第16話「爺ちゃん探検隊」
僕の小学時代の話だ。保育園の年長から低学年にかけて、僕は爺ちゃんによく散歩に連れて行ってもらった。
歩く時もあるし、自転車に乗せてもらってというのもあった。 そうそう爺ちゃんは道を知ってるくせに……
「ミズキ君。この先をまがると、どうなっているのかなあ?」
と、言っては僕の心をワクワクさせた。(そうそう家族の中で、なぜか爺ちゃんだけ僕を、君づけで呼んでいた)
当時の僕は、本当に爺ちゃんが知らないと思っていたので、とんでもない興奮があったのだ。
僕たちは町の探検隊だった!
「もっと、行ってみよう!」
と、僕が言うとすかさず……
「家に帰れなくなっちゃうかも」
と、爺ちゃんは答えた。探検隊に危険はつきものだ、僕の中でさらに探求心が湧いていった!!
爺ちゃんとは町のあちこちを探検した。
「爺ちゃん!この橋、大丈夫~?」
電車が真下を通る、ボロボロの橋に連れてってくれたり。
「うわああああああ」
長ーい下り坂では、悲鳴をあげて自転車で下ったりした。
「あっ!クワガタだ」
細い路地を行った所に、怪しげな虫屋さんを見つけたり。
「この飛行機、本当に飛ぶの?」
ラジコン屋さんに、2人で飽きる事なく居たりした。
「爺ちゃん、空がオレンジ色だよ~!」
探検が終わると、にじむような夕焼けを背に家路に着いた。
◇◇◇
今はもう、爺ちゃんはこの世にはいない。
大人になった今、僕は思う。
爺ちゃんは、ひとあし先に……
あの世へ、探検に出かけてしまったと。
おしまい
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