#4 乖離と失望
前回のあらすじ。
部族間の戦争や闘争だか、その間に起こった以前の部族間紛争の功績のお陰で、ちゃっかりハーフエルフの嫁は出来たし、敵対していた集団の巫女だかを愛人にした底底辺リーマンの僕。なんか障害無さ過ぎのトントン拍子過ぎて怖い。
しかもそういった関係と実績を作ったことで、僕の名はステマの様に波及し、思考停止の信奉者がカビのように増えた。好き放題やるのに謎の引力を秘める僕。なにこれ光源氏かよ。
しかしその結果、理由も目的も無い、よく分からない民族間だか種族間だかの大規模な戦争に巻き込まれた。栄えある総司令の地位は僕のものだ。マジでなんでなんだろう。
謎の窮地で僕が取ったのは代わり映えしない行動。最初に耳長に説き、敵対の少数民族に聞かせたのと差がないアホ知識。
引き出しが少ないゆえの愚策だったが、幼稚な敵にとっては効果絶大。半端じゃない説得力。
大多数はそれに圧倒され、僕を恐れ信じた。文明開化の足音は遥か彼方。
再度言わせて貰うが日本の義務教育って果てしなく偉大だわ。
だってそうだろ? 僕の有する知識なんて現在の日本において学ぶのは難しくない事実ばかりだし、そこに付加したのはコンビニで500円出せば買える程度の浅くて下らない兵法だかサバイバル術だか、聞き齧りの浅い雑学的なにわか知識だぜ?
それらを適当に分解してミックスして独自解釈を加え編纂案を自信満々の訳知り顔で必死に伝授したら、敵対勢力である脳筋かつ単細胞の原住民族は何の疑いも持たないどころか、引くほど無意味に感動して、何かしらの刺激を受けて驚くほどに文明開化したんだよ? 信じられないわ。
そんな事実があるもんだから、下手にまぐれで実績を作っちゃったもんだから、周りに乗せられて、自身もその気になっちゃって。
調子に乗って隣接する他国を初め、人種とか関係無く語りまくっていたら他国や多民族との戦争も何故か圧勝。講話や条約もトントン拍子。
中学生が理科の授業で習うような内容を、さも自分が発見したかのように説く。僕はリトマス試験紙やヨウ素液の仕組みだって満足に理解していないのに、異世界とは分からないもんだ。
新世界の神からの啓示でも受けたように大げさに熱を込めて語れば馬鹿みたいに信じる友軍を率いた僕は、敵対勢力やそれに関わる多民族を支配して、各国連合の主―――世界の王になった。
んで異世界における宗主として貨幣経済とかフイゴタタラによる金属の鋳造、多数決による決議を提案したら、周りの文官は流石ですと褒め称える。ナニソレ馬鹿にしてんのか?
そんで最初に僕を受け入れた民族は、齎された意味不明な戦勝とクソの価値しか無い戦役を勝ち得たことで、僕を必要以上に崇めた。
彼等にとってオレ=神。底辺サラリーマンのオレが神というしょっぱい事実。涙は心の汗ですわ。
気が付いたら政治的意図を持ちつつも、なんだか直情的ミーハー感を添えて、多数のオナゴが方方から僕を慕い集ってきた。果報は寝て待つもんだ。
然しながら、流石に嫁と側室に気が引けたし、好意を無碍にする度胸もない草食系チキンな僕は、イナゴを傷付けないよう曖昧に遠慮がちな態度で、やんわりと彼女らのアタックを躱していた。
だが、そんな曖昧かつ遠慮がちなそっけない態度がマゾヒスティックな心に火を着けたのか、逆に好感度がうなぎ登り、その結果なし崩し的に手駒の女が増えた。誘蛾灯みたいな気分である。
意外なことにこの事実によって、日本人の謙虚は異世界においても美徳であることが証明された。Oh Japanese “Wabi-Sabi” !!! Samurai-Sprits!!!! Yeah Men???
美形なエルフや獣人を含めた亜人、加えて姫騎士だか女騎士だかの人間連中も僕の思い通り、僕の命令のまま。一夫多妻にも程がある。
権力を手にし、何不自由なく暮らす。
ツンデレクーデレ、年上年下、義妹義姉、踊り子秘書、なんかもうよりどりみどりのテンコ盛り。一周回って味気ない。
僕が遠く離れた"異世界"や"幸福"に求めた幻想は、こんなにも軽薄でペラペラなものでは無かった気がするんだけどなあ………
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