第3話
地方で再び生活を始動させた。
精神的にも前向きな兆候を感じていて、ここでなら頑張れると感じた。
仕事内容もガラッと変わり、他の人とコミュニケーションを取る時間が多くなった。しかし、地方ということもあり、友人は周りにはいなかった。
仕事は楽だった。毎日定時には帰り、休みもたっぷり取れていた。逆にそれが良くなかったのかもしれない。
新たな生活が始まったころには解放感に満ち満ちていたが、少し経つと時間を持て余すようになった。
また職種を変えてばっかりだったので給料も上がらず、以前の返済もあり、生活は苦しいままだった。
職場は年齢が近い人がおらず、なおかつ家庭を持っている人ばかりでなかなか打ち解けられずにいた。
平日に寝付けなくなり、酒に頼り始めていく。休日も地方なので公共機関が整っておらず、行動範囲内には僕のストレスを解消できそうな場所は見つからなかったので、昼からまた飲み潰れるという生活が始まってしまった。酒と煙草だけがこの生活の支えだと本気で思っていた。この時は。
同じ建物内で働いている同期から声をかけられた。
「休日に街へ遊びに行こう。」
この田舎町での繁華街に繰り出した。繁華街ということもあってたくさんの若い男女が闊歩していた。その姿を見て、地方の人間が都会感を出していることに反吐が出た。そして同時にこの街のことを拒絶するように嫌いになった。以前は特に感じていなかったが、この時強く感じてしまった。
それからというもの休みには部屋に引きこもり、浴びるように酒を飲み、気持ち悪くなるまで煙草を吸った。
この頃から会社に行く日の朝や前日の夜には原因不明の腹痛に襲われていた。そんな痛みで会社を休むことも少なくはなかった。
転機が訪れたのは夏の暑い日。
部屋についているエアコンが壊れた。すぐさま管理会社に連絡したが、修理に来れるのは2日後とのこと。窓を全開にし、扇風機の風量を最大にして過ごしたが、その晩は汗が止まらなかった。
起床すると身体がふらついた。病院にいくと熱中症とのことだった。ここで2日休んでしまった。
事態を重く見た上司が会社に意見したらしい。
再び休職を言い渡された。
ここで僕は学習することなく再度酒と煙草に溺れていく。
今回の休職は短かったが、年を越した辺りで体調を崩して何度目かの休職を言い渡された。
僕はここで察した。もう通常の生活には戻れない、と。
そう思い、僕は前回から漠然としていたが考えていたことを実行しようと調べ始めた。
ここ数年にはないほど活動的な時間だった。近くの大型工務店に行き、目的のものを買い、ネットで調べた方法を繰り返し身体に覚えさせた。
また、地図を見て行動を行う場所も調べた。適当な日にちを選択し、その日を運命の日に定めた。
そして、いざ運命の日前夜。布団の中で今までのことを思い出した。その当時は特に感じていなかったが、とても色鮮やかだと思った。それと同時にあの日々には戻れないんだろうなと思うと、明日に向けて一層気持ちが強くなった。
朝を迎え、リュックを背負い自転車にまたがった。目的の場所は少しかかる。途中のスーパーで酒を買った。
真冬でありながらも1時間も自転車を漕いでいると、汗が額から垂れているのを感じた。
調べたとおり、目的の場所は僕が想像していたのと一致していた。早速リュックから荷物を取り出し、酒を飲んだ。
気分が高揚してきたあたりで準備にとりかかった。準備が終わると残りの酒を味わうように飲んだ。最近は酒を味わったことがないことに気づき、一人で笑った。
酒が尽きると覚悟を決めた。色んな思いがこみ上げてきたが、僕の決心を揺るがすほどではなかった。
その場所には1時間後、多くの人だかりができていた。
灰色の空 Reche @Reche
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