第27話 生体ナンバー一六九八 ティト

 ルークは、ケンの部屋に向かっていた。ケンが二人を呼び出したからだった。

「ルーク!」後ろから声を掛けられた。振り返ると、レナがいた。

「ケンに呼び出されたの?」

「そう……、用事、知っていますか?」

 レナは、首を振った。二人は、一緒にケンの部屋に向かった。

「そうです。余り時間がありません。アルゴⅡの点検があるので……」

「大変ね、私にできることがあるなら、手伝うわ」

「ええ、有難うございます。今のところ、大丈夫です」

 二人が、ケンの部屋の前に立つと直ぐにドアが開いた。

 ルークは、二人の顔を見て軽く右手を上げた。

「何か用ですか?あまり、時間がありません」

「アルゴⅡの点検があるんですって」と、レナが付け足す。

「あぁ、分かったよ、ルーク……。直ぐに済むよ」

「クッキーを手に入れたんだ」二人に箱を渡した。

「本当だ、クッキーだ。動物の形?」

「そうだよ、動物の名前が刻んであるだろ」

「……このことで、呼び出したの?」レナは、クッキーを食べながら訊いた。

「……いいや。たぶんだけど、二人が知っていて、僕が知らないことがある」

 と、ケンがレナとルークを見た。

 レナが、何のこと?っと言うように額にシワを寄せた。ケンは話を続けた。

「リッキーは、『ティト』っていう人を探してたよね。リッキーが探していたということは、マザーが探していたということ」二人は頷いた。

「レナとルークは、知ってたよね。ティトって誰?」

 なんだそんなことか、と言うようにレナが話始めた。

「ケンは、会っていないのね……。私とルークは、知っているわ。ティトは、私が五歳の時に亡くなったの、私にはやさしい思い出しかないわ」レナが言った。

「そうです。もう、亡くなっています。ティトは、私の人工知能の開発者です……。

生体ナンバー一六四八。名前はティト。性別、男性。ランクAに属しています。生存期間は三八七一年三月二五日に三時一二分三二秒から三八九四○年九月一七日九時七分一二秒。ティトは、マザーに対して三六の成果を上げています」と言って、ケンの部屋のスクリーンに一覧を表示した。

「……三九四○年九月一七日って、僕の誕生日の一年前だ」

 ケンは、呟きながら、ティトの成果一覧を見つめ、その中の一つを指さした。

「これは、ルークのこと?」

「そうです。私の人工知能は、ティトにより開発され、ボディは、三八九○年にアウラにより製造されました」ルークは、淡々と答えた。

「……アウラ?だれ?」ケンが訊いた。

「ティトのパートナーです。最高のエンジニアです。ティトが亡くなる五年前に他界しています…」ルークには、悲しい過去だった。

「ティトが亡くなったことは、マザーも知ってはずなのに、なぜ、探しているだろう?」ケンは、レナとルークに考えを求めた。

 ルークは、パイオニア号からの宇宙艇衝突から、アウラを失った事とその後のティトの様子や、対パイオニア号の作戦の話とマザーに呼ばれたことを話した。


「そうか……、マザーは、ティトとの約束が果たされるを待っているんだ。ティトがまだ生きていると考えているのか……。ルーク、話に出てきた『旅立ちの儀式』とは、何なんだ。説明してくれないか」

 ルークは、一息いれ話始めた。

「『旅立ちの儀式』は、ティトが考えだしたモノで、人間の誕生と死亡の時の儀式です。『旅立ちの部屋』で、ティトの指示により私が実行しています」

「……そんなの聞いてないぞ」とケン。

「訊かれなかったので……」ルークが答えた。

「その『旅立ちの部屋』に案内してくれ、何か掴めるかもしれない」

「わかりました。案内します」

 三人は、旅立ちの部屋に向かった。

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