幕間 その1

 ここは放課後、現代社会研究部の部室。俺たちのオアシスだ。



「はい、お茶ですよ、はるくん。」



「ん、さんきゅ」



 ほのかがお茶を注いできてくれたようだ。うまい。やっぱ日本人はお茶だよなぁ〜。



「はると。それじゃあまるで縁側に座ってるお爺ちゃん」



 刹那先輩が心を読んできた。恐るべし。天才。



「ちょっと先輩、心を読まないでくださいよ。変なところに才能使いすぎなんですって」



 俺がそういうと刹那先輩は勝ち誇った様な顔をしている。



「ふ。はるとの事はなんでもわかるのです。敬いなさい」


「はいはい、そうですね〜」




 そう言って刹那先輩を撫でていると何やらプルプル震えている。あ、やばい。これ怒ってる。


「まあまあ、春翔さん。刹那さんをそんなにいじめちