第24話 マザーの心配
三人は『対話の部屋』に来ていた。
この宇宙船のメインコンピュータであるマザーと邪魔されることなく直接、話をすることができる唯一の場所だった。
三人が部屋に入ると静かに扉が閉まった。部屋は薄暗く、扉は重々しく感じた。
「マザー……、我々がなぜ、ここに来たのか分かっているだろう……」
ケンはマザーの返事を待ったが、すぐには返答されなかった。
「リッキーのことだ」ケンが我慢しきれずに言った。
三人の前方が、かすかに光が差し、マザーがホログラムを投影し始めた。
マザーがポログラムで作った姿は髪の長い、美しい妖精のような少女だった。
少女がゆっくりと顔を上げて言った。
「ケン……、あなたのしたことと同じようなことです」
「僕と同じ?」ケンは、戸惑いから顔をしかめる。
「偵察ロボットを送ったでしょう?」
「ああ」ケンが頷く。
「なぜ、ロボットを送ったの?」少女は、質問を続けた。
「あちらの情報が知りたかったから……」
「同じね、私も知りたかったから、リッキーを送った……」
「あなたは、僕たちの事を知っているじゃないか?」
訳が分からないとケンがけんか腰に言ったが、レナがそれを制した。
下を向いていた少女が、顔を上げ手を後ろにまわし腰を軽く振りながら言った。
「人間の頭の中は、わからないから。あなた方が私をどう評価しているか確かめたかった……」
三人は顔を見合わせた。
少女は、三人の表情を確認すると話を続けた。
「私は人間を助けるために作られた。だから、貴方たちの私に対する評価に関心があります。わかるでしょう……」
「……わかるよ。だけど……、マザー……、気になるのなら直接、僕らに訊けばいいじゃないか?わざわざリッキーを送らなくたって……」ケンは困惑していた。
「……これからは、そうします」そう言うと少女はチラッとケンを見た。
少女のしぐさに、ケンたちへの疑いを感じた。
ケンは、直ぐにその疑いを打ち消そうとした。
「心配することはない、マザー。あなたは、きちんと私たちを守ってくれている。私たちは、間違いなく評価している。感謝している本当だ」
ケンは、同意を求める様に二人をみた。二人は頷いた。
「マザー。私たちがこうして生きていられるのは、あなたが色々なシステムに支持を出しチェックしてくれているからで……、本当に感謝しているわ」
レナが付け加えた。少女は、下を向き、考えているようだった。
少し間を開け、少女は口を開いた。この少しの間にマザーは幾万通りの考えから、どの結論に行きついたかは、想像できることでは無かった。
「わかったわ……、もう、探ったりしない……」
「これからは、リッキーを使うようなことは、やめてほしい。大怪我をするところだった」
ケンは、強い口調で言った。少女は、顔をあげ、直ぐに答えた。
「ごめんなさい……。でも、あなた達を攻撃したのは私ではない。リッキーは、途中から、私の管理を離れたから……」
「管理を離れた?……」
ケンが、思わず言葉を繰り返した。マザーは、説明を続けた。
「リッキーは、私の作ったものでは、ありません。船外で見つけてもので、出来が良かったので、使用したまでです」
「……リッキーが、あなた達を襲った時は、私の管理を離れていました」
あまりも以外な返答だったので、三人は顔を見合わせていた。
「今、データーを分析中ですが……、おそらく、パイオニア号からリッキーに通信があったようです。このことは、既に船長に報告済みです。……ほら、船長から呼び出しです」
三人のウエラブル携帯に連絡が入った。
三人は『対話の部屋』を後にした。
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