ル 類が無い
第67話 一つの真実
ルルイエから脱出し、もうほとんどごり押しで異世界を次々攻略してやっとこさ戻ってきたら、ガキになった我が母が、よりにもよって信と相対していた。そんでもって聞き捨てならない言葉を聞いた。俺らをルルイエにスッ飛ばしたのが実の母親だったなんてそれどんな運命の悪戯よ。それどころか陰謀だ陰謀。
何でこう短いスパンで次々災難ばかり続くかと思ったら、そりゃ誰かが次々災難を持ってきてりゃ続くもんだよな。
しかもそれが、実の母親だってんだからさ。
ムカつくなんてもんじゃないよ、いい加減にして欲しいわ。
「神鵺冷たい……私神鵺の尻叩きしただけなのに」
「有り難いけど迷惑だから」
「だって貴方変なとこで頭良いから努力知らないし……」
「それは感謝するけど周りにまで迷惑掛けないでって。いや普通に常識的な意味で。止めて」
数年前の喫茶店事件以来おかしくなってきた母ちゃんだけど、いよいよもって子供になったか。何で親が子に呆れられてるんだよ。俺悲しいよ母ちゃん。
「……ごめんなさぃ……」
あ、ダメ。
泣いちゃう。
「はぁ……もぅ……」
両手で顔隠してしゃがみこんじゃうよこんなん。
「情けなぃ……」
「親ってやっぱロクでもないんだな」
「こりゃひでぇ」
だってさ、一年半ぐらい前までは一緒に暮らしてたんだよ?
辛うじて普通に母親やってた人がさ、今になってこんなふざけた事してるなんて知ったら子供としてどうよ?
悲しいって。アレじゃもう甘えらんねぇよ。何だってよりにもよって幼女化するんだよ母ちゃん。あんたもうそろ50になるだろ半世紀直前だろ……。
「うぅ~……だって神鵺、もう限界突破が間近に迫ってたんだもん……試練与えて早めようって……」
「大体試練とかって何。ルルイエなら脱出したし、自力で異世界に行く方法も手に入れたけど、これがそうって?」
「……ぅん」
「…………」
また俺の知らぬ内に、アンタで勝手にアレコレやってたわけかい。
そうだよな。
「……ぉ、ぉい……? 神鵺……?」
あの時もそうだったもんな。
「
「お、おう……?」
俺等をルルイエに飛ばした時も、メロディアスに飛ばした時も、ガチで倒産しくさってくれた時も、あの喫茶店事件の時だって。
いっちゃん重要な事を俺にだけは言わないで、いらん迷惑振り撒かせてたんだもんな。何も教えないで、俺一人蚊帳の外で放っておいた癖してな……!
「……~~……~~ッ! いっ……つもそうやって俺にだけ黙ってさぁ!! 俺の見えないとこで色々やるから!! アンタのそう言う所遺伝するんだよもう!!! 」
「ッ……や、だって君あんまり色んな情報入るとフリーズするし……」
「そりゃ昔の話ダァってんだろ!! 何、もう親でいるのに疲れたので子供になりましたって!?」
「ゃ、それは違う、けど……」
「母ちゃん言ってたじゃん『言いたい事は最後まで言わなきゃ伝わらない』ってぇ! 言えよ大事な事は!! ようやっと教育が報われてきたんだなって思ってたら、何でアンタが幼児退行してるの!!!」
「……」
「人に黙るなって教育しといて自分が黙るなぁあ!!」
「……神鵺」
「何」
「周り、見て」
「あ?」
周りには、人だかり。
何見てんだよテメェら。見世物じゃねぇんだぞ。
っつうか何時の間に認識阻害解除されてた。母ちゃんの仕業か。
「死にてぇのか有象無z」
ッてぇぇええ……。
どうやって拳骨した今。
母ちゃん直ぐ近くにまで移動してやがるし、マジで人類超越してんのかよ。
「またそうやってすぐ攻撃する。ちっとも治ってない」
「~~ッ……んだよぉ……」
とりあえず《
もっかい《認識阻害》展開して、これでOK。
「怒るのは仕方ないけど、言い過ぎ」
「母ちゃんがみっともないからだろ……」
「それもあるけど、神鵺が成長しないからでしょ」
「ぬぐぅぅぅ……」
んなこたもう分かってる。
ピーターパン症候群って奴だ。何だかんだ言って、まだ子供でいたい。
第一、人が成長途中にあるって所で別居やら離婚やらすんなよな。しかも黙ってだ。ムカつくったらありゃしねぇわ。その癖? 俺には一人で頑張りなさいって? よくもまぁそんなんで偉い事が言えたもんだわ。ようやっと尻叩きしてくれたと思ったら周りが迷惑被るんだもんさ。もっと早くそうやって欲しかった、マジで。
まぁでも正直な話だ。
母ちゃんから倒産の報告が来た時、俺は何処かで歓びを覚えた。
今度こそ、今度こそどうやっても助けを請えない状態に陥って、死に物狂いで頑張れそうだとワクワクしていた。いっそこのまま全てのツケを払ってしまおうって。
それがどうだ、正に悪魔の契約を交わしてしまった。
お陰でこうして成長も出来たが、当時としては何時ものような”ズルい方法で助かる道”を選んだつもりだった。
まぁ詰まる所だ。認めたくは無いが、俺は自堕落過ぎた故に今こうなっている。自業自得って奴だな。何でもかんでも人のせいにしては逆ギレしてきたもんだ。ああ本当。
『何だ、分かってるじゃんね』
『そりゃ、ね。で、どう? お母さん今度こそ神鵺を成長させる事が出来たと思うけど』
……そりゃ在り難いけどね。
確かに、狩猟者になって色んな世界渡って、色んな人と会って来たんだ。変わりもするって。生物は、否応無しに変わる。その例に漏れなかっただけだ。
それで、今度は俺が恩返しする番って事かい。
『それは、良いよ、別に。これが親として出来る最後の奉仕だから』
……
”この世界”は、やっぱ数ある世界の中でも特別なわけか。
『察しが良いね。そして今、この世界はちょっとした……ちょっとしてはないね、かなりの危機に見舞われてる』
やっぱ成長を急がせた原因はそれか。
危機って何、異世界侵攻?
『その通り。メロディアスの事は覚えてる? あそこのミュージカ、アレってまた別の世界から来てたんだよ』
ほぇ~。別の星もまた別の世界って裁定なのかしら。それともメロディアスの連中が宇宙人って認識してただけで、マジに異世界人だったのか。まぁ良い。
んで、その侵攻してきそうな世界って?
『……本来はあるはずの無い世界……ある時点で、”神鵺が作った世界”だよ』
……ん?
ある時点で? 俺が? 作った?
『正確に言うと、”前の回”で狡賢い神鵺が作った世界だね』
……ちょっと待て。
まさか、ルルイエの外でもループが……!?
『……』
おい答えろよ!?
一体環奈に何回ループさせた!?
アイツに残された時間は!?
『環奈ちゃんは、まだルルイエ内での2回しか指輪を解放してない。あの指輪は、回毎に所有者を変えていたの』
……回ごとに所有者を変えてただぁ?
って事は何か、これまでに何回も同じ事繰り返してたって事か俺。
ちょっとそれどこの魔法少女っすか?
『ズバリ言うよ。侵攻して来る世界の狙いは、
……そして、それをしてのけようとする滅茶苦茶な奴は……。
『……そう……今度の敵は、”
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