第28話 旅立ちの部屋
ケンとレナは、ルークについていった。
「ここが、旅立ちの部屋です」というと、ルークは、部屋に入っていった。ケンとレナは、ルークに続いた。
その部屋は、薄暗い部屋だった。
「私、ここを知っているかもしれない……」レナがつぶやいた。
ケンも口には出さなかったが、何か懐かしく感じていた。なんと言ったらいいのだろう、デジャブのような、妙な気持ちだった。
部屋の対人センサーが二人に反応し、壁のスクリーンに景色が映し出された。それは、徐々に明るくなり、丸い光源が現れた。
「……地球からみた太陽だ。夜明けだ」ケンが目を離さずに言った。
「……きれいね」レナが言った。
ケンとレナは、見る事が出来なかった風景。
ケンとレナは、考えていた。私たちの故郷、地球。
なぜ、こんな美しい星を後にしなければならなかったのだろう。
太陽が完全に地平線から姿を見せてから、正面のスクリーンに、数々のウィンドウが開いていった。丁度、ホワイトボードに貼ってある新聞の切り抜きのような光景だった。
ケンは、いくつかののウィンドウを覗き込んだ。
「ティトが、考えを整理するのに使ったんじゃないか?僕も同じようにする……」
「ええ、あなたの部屋とそっくりよ。何を考えていたのかしら……」
レナもウィンドウを覗き込んでいた。
部屋の奥には、見るからに重そうなカプセルが横たわっていた。それに気づいた二人は、すぐに、そのカプセルに近づいた。ルークは、少し遅れて近づいた。
「これは、ティトが作ったカプセルです」
ルークは、カプセルに視線を落とし手のひらでパシッと叩いた。そして、二人に視線を戻した。
「このカプセルは人間が生命活動を終了する時、同時に生命活動を開始する時に使用します。あなた達が生まれる時、これを使用しました。あなた達がここを再び使用するときは、生命活動を停止した時、つまり死亡したときになります」
「僕たちは、ここで生まれたのか……」ケンは、カプセルをなぜ回しながら言った。
この後、ケンとレナは、数日間この部屋に通い、ティトの考えを探ることになる。
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