第8話 ボディの完成
ティトとアウラは、アウラの仕事場に居た。
仕事場は、材料や部品でゴチャゴチャだった。
ただ、道具だけは、綺麗に整頓され手入れされたいた。
いや、一見、煩雑に置かれている材料や部品は、きちんと整理されているのかもしれない。
アウラだけが、この部屋のどこに何があるのか確実に知っていた。
ティトは、じっとして何も触らないようにしていた。
なぜかというと、以前、机に置かれた本を見ようとして、本の上に置いてあった部品を机の横の椅子に移動し、戻すのを忘れたしまったことがあった。そのことを知ったアウラは、一週間、口をきいてくれなかったからだ。
アウラの横には、ティトの背よりちょっと高いものと奥にアウラの背丈のモノにシーツが掛けられていた。
「ティト、出来たわ」
アウラは、背の高い方のシーツの端を持って、早く早くと手招きしていた。
ティトは、バリケードのように置かれた部品の山を抜け、やっとの思いでアウラの前にたどり着いた。
アウラは、姿勢を正し、深呼吸すると話はじめた。
「うぉほん……。この度、私、アウラはヒューマノイド型アンドロイドを開発しました。身長185センチ。95キロと軽量化しより人間に近づけました。また、自己再生ナノマシンにより、故障しても自己修復できます。さらに、最新型の人口知能を搭載する予定です。この人口知能はドクター・ティトが担当します」
アウラは、手を小さく、くるくると回し、ティトに拍手を要求した。
ティトは、わかったよ。と拍手した。
「アウラ、早くみせてよ」
ティトが言うと、静かにするようにと人差し指を口にあてた。そうして、周りをゆっくりと見渡した。
「……それでは……ご覧ください」というと、シーツをさっと取り去った。
そこには、スラッとしたハンサムな青年が立っていた。
「なかなか美形だな……どこかで見た顔だけど……」
ティトは、アンドロイドの周りを回りながら、色々なところをチェックしていった。
「映画ライブラリからよ……。ピンときたこの人に決めちゃったの」
アウラはちょっと恥ずかしそうに言った。
「名前は決めたの?」
ティトは、ハンサムな青年の周りをゆっくりと回りながら訊いた。
「えーと……」アウラは、上目遣いで考えると答えた。
「ブリキマン……そう、ブリキマン」それは、完全に思いつきだった。
「ブリキマン?……オズの魔法使いの?……僕はライオン?それともカカシ?」
ティトは、笑いをこらえながら訊いた。
「ブリキマンに考える脳みそを入れてやって、ドクター・ティト」
「ああ、わかっているよ。僕の考えているのは、自分の生命…」
ティトは自分が言った“生命”と言う言葉が的確かどうか首を傾げたが、すぐに会話を続けた。
「自分の存在を維持することを想像または連想させる事象に出くわすと、ある電気信号が出るんだ。人間でいえば、心地よいとか快感を得るみたいな。そう、君は、そのような感覚、……つまり快感を得るためにここまで進歩してきたと思わないかい。だから、こいつも自分から進歩するようにしたいんだ」と、イケメンのアンドロイドと肩を組んだ。
「わかりました。ドクター・ティト。私は早く動かしてみたいの」
ティトの説明はアウラにはどうでもいいことらしく、ドライバー右手に持ち、左の手のひらにトントンを打ち付けていた。それに気づいたティトが肩を竦めて言った。
「すぐ始めるよ……でも、“脳みそ”がほしかったのは、カカシだよ」
二人は笑った。
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