第3話
死体の腕輪型パーソナルシステムが青白く光りだし空間に光が一点に集束した途端、20インチ程の大きさのモニターの様な半透明の画面が空間に現れ腕輪から機械音声が聞えてきた。
「脳内思考表示エラー…オープンスペース表示に移行……生命反応なし……ワールドシステムでの検証結果、所有者死亡を確認…所有者権限を国に委譲します…起動魔力に未認識の魔力を確認…検証及び検索開始…………該当者一人確認…警視庁シーブッヤ地区配属 朽樹 宗一郎 と確認……照合を完了…パーソナルデータロック解除……パーソナルウィンドウを開きます。」と機械音声が聞え半透明の画面が切り替わりいきなり9歳~12歳くらいの美幼女がピンクの猫耳のカチューシャを頭に付けモフモフとしたピンクの肉球が付いた猫の手の様な大きいぬいぐるみの手袋をしてピンク色のヒラヒラしたミニスカートのドレスっぽい服を着て猫のポーズをした姿が映し出された。
「けんけんにゃんっ!♪おっはようにゃんっ!♪今日も一日頑張るにゃん♪」大音量のミュージックと共に立体映像で映し出された美幼女がぴょんぴょん跳ねながら可愛いポーズと共に映し出された。
「…。」
「…。」
「…。」
なんとも言えない空気がこの部屋に流れ込んできた。
「全情報を開示。」と 朽樹 が言うと浮かび上がっていた美幼女が消え、空間に無数の画像と映像が浮かび上がった。
「「「うわぁ……」」」 朽樹 達はドン引きした声を出した。部屋を埋め尽くすほどの大量の画像と映像をみてそのほとんどが18禁レベルのエロ系画像と映像だった…。
カエルが押しつぶされた様な姿でピクピクと小刻みに痙攣している霊体を 朽樹 達は突き刺す様な視線で見た。
気を取り直して 朽樹 は死亡した人の情報を表示した。
名前 溝呂木 健二 ( コオロギ ケンジ )
種族 人族
年齢 20
血液型 Z型
身長 160cm
体重 75kg
固有スキル なし
適性魔法 下位土魔法 ( 修得済み )
住所 シーブッヤ地区〇×町〇〇-××番地
職業 アルバイト
勤務先 レンタル藤岡シーブッヤ店
勤務先住所 シーブッヤ地区□▽町□□-▽▽番地
「人族か…まぁそうじゃろ…。」深く被っているフードで顔は隠れているが哀れみの雰囲気を出しながらエルは言った。
「そうだな…。」エルの言葉に納得したようにゼンが言った。
「ゼンさん、エルさん、なにか人族に偏見をもっていませんか?。」 朽樹 が エル と ゼン に向かって訴えかけるように言っている最中、エル は腕を組みながら少し考えて話し出した。
「溝呂木、お前の様子からすると死んだことに気付かずに殺されたもしくは何らかの事故に巻き込まれた様じゃな…となると今からさかのぼって何処で記憶が途切れたかわかるか?」
と エル は 霊体の溝呂木に問いかけると項垂れて蛙の潰れた格好から起き上がり胡坐をかいて自分の記憶を確かめるように話し始めた。
「そうでござるな………昨日は夜勤でござったから今朝バイトが終わり牛丼屋で腹ごしらえをして帰ってきたでござるからして……そういえば部屋に入ってきた記憶がござらん。ドアの前まで覚えてござる。」と 溝呂木 が言った。
「そうか…おい溝呂木、何時に此処についたかわかるか。」と エル は言うと 溝呂木 は少し考えて部屋の時計を確認し今から3時間前と答えた。
「3時間前ならまだマンションの自動清掃修復機能が完全に終わっておらぬから頭を吹っ飛ばしたのなら血痕がそこら中にあるはずなのに見当たらぬ……ということは………」と エル は途中で話を中断し溝呂木の死体を確認しだした。死体の首部分をよく観察しながら中断していた話を続けた。
「う~む…。魔法で頭を吹っ飛ばしたと思っておったのじゃがそうでもなさそうじゃな…火属性魔法で焼き切るように切断したという感じじゃろうか…そうなると周りに血痕がほとんど残らずに一瞬で殺せる…というところか。そうなると下位の火属性魔法の使い手でも相当腕がなければ出来ぬ芸当のはず…おい 溝呂木、お前の知り合いに火属性魔法の上手い奴はおらぬか?」と エル は部屋を見渡しながら言った。
「そうでござるな……バイトの同胞に一人とハルハル信者に一人…でござる。」と 溝呂木 が答えた。
「「「 ハルハル信者???」」」と 意味不明な言葉に 朽樹 達 は声をそろえて言った。
「そう!我が究極の女神ハルハルを守護する者達のことでござる!。女神ハルハルが月に一度、シャングリラにご降臨する際、盟約の同胞たちが集い女神ハルハルの……」溝呂木 は待ってましたと言わんばかりに流暢に話しだした。
「えええぃ!!。全然わからぬわ!!人族の言葉で話せ!!さもなくばお前のパーソナルシステムを親類に渡すぞ!!!」エル は我慢の限界が来て 溝呂木 の話を遮断するように言った。
「ぎゃぁぁぁぁっwwww!!!やぁwwwwwめぇwwwwwwてぇwwwww!!わかりました!わかりました!」絶叫しながら溝呂木はすぐさま飛びのくように体を起こし土下座しながら謝罪すると少し考えながら話をする。
「えっ…とそうでござるな…ハルハルは拙者が大好きなアイドルでして月に一度、近くのライブステージでコンサートをする時に一緒に行く友人の一人が火属性魔法の上手い奴がいるでござる…。」
「「「最初っからそう言えよ!!!」」」と 朽樹 達 は呆れるように声をそろえて言った。
「それと溝呂木、何か盗まれた物はないのか?部屋は荒らされた形跡が無い様じゃが…。」
「そうでござるな…此れと言ってとくには…っ!?、なっ!なんだと!!!バッ!、バカな!!!!!」辺りを見渡していた霊体の溝呂木がある一点を見つめながらワナワナと震えだして驚愕していた。
溝呂木が見つめている部屋の上段部隅に神棚の様な棚があり、以前に何かを祀っていた様に中央部が空いていた。
「ぬぁぁぁwwww!!!いぃぃぃぃwww!!!!我が神の秘宝【ハルハルのケストス】が無いぃぃ!!!!!」と溝呂木は絶叫しだし音速の猛烈な勢いでブリッジをするように反り返った。
「【ハルハルのケストス】とはなんじゃ?……それと…分かっておるじゃろうな!んん~っ!!!!」と エル は『分かり易く話せよ…わかってるな!』と言う脅しを含めて質問した。
「【ハルハルのケストス】はハルハルがライブで身に着けていたリボンでござる…ライブ中にファンの所に投げ入れて拙者が奇跡的に取った物でござる…。」と正座をしながら霊体の溝呂木が答えた。
「う~む…このご時世、リボン一つで殺しは俄かに信じられないが…死んだ本人がこれ程大事にしているから考える余地があるかもしれんな」とゼン は腕を組みながら言った。
「そうじゃな…先ずは手っ取り早く勤務先の火属性魔法の上手い奴からあたってみようかの…そう言えば 宗一郎 やお前さんの召喚魔法はどれくらい持つんじゃ?」
「そうですね…召喚さえ出来れば私が魔法を解除するか召喚に関わる物質が消滅しない限りは持ちます。」と エル の質問に 朽樹 は答えると エル は溝呂木の死体の傍まで行き死体に手をかざした。
「なら死体は此処で結界を張って氷漬けじゃな。」と エル は言うと死体の下に囲む様に紺色に光る魔法陣が現れると瞬時に立方体の氷が死体を包んだ。
エル は更に魔力を込めると死体を包んだ立方体の氷の表面に張り付くように魔法陣が現れそのまま留まるように鈍く赤く光りだした。
「これでしばらくは大丈夫じゃろ。それじゃあ溝呂木の勤務先の前まで移動しようかの店の中は結界で瞬間移動できないはずじゃろうから。」
と言いながら エル は玄関のドアを開けて外に出た。
「あれ?、じゃあ先ほど私がこの部屋に瞬間移動したのは一体?。普通は私有地は結界が張っていますよね?」
朽樹 は先程、部屋の中に直接瞬間移動の魔法で移動してきたのに気付き エル に質問した。
「ああぁ…あれは既にこの部屋は警察の管轄になっておってな部長の特別権限で部屋の中まで瞬間移動できるんじゃよ。」
「あぁ…なるほど。」と 朽樹 は納得して ゼン と一緒に部屋を出て エル の隣に立った。
「それでは行こうかの…ん?、溝呂木、お前何をやっておるんじゃ?早くこっちに来い。お前が来ぬとわからんじゃろうが!」
未だに自分の死体の氷漬けの様子をみて震えている溝呂木を見て エル は言った。
「れ、霊体の某も瞬間移動出来るのでござるか?」と恐る恐る溝呂木は エル に質問した。
「問題なく瞬間移動できるぞ。まあ…向こうに着いて強制的に呼ぶことは出来るが頭の皮膚を猛烈な勢いで吸い取る感じで強制的に移動することになるが…どっちが良いのじゃ?ん~?」
と不敵な笑みを浮かべながら エル は溝呂木に言うと瞬間移動する様に エル 達の傍まで溝呂木は移動した。
「それでは行くぞ。」と エル は言うと足元に青白い魔法陣が浮かび上がり光りだし エル 達は吸い込まれるように消えていった。
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