第3話 諦めるとは言っていない


「それでもあなたは,元の世界に戻ることをあきらめませんか?」 


諦めたとしても,得にやりたいことがあるわけではない,だったら,目標は掲げてみる価値はあると思う。


「たとえ可能性無謀と思える程が低かったとしても,追ってみようかと思います」

女神様は数秒ほどの小さな沈黙,そして二度頷いた。

何か納得することでもあったのだろうか。


「わかりました。下位世界に行くに伴って,能力を授ける必要があります」


やっぱり能力を授けることはテンプレ展開なのか。

「移動レベルは先ほども述べましたとおり,6段階下がっておりますので,その分を能力に変換することができます」

つまり,会社が回収された時,子会社→親会社に転籍するときは,役職の等級落ちするのに対し,親会社→子会社に転籍するときは,役職の等級が上がるようなものかな。

しかし,能力を授けるといっても,なかなか考えが浮かばない。そもそもレベル6分の能力ってどれ位なんだ?

この場合は,決めて貰った方が良さそうだな。


「考えてみたのですが,私ではどのような能力が良いのか解りかねてしまうので,女神様が『これが一番』というものを決めていただけないでしょうか」


こうすれば,最良の結果になると考えたが,失敗か成功かはこの女神に託すことになってしまったのは早計だったか。


「わかりました。では,最後にあなたが降り立つ場所は___」


「それでは準備ができました。貴方の人生に幸あらんことを」


徐々に視界が霞み,何も見えなくなる。そして意識が遠のくのを感じた。

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