来ないのです。ですから我々は、感情とは何か?それを学ぶ必要があったのです』


 「じゃあ、なんでこの星に来ようと思ったんだ?もっと他にも文明が進んだ星とかあるんじゃないのか?それに、なぜそのミラちゃんって子を連れて来た?彼女にも感情がないんだろ?」


 『確かにこの星は他の惑星と比べ、科学技術や精神的な面でかなり発達が遅れた最底辺の星だと言えます。高度な文明を持つ知的生命体になればなるほど、感情の抑止力が効き、この地球のような無駄な争いは起こしません。とは言え、たまに例外もありますが......。まぁとにかく、今のケプラス星人には生温い環境よりも、強い感情が渦巻くこの星くらいがちょうど良いと思ったのです。それに、ミラ様だけは他のケプラス星人と違い、ほんのわずかではありますが感情の片鱗を見せました。ですから、唯一の希望である彼女を連れ、この星へとやって来たのです』


 「なるほどな、だいたい話は掴めてきた。......ちょっと疑問に思ったんだが、仮にミラちゃんが感情を得れたとして、他のケプラス星人はどうやって救うつもりなんだ?得た感情はその子だけのものだろ?」


 『それは簡単です。ケプラス星人の脳と私は常に繋がっておりまして、ミラ様が得た感情をデータ化し、それを他のケプラス星人に共有させる事が出来るのです。あっ、でも安心してください。全ての感情を同期する訳ではありません。ミラ様が得た感情はミラ様だけの物です。私の仕事はミラ様が得た感情を分析し、それを元に感情アプリケーションなる物を作りだし惑星ケプラスへと送信する事です。後はケプラスにある私のサブコンピューター達が、その情報を随時ケプラス星人達の脳にアップデートしていく形となっております』


 「つまり、ミラちゃんが感情を得れば、同時に他のケプラス星人達も救われるって事か?」


 『いかにも』


 「うーん。何かパソコンみたいな種族だな......。まぁ、分かった。それじゃ、最後の質問だ」


 織春はちらっと横目で俺と母ちゃんの様子を伺った後、真剣な面持ちでカクタスを見据えた。


 「ミラちゃんがが産んだあの赤ちゃんは、本当に夜真十の子なのか?」


 「えっ?!」


 今まで黙って話を聞いていた母ちゃんが、ふいに今日一番の驚いた顔を俺に向けた。まぁ、そりゃそんな表情にもなるわな。だって織春の質問を言い換えれば「あの赤ん坊は母ちゃんの孫なのか?」って聞いたようなものだ。そりゃ誰だって困惑するさ。俺も未だにその事については納得できていない。というか、無罪を主張したい。

 身に覚えの無い事で責任を取らされるなんて冤罪えんざいも良いところだ。

 だからこそ、確かめなくてはならない。あの子が本当に俺の子かどうかを。

 俺は固唾をのみカクタスの返答を待った。


 『申し上げにくいのですが......間違いありません。あの子は正真正銘、そこにおられる夜真十様のお子様です』


 「はぁー?!ちょっと待て!なんでそうなるんだよ!俺はこいつに何もしてねーぞ!」


 聞き捨てならない回答にたまらず俺はカクタスに詰め寄りミラの顔を指差した。


 『分かっています。夜真十様は何もしていません』


 「じゃあ、なんで俺があの子の父親って事になるんだよ!おかしいだろー!」


 『それは、......ミラ様が貴方様にキスをなさったからです』


 「はぁ?......キス?」


 こいつ、何言ってんだ?そりゃ出会い頭に一発ぶちゅっとされたが、あんなの欧米人と同じで挨拶みたいなもんじゃないのか?それが今、何の関係が......。


 『ケプラス星人の繁殖行為は、この星でいうところのキスなのです。ケプラス星人の女性は、キスによって相手の生殖細胞を自分の体内へと転移させ、子どもを身ごもる事が出来るのです。ですから間違いなくあの子はミラ様と夜真十様のお子様なのです』


 「そんな......嘘だろ......」


 俺はショックのあまり、崩れ落ちるようにしてその場にへたりこんだ。

 それを見た織春が、慌てて俺のもとまで駆け寄り倒れそうな体を支えてくれる。

 たかがキスくらいで子どもが出来るって言うのか?んじゃ何か?俺は、一度も息子を使用しないまま、この歳で父親になったって事なのか?......んなアホな。


 『正直、私も驚きました。ミラ様に少し感情があるとは言え、それは本当に微々たるものです。痛いや、寒いといった単純なものしか持ち合わせてはいないはず......。ですから、夜真十様に対し、あんな行動をとるとは夢にも思っていませんでした』


 「でも、おかしいじゃないか!そんな感情しかないなら、何でミラちゃんは夜真十にキスなんかしたんだよ?!」


 織春は声を荒げカクタスを睨む。


 『申し訳有りません。それが......分からないのです。ミラ様の脳内をスキャンしましたが、別段変わった所はありませんでした。これは、私も予想し得なかった最悪の事態です』


 「最悪の事態?......どういう事だ?」


 再起不能の俺に代わって織春がカクタスを問いつめる。


 『我々的には、ミラ様が繁殖行動をとってくれた事はとても喜ばしいことです。なにせケプラス星人の自然繁殖など、数千年間行われてはいませんでしたから、この星に来た成果がいきなり出たと言えます。ですが、夜真十様にしてみれば、最悪以外の何者でもない。突然襲われた挙げ句、好きでもない相手との間に子どもまで出来てしまったのですから......夜真十様の人生はもうめちゃくちゃです。そんな事は我々だって望んではいません。夜真十様には本当に申し訳ない事をしたと思っています......。ですから、一つご提案があります!』


