第4話「ありがと・大好き!」

 月に住んでる少女は、いつもいつも『緑』のない風景ばかりを見て育ちました。そして、目の前に浮かぶ地球を見るたびに……


『地球に行ってみたいなあ』


 と、思っていました。そんなある年の事。その年は巨大な彗星が来る年でした。


『これだわ!』


 少女はチャンスと思いました。その年、少女は巨大彗星が月のそばを通った時に……


ピョーン!


 と、飛びつき地球を目指しました。そして、巨大彗星が地球に差し掛かると……


ピョーン!


 と、少女は地球に飛び降りました。


ヒューン




ドシン!!


 そして、少女が落ちてきた場所は、一軒家の裏庭。


「誰!?」


 その時、一軒家の窓から少年の声がしました。


「えっと……」


 少女は、しどろもどろ。


「どこから来たの?」


 少年に尋ねられ、少女は正直に答えました。


「月から来たの」


 と、少女が答えると、あとから家から出てきた、男の子のママが、どこかに連絡。


 少女は、駆けつけたお巡りさんに、連れて行かれました。そして少女は、鍵のかかった部屋に入れられました。


「でも大丈夫なんだあ。だって私、月の女の子だから!」


 少女は、鍵のかかった部屋で過ごすうちに、段々と体が細くなり、新月の月のように、最後は、パッと消えてしまいました。


「また、来ちゃった!」


 細くやつれた女の子が、裏庭にいたから男の子はビックリ!


「逃げて来ちゃった!」


 と、少女が言うと、ママも……


「仕方ないわね!」


 と、いうことで、しばらくこの家で過ごす事になりました。

 

 それから少女は、地球見物をしました。そうしているうちに、少女の身体は段々と元通りに!


「でも、そろそろ帰らないといけないなあ」


 と、少女が言うと……


「じゃあ、最後に森にキャンプに行こうよ!こう見えても僕、16歳だから運転出来るよ!」


 少年は少女を連れて森へ!


 森では、男の子が作っていたツリーハウスに泊まったり、夜は焚き火の明かりと、月の明かりの中で、男の子のギターと歌と……少女が教えてくれた月の踊りを楽しみました。


 その夜、憧れの『緑』に包まれて眠った少女は幸せでした。キャンプから帰って、ちょっとして……


「帰りはどうやって帰るの?」


 と、少年が聞くと少女も尋ねました。


「空にあがる物ってある?」


「ロケット、飛行機、どれも僕は、持ってないし運転出来ないよ」


 そんな事を言いながら、男の子と少女は街を歩いていました。その時、子どもが持ってた風船が飛びました。


「あっ!あれなあに?」


 空高く舞い上がる風船。


「そうだ!風船をたくさんつけたら月にいけるかも~」


 少女は、目を輝かせました。その夜……


「本当にこんなので大丈夫?」


 少年の心配をよそに、少女は明るく答えました。今や、少女の身体には、沢山の風船のヒモがくっついています。


「大丈夫、大丈夫!さあ、出発!!」


 少女と地球をつなぐロープを、少年は斧で断ち切りました。


「私、月に帰ったら連絡する~!」


 そう言いながら、少女は夜空へと舞い上がり、月を目指してその姿を消していきました。


 それから3日が経ちました。夜、男の子がテレビを見ていると、臨時ニュースが流れました。


「大変です!今夜上がった月に、なんとメッセージが書かれていました。これがその映像です」


 テレビに映し出された月の映像には、満月の中いっぱいにこんな字が書かれていました。







『ありがと・大好き!』


と。


おしまい

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