第14話 それは、悲劇
アルゴ号は、宇宙艇の衝突した箇所から二つに分断されていた。また、ウィルス対策の為、エアロックされていた。
その分断された付近に、アウラとルークが来ていた。
配管の圧力が、安定していなかったので調査と修理のためだ。
その場所は、船外なので空気が無かった。アウラは船外服を着ているが、ルークは船外服を着る必要が無く、そのままの恰好なので、なんか変な絵になっていた。
ティトは、艦橋から様子を画面越しに確認していた。
「……見付けた?見える?」ティトが、画面越しにアウラに訊いた。
「……あったわ」
配管が入り混じっているところの丁度、裏側に穴が開いていた。小さな穴というか亀裂のようなものだった。アウラは、コーキングガンを取りだし、穴を塞ごうとした時に事故が起こった。配管の傷は、内圧に耐え切らずに吹っ飛んだ。
ビシッ。
アウラとルークが吹き飛ばされ、反対側の壁に叩きつけられた。
アウラは胸に温かいものを感じていた。アウラの目の前に赤いブツブツが漂っている。
(何?…血?)
「ティト、私、怪我をしたわ。血が出ているみたい……」
アウラは、漂う赤いブツブツから、目を離せない。生命維持装置が、血圧低下のアラームを鳴らした。
「アウラ、大丈夫?」ルークがアウラに近づき、アウラのヘルメットを覗き込んだ。
「ルーク、アウラ、戻るんだ!」ティトは、画面にへばりつき叫んだ。
ティトは、慌てた。大好きなアウラが怪我をした。
ルークは、アウラを素早く抱き上げ、その場を後にした。
緊急治療室のドアが開く、アウラを抱き上げたルークが小走りに入ってきた。
すでに、ティトが緊急治療室に来ていた。
「ルーク、こっちだ!」
ルークは、アウラを治療台にそっと置いた。
ティトは、素早くヘルメット外し、船外服を脱がした。真っ赤に染まったシャツをハサミで切り裂いた、アウラの白い肌に真っ赤な血が滴り落ちる。
なぜか、ティトは涙が止まらなかった。
「アウラ、大丈夫だ」ティトは、アウラのうつろな目を見詰めた。
「ティト、こちらに……、データーを取ります」
ルークは手招きしてティトを誘導した。大きなドーナツ型がアウラの頭からつま先までゆっくりと移動した。汚れを取り除きながら、スキャナーがアウラの怪我の情報を集めた。治療台が透明なカバーで閉じられた。
モーターの音は、治療台内の空気を清浄化させ、ロボットアームが、傷口の洗浄や止血を行っていた。
ルークが、目でティトに終了の合図を送った。ティトはスクリーンを見た。アウラの体が映っている。まず骨折個所がブリンクし、次に出血位置が表示された。
「ここです」ルークが指差した。ティトはそこを見つめた。
「アウラ……」その先は声にならなかった。
『このままではだめだ。アウラが死んでしまう。なんとかしなくては、大切な大切なアウラが……』ティトの頭からアドレナリンが噴出しそうだ。アウラを助ける方法を検索し続けた。
今の状態で延命処置を行えば、アウラを生かしておける。しかし、ずーとこのままだ。アウラの健康的は笑顔をみることは二度と出来ないだろう。
『待て!落ち着けティト!何かあるはずだ!考えろ!考えろ!考えろぉ!!!』
ティトは、頭を抱えひざまずいた。
ティトのその姿をみたルークは、何か頭の中心で膨大なエネルギーが噴出しているように感じていた。
「マザー、アウラとティトを頼む!」というと、緊急治療室をすごいスピードで飛び出していった。
「どこへ行く、ルーク!」ルークを呼び止めたのは、マザーだった。
「ここを開けてくれ!」
ルークは、ドアを殴ったり蹴ったりした。ドアが、変形し隙間ができた。ルークは、その隙間に手を入れドアを壊し、部屋の中に入った。
そこは、戦闘機の格納庫だった。すでに警備隊が待ちかまえていて、ルークを目がけ、捕獲機が発射された。ルークは、身体の自由を失った。
「私の質問に答えなさい!何をするつもり?」マザーの強い口調で言った。
「パイアニア号だ!あの宇宙艇のせいで、アウラが死にそうなんだ!」
「だから、どうするつもり?」
「僕が、やっつけてやる。早くここを開けてくれ!」
その時、船長から連絡が入った。扉の横のスクリーンに表示された。
「ルーク、やめろ。今、動いてはいけない。我々は、やられたことにする。既に救難信号を発信した。時間を稼ぐんだ」
「ルーク、作戦を考えよう」と、落ち着いた声でマザーが言った。
ルークは、崩れるようにその場に座った。
「わかったよ。どうすればいい?マザー」
「相手はイカレているんだ。ルーク、そんな状態じゃ勝てない。作戦を検討しよう」とマザー。その時、スクリーンの中の船長が言った。
「ルーク、『対話の部屋』に集合だ。これは、命令だ!」ルークは、落ち着きを取り戻し、捕獲機を外してもらい、ゆっくりと立ち上がると『対話の部屋』へ向かった。
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