第12話

 放課後、俺達、現代社会研究部のメンバーはアリサ会長と共にアリサ会長行きつけの喫茶店に来ていた。



「はるくん。私達でみんなでケーキでも食べようって言うなら、分かるんですよ?それで、なんで星羅院会長が居るんです?それも、はるくんの隣に座って」


 ここに来るまで他のメンバーは全員無言だったので、俺は内心困っていた。ほのかが話し始めてくれて安心したが、顔は確かにニコニコしているようだが......どうやら怒っている。お、俺、なんかしたのか?



「いや、実は今日はみんなに話さないといけないことがある。それが......」




 俺が口ごもっていると、隣に座っていたアリサ会長が話し始めた。



「まあ、この話は春翔くんはしづらいでしょうから私が話しますわ、それはーー」



 アリサ会長が話し始めると皆、ピクッと反応した後俺の方を睨んで来る。あの、本当に俺何かしました?



「こ、こほん。皆さん聞いていますの? 今日皆さんを集めていただいた理由、それは皆さんが我が生徒会庶務、梅野を殺した。ーーそういう噂が学内で流れているということをお伝えするためですわ」



 アリサ会長の言葉を聞くと、今まで、確かに殺伐としてはいたが暖かい雰囲気だったのが瞬時に冷たい空気にかわった。


 そして暫しの沈黙の後、刹那先輩は無表情で口を開く。



「それは、随分な言いがかり。なんで、私達が梅野桜子を殺さなければならないの」



「さあ、私もそこまでは知りませんわ。それにただの噂ですし、気にすることもないと思います。ただ、そういう噂が流れている、そのことはお伝えしておくべきでしょう?」



 アリサ会長がそう言うと、今度は風莉さんが普段とは違った真剣な目でアリサ会長を見つめている。



「まあまあ。さしずめ、最近春翔さんを引き入れようとしている生徒会に対する報復。理由はそんなところでしょうけど......なんて随分な言いがかりでしょう」



 確かに、そもそもこの噂は意味が分からない。道理も何もあったもんじゃない。人1人を殺す理由ーーそれが常識的にこんなに軽いものであるはずがない。今日はなんでそんな噂が流れてしまったのか、俺は流れてしまった噂への対応策を考えるべきだとアリサ会長と話したのを思い出す。



「そう。それで今日はーー」


「はいっ!はるにい。ちょっと待って!」



 すると先程から不思議そうな顔をしていた杏梨までが話に加わってきた。



「そもそもさ、そんなこと言ったら、会長さんの方が怪しくない? 生徒会こことはボクあんまり知らないけどさ。少しくらい問題ごととかありそーじゃん!?」



 なっ!?杏梨......?何を......?


「お、おい、ちょっとそんなことよりーー」



「まあ。確かにそうですわね。そっちの方が信憑性がありますわ!」



「そうだね。あんりにしては冴えてる。私も、その通りだと思う」



「そうです!きっとこいつが犯人です!だとしたらはるくん。今すぐ星羅院会長から離れてください!危ないです!!」



 な、何を言ってるんだ?



「ちょっと待てよ! 今日はそんなことを話しに来たんじゃーー」



「私が......私が、梅野を殺した。そう言いたいんですの?」


 アリサ会長は体を震わせながらそう答える。



「そう、だよ。お前が殺した。それでそれを私達になすりつけようとしてる」


「あらあら。随分と白々しいですわね?」


「早くその汚い手をはるくんから離してください」


「はるにい。そいつ、血の匂いがする。早く離れて!」



「お、おい、ちょっとみんな待てよ!! そりゃ、殺人犯に疑われて気分悪いのは分かるけど、いくらなんでもそれは横暴だろ!??」



 俺は思わず大声をあげてしまった。いくら自分たちが疑われて気分が悪いとはいえ、いきなり犯人扱いって......何考えてるんだ!!



「いえ、大丈夫ですわ。春翔くん。これではっきりいたしました」



 そう言うとアリサ会長は顔を伏せたまま店の外へと出て行ってしまった。俺が追いかけようとすると隣のほのかに袖を掴まれる。



「はるくん待ってください!どこに行くんですか?あんな女、どうだっていいじゃないですか!! あの女は私達を引き離そうとしてるんですよ!?そもそも、そんな人1人死んだくらいで、何をーー」



「っ!!!」



 俺は気付くとほのかの手を思いっきり振り払っていた。他のメンバーを見てもほのかと同様に俺になぜ?という目を向けている。



「みんな、ちょっとおかしいよ!!」



 俺はそう言うと急いでアリサ会長の元へと向かった。



ーーーーーーーーーー



「で、実際あの目障りな生徒会役員を殺したのは誰なんです?」



 芒野ほのかは他の現代社会研究部メンバーに問いかけた。



「私、じゃないよ。確かにはるとによりつく虫は、排除したいけど、それではるとが悲しむなら、私はしない。なに、もしかして、ほのかなの?」


 朝比奈刹那が芒野ほのかに問いかける。



「違いますよ。それじゃあ、風莉さんか、あんちゃんってことになりますね」



「ボクじゃないよーっ。はるにいになんかうざいのがくっついてきてたのは知ってたけど、そこまでしないかなー!」



「あらあら。そうですか?私は杏里さんならやりかねないと思ってましたのに」



 すると、暫しの沈黙の時が一同の間で流れる。



「私はこの中にあいつを殺してくれた犯人がいると思ってます。ありがたいことですが、はるくんはわたしのはるくんです。余計なお節介はやめて下さい」


 芒野ほのかがそういうと他のメンバーは顔をしかめる。


「なにいってるのー?はるにいはボクのだよ?ほのねえは黙っててよ」


「なにをいってるのか。はるとは私の。手を出さないで」


「あらあら。春翔さんは私とは運命の相手ですよ?皆さんなにを勘違いしているんですの?」






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