第21話 偵察ロボットを追って
船長が、ラウンジに遅れて入ってきた。
「ようこそ、船長だ」と、右手を差し出した。
「リ……リッキーです」少し緊張しながら、船長と握手をした。
「教えてくれ、リッキー。あっち側はどうなっている?」と、船長。
パイオニア号からの小型宇宙艇衝突とウィルス対策のため、アルゴ号は二つに分断されたままだった。パイオニア号に察知されないように、あえて修復も行わなかった。元々アルゴ号のインフラは、船の前方、後方と別システムにより稼働していたため、どちらにも支障はなかった。だた、対パイオニア号の為、連絡を控えていた。
「どうなっているって……。皆、変わりなく生活しています。ただ、宇宙艇衝突以来、こちらの情報がないので、人がいないとか色々な噂がたってました。この船は、破壊された事にすると言う命令を忠実に守り続けています」
「なぜ、君はこちらへ?」
「ある時、僕の目の前をちょろちょろと動き回るものを見つけました。先ほど、カメラに映したモノです。罠をつくり捕獲しようとしましたが、なかなか捕まらなかった。最初、生き物だと思って餌を使ったんだ。途中でロボットだと気付いて、罠を変えて捕まえることができた。調べてみると、なかなか良く出来た偵察ロボットなので、製作者に会いたかった。探索ネズミロボをつけて行くと、会えると思い、ここに来たという訳です。僕がここに来られたのは、キミ……」といい、ケンを指差し指先をクルクル回している。ケンの名前が出てこないようだ。
「ケン」ケンは自分の名を言った。
「……そう、ケンが探索用ロボットを私の住むエリアまで到達させたからだ。僕がここに来れたのは、探索ロボットのおかげだ」といい、ケンに改めて握手を求めた、ケンもそれに応じた。
レナとルークが笑っている。エンジニアのレナから見ると、おもちゃみたいな出来栄えだからだった。時折、「ネズミだって……」と笑いをこらえたレナの声が聞こえる。ルークが、ケンをチラチラ見ながら、レナを抑えている。
「リッキー、大体のことは分かった。ゆっくりと身体を休めてくれ。後で、ゆっくり話を聞かせてくれ」
船長が空いている部屋をリッキーに与えるよう指示し、艦橋に戻っていった。部屋に向かおうとしたリッキーは、急に足を止め振り返った。
「あ、そうだ。『ティト』という人を知っているか?」
「初めて聞いたよ」と、ケンは、首を振った。
「人探しさ、あっちの人に頼まれたんだ」
リッキーは、親指で後ろを指さして言った。
「ああ、いいんだ。気にしないでくれ」リッキーは、自分の部屋へ向かった。
その時、『ティト』の名前に反応したのは、レナとルークだった。二人は、顔を見合わせ確認し合っていた。そんな様子にケンは気付かなかった。
ケンは、リッキーがドアの向こうに消えたので、振り向くと額に皺を寄せるルークが居た。
「どうした?ルーク」思わず、ケンが声をかけた。
「……何か引っ掛るんです。前に会ったような気がして……」
「リッキーと?」
「そうです」
「自分にそっくりな人間は、この世に三人は居るらしいよ」
ルークは、表情を変えずに腕を組みをし、思い出そうとしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます