第11話

 午前中の授業が終わると、俺はそのまま生徒会室へと向かっていた。ほのか達には心配されたが彼女らは梅野さんの死に全く興味を持っていない。いくら俺が話したところで不思議な顔をされて終わるだけだろう。少々強引だったが俺はどうにか彼女達を説得し、教室を出た。




 生徒会室の前には鍵を開ける最中のアリサ会長がいた。俺に気付くとにっこりと微笑んでくる。やはり、目の下にはクマができていて疲れて居る様子だ。皇から聞いた話によると、朝の時点でアリサ会長は梅野さんの件について警察や学校から話を聞かれていたようなので、その疲れもあるんだろうな。



「あら、神宮寺春翔。どうしたのですか?」



 アリサ会長は先程の疲れている様子など全く感じさせない素振りで俺に話しかけてくる。あ、とりあえずなんとなく、で来てしまった。



「あー、いや、えっと......アリサ会長、ご飯、一緒に食べません?」




ーーーーーーーーーー



「それで、何か用があったのではなくて?」


 俺は生徒会室に入った後しばらく、アリサ会長との談笑を楽しみつつ昼食を取っていた。



「はい......実は、梅野さんのことなんですけど......」



 俺がその話をすると、アリサ会長は少し顔を

しかめる。



「俺、梅野さんが自殺したって信じられなくて......だって、昨日だってあんなに楽しそうにしてましたし」



「そう、ですわね。警察は自殺かもしれないと判断して居ますが、私もそうは思えませんわ。本当にーー」


 そう区切るとアリサ会長はこちらを見透かした様な眼を向けてこちらを見ている。



「誰かに殺されてしまったのではないか、とね?」



 やはり、アリサ会長もそう思っていたのか。だが、誰かに殺される、それはつまり、『殺される程誰かに恨まれて居た』ということだ。俺が殺されたこともあるのでもちろん、無差別という線もあるから確定はできないが......



「はい、俺もそう思っています。ただ、例えば梅野さんが恨まれていたとかって話はアリサ会長は聞いたことがありますか?」



「......いいえ。彼女個人には、ない、と思うわ。ただ......」


「......ただ?」



 そうするとアリサ会長は口籠る。しばし逡巡した様子を見せた後、



「あなたたち現代社会研究部のメンバーが私たち生徒会を恨んでいる、そういう噂がどこかから流れていますわ」



 また、その話か。俺はつい、ふうとため息をついてしまう。くだらない。だが、俺は前回の様に一笑に伏す事はできなかった。



「......神宮寺春翔。私も信じられません。ですが、この話は現代社会研究部メンバー全員の問題でしょう。誤解を解くためにもメンバー全員にこの話をして見ては?」



 なるほど。アリサ会長のいうことも一理ある。実際、俺は1人で帰っていて何者かーーおそらく梅野さんを殺したであろう犯人に殺された。確信があるわけではないが、この短期間に2人も人を殺そうとしている者が居るとは思えない。ほのかたちを危険に巻き込むのは気がひけるが今日はそのまま皆と帰ることにしよう。




 ん?待て。目覚めてから今まで何故気付かなかったんだ、





 俺はーーなんで殺された?





 自分が死んでいたはずなのに生きている、その事実に混乱もしていたし、時間が巻き戻っているのか、梅野さんが亡くなっているか、そんな事で頭が一杯で一番重要な事にも気付いて居なかった。



「神宮寺......春翔?」


 アリサ会長はこちらを心配そうに見つめている。俺は気取られない様に話題を変えた。



「そ、そういえば、アリサ会長って俺のこと、いつも神宮寺春翔って、フルネームで呼びますけど、なんか面白いですよね?」



 俺がそういうと、アリサ会長ははっとした表情をしている。


「そ、それは、そうですわね......」



 アリサ会長が黙り込んでしまった。俺が反応に困っているとアリサ会長は話し出す。


「......るとくん」



「え?」



「は、春翔くん、そう呼んでも、いいでしょうか?」



 アリサ会長は、何故か赤面しながら聞いてくる。


「え、ええ。俺も、アリサ会長って呼んでる事ですし。なんて呼んでもらっても構わないですよ?」



「そ、それなら春翔くんっ!!また、放課後にっ!!」



 そういうと顔を真っ赤にしたまま、荷物を纏めて生徒会を出て行ってしまった。






 ......ん?放課後??





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