7話 選ばれし者

 ラスティ「では、ウタイよ。取引成立だな?

 我輩を抜いて勇者探しを手伝ってくれるな?」


 ウタイ「まったく、取引してくる聖剣なんて聞いたことねぇよ。ま、いいよ。魔神戦争の勇者の剣……高く売れそうだしな。」


 ラスティ「魔神戦争というのか。あの、戦いのことを。あの憎しみと血にまみれた悲しい争いをーーーそうあれは雪の降る夜の」


 ウタイ「いや、回想に入らなくていいからな。さっさと帰るぞ村に。」


 ラスティ「なんですとー!」


 ウタイは『回想殺し』の称号を手にいれた!


 ラスティ「ふふん。でも、問題が1つあるんだよな~。」


 ウタイ「なんだよ?」


 ラスティ「ほら、我輩、岩に刺さってるじゃん?そして、聖剣じゃん?この公式、もうわかるよね?簡単に抜けないのわかるよね?」


 ウタイ「フランクな口調うぜぇ。キャラの情緒不安定か。」


 ラスティ「抜くには条件があるのだよ。

 そう、それは勇者の素質。」


 ウタイ「勇者の素質……ねぇ。」


 ラスティ「選ばれし者しか抜けない伝説の聖剣。くぅー!燃えてきた!」


 ウタイ「自分で言うな。自分で。」


 ラスティ「あと、身長102㎝以上で撮影禁止。妊婦さんはダメだぞ。」


 ウタイ「アトラクションか!お前は!」


 妊婦はこんな森の奥に来ねぇよ。

 と、ウタイは心の中で吐き捨てると、堂々と岩に突き刺さるラスティに歩み寄る。

 ウタイは右手で柄を掴んだ。


 ラスティ「お、抜いてみるか?だけど、どうかな?選ばれし者しか……」


 ウタイ「よっ。」


 スポン!(簡単に抜けるラスティ)


 …………ぴぴぴ……(小鳥のさえずりしか聞こえない、穏やかに流れる時間)


 ウタイ「……(呆気に取られる表情で)」


 ラスティ「……(理解不能)」


 ウタイ「良し、薬草もたくさん採れたし、聖剣抜けたし帰るか!」


 ラスティ(ええー! 我輩、薬草感覚!?)

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