 カクタスはまじまじと俺を見つめる。眼球が無い為はっきりと感情を読み取る事は出来ないが、何かしらの強い意志をその穴からは感じる。

 俺は力ない瞳をカクタスに向け、ぼそりとつぶやいた。


 「......提案?」


 『はい。あの子の親権をこちらに譲ってはいただけないでしょうか?その見返りと言っては何ですが、我々に関する全ての記憶を夜真十様や後ろのお二方から消去させていただきます。そうすれば以前と変わらない生活が送れるはずです』


 「ちょっと待ってくれ、急にそんな事言われてもーー」


 『ーーすぐに結論を出していただなくても大丈夫です。望まれず産まれた子であったとしても、あの子は貴方様の子。色々と考える事もあるでしょう。それに私も墜落時の損傷が激しいため、今すぐ記憶を消す事ができません。残っていた力も先ほどのワープでほとんど使い果たしてしまいましたし、今はこうやって話すのが精一杯な状況です。なので、無茶なお願いだと重々承知しておりますが、どうか、私の修復作業が終るまで我々をこの家においてはいただけないでしょうか?』


 カクタスのその言葉に、室内は静まり返る。

 正直、カクタスの提案は魅力的だ。記憶を消してもらえれば、こんな馬鹿げた状況から解放され、俺は再び平和な毎日を送る事ができる。

 俺だけじゃない。母ちゃんや織春だって、いつもと変わらない日常を取り戻せるのだ。

 だが、今の言葉でどうしても聞き逃せない部分があった。それは、カクタスが言った『望まれず産まれた子』というフレーズだ。

 その望まれず産まれた子が、どんな思いをするのか俺は痛いほど知っている。

 あの子が成長した時、俺がいな事に対しどういう感情を抱くのか手に取るように分かる。

 それは、怒りや哀しみ、寂しさといった負の感情だ。あの子はずっとその痛みを抱えながら生きていかなければならない。そんな辛い思いを本当にあの子にさせていいのか?

 答えを見つけられず頭を抱えていたその時、ふいに後ろにいた母ちゃんが静寂にとどめを刺した。


 「いいぜ、宇宙人。ちょっとの間、お前らを家うちにおいてやる」


 予想外の言葉に驚き、俺はすぐに後ろを振り返った。

 視線の先にいた母ちゃんは、さっきまでの青ざめた表情とは打って変わって、身も凍るような冷たい目でミラを睨みつけていた。


 「だが、勘違いするなよ。てめーらの為じゃねー。正直、てめーらには相当むかついてんだ。なんせ、うちの可愛いバカ息子を傷物にしやがったんだからな。今すぐにでもぶっ殺してやりてーところだ!......でもよ」


 ふいに表情を一変させた母ちゃんが、ゆっくりとベットに目を向ける。

 そこには、いつの間にか眠ってしまった赤ん坊の姿があった。

 その赤ん坊を様々な感情が入り交じったような複雑な目で見つめ、母ちゃんは言葉を続けた。


 「この子には、何にも罪がねーんだ。そんな子をほっぽり出すなんて、あたしにゃー出来ねー。だから、仕方なくお前らも一緒においてやる」


 「......母ちゃん」


 「うちはそんなに広くねーから、客間ってのがねーんだ。だから、てめーらはこの部屋を使え」


 『ありがとうございます。お心遣い、本当に感謝いたします』


 カクタスはミラの体を使って深々と頭を下げた。

 母ちゃんはその姿に『ふんっ』と鼻を鳴らした後、ベットへ行き、すやすやと眠る赤ん坊をそっと抱きかかえた。


 「夜真十。お前はここを片付けたら、今日はあたしの部屋で寝ろ。それと織春、薫子が心配してるだろうからお前はもう帰ってやれ。あたしはこの子を自分の部屋に寝かした後、ちょっと買い出しに行ってくる。お前らじゃ、ガキの世話道具なて分かんねーだろうしな」


 そう言い残し、母ちゃんはすたすたと隣にある自分の部屋へと戻って行った。

 取り残された俺と織春は、母ちゃんのスピーディーな対応についていけず、そのまま数十秒間、壊れた入り口をただ呆然と眺めていた。

 普段はめちゃくちゃな性格のくせに、こういう切羽詰まった状況では抜群の判断力と対応力をみせる母親に改めて尊敬の念がわき起こる。

 もし母ちゃんがいなければ、俺は今頃どうして良いか分からずテンパりまくっていたことだろう。

 俺の事を心配してダッシュで帰って来てくれた母ちゃんに、再び感謝の気持ちがこみ上げて来た。


 「さすが、夏鈴おばさんだな。一気に話をまとめちまった」


 「あぁ......まったくだ。我が親ながら、恐れ入ったぜ」


 「まぁ、今日はこれでお開きにしよう。いろんな事が起こったせいで、俺達も冷静な判断ができなくなってるだろうしな。これからどうするかは、また明日考えようぜ。んじゃ、とりあえず片付けるとするか」


 「あぁ、そうだな......」


 俺は、頭を上げたミラの横顔を見つめ織春の言葉に頷いた。

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