第8話「あなたのおかげです!!」

「えっ!この辺りってみんなこんな金額なの!?」


 男は不動産屋で声を上げていた。


「この辺りはこれが普通でして……」


 不動産屋は済まなそうに言った。男にはこの辺りに住まなければならない事情があり、さらには手持ちが少なかった。


「とにかく安い物件はありませんか?」


 男は頭を下げお願いした。すると不動産屋は、これまた済まなそうに、とある物件を出して来た。


「それ!安いじゃないですか」


 男が喜んでいると、不動産屋は言った。


「でも、事故物件なんですよ」


 他殺でも自殺でもなく病死だった。だが発見が遅く、室内は色々と汚れてしまっていたそうだ。


「とても良いマンションなんですが、嫌な噂ばかり立ち、それきり全く入居者がなくて。とにかく入居者が欲しいそうなので、敷金礼金なし、家賃半額、更新料もなしだそうです」


 それを聞いて男は即決した。そして……




 男は入居して驚いた!


「えっ!めちゃくちゃ綺麗じゃないか!?」


 大々的な修繕をしたようで、どこもかしこも新品だった。


「本当にありがたい!」


 男がここに住むまでには、本当に色々と嫌な事があったのだ。男は感謝の気持ちから、亡くなったであろう場所に、線香を立てた。


 それからは、何気に運気が上がっていった。


 家主からは、入居のお礼だ何だと、色々と頂き物をした。マンションの入居者達からは、たくさんのお礼を言われた。そして特に良い事が起きた。


「ご飯、作り過ぎちゃって///」


 超美人のお隣さんと、お近づきになったのだ。


 そして今……







「あなた!///」


「ああ今、行くよ!///」


 僕が結婚して出て行ったマンションの一室。


 今では空き待ちの幸運の一室になっていたのだった。


おしまい



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