#5 一切の予兆も無く出戻り

 その後はいそいそと架空世界の平定に勤しんでいたのだが、なんか特に理由とか因果とか無いけど再びワームホールが現出し、意図せず元居た現実世界へと帰還。イエーイ。まるでシナリオの奴隷のようだぜ!


 しかし、久方ぶりに降り立った大地―――僕のよく知るはずのクソみたいな世界、馴染み深いものであるはずの土地は、起源や原因がよくわからないけど、無意味にバイオハザードでパンデミックかつインディペンデンスでマンオブレジェンドな世界へと変貌していた。


 なんか異形のベトベトとかモンスターが徘徊してるし、むしろ異世界よりもよっぽど異世界っぽいわ。


 だが、そんな世紀末で終わってる世界観に臆したり、案ずる必要は無い。


 と言うのも僕同様謎の引力に惹かれたのか、異世界で獲得した戦力・兵力は架空世界のまま引き継がれていた。うわこれ超ラッキー。


 つまり十数人の才色兼備を地で行く嫁達と、種族はバラバラだが異世界における世界連合の中でより優られた兵士たち―――精鋭とも呼べる一個師団を引きつれての凱旋と言うわけだ。真に補正とは素晴らしい。馬鹿らしくなるほどにさ。


 そんなこんなで意気揚々とカムバックしてきた僕を迎えたのは、かつての現実で汗水垂らし貢献とも呼べない奴隷行為を捧げたげに懐かしき弊社の面々。


 無能でハゲな癖に命令とゴマスリばかりは達者な上司、女性社員の関心を根刮ぎ奪ったイケメン、渾身の力を振り絞った告白を周りに吹聴したビッチ。憎たらしい面々。お変わりないようで何より。


 身にかかる火の粉を払いながら世界情勢の把握に努めていた僕達は、彼らがUMAだかエイリアンだかに襲われている所に出くわした。


 旧知の仲である彼らが窮地の中、助けを求める目でこちらを見つめ叫んでいたんだ。そりゃ見捨るだろ普通。これを助ける訳がない。救う理由がない。


 故に茶の席を設けて見物することにした。狼耳の秘書が恭しく淹れた茶を味わいながらの見世物。


 コロセウム仕込みの剣闘とは言えないまでも、中々の迫力。規制も容赦も無いし、当面の見世物としては十分鑑賞に耐えうる。



 さて、そろそろ試合も終わるし、同時に休憩終わり。

 僕が優雅に茶を飲み、凄惨なショーケースを楽しんでいた間にも着々と情報を集めていた兵士に深く感謝を捧げ、立ち上がる。


 見知った死体を踏み越えて、僕の進撃―現実異世界放浪編―を始めることにしようか。

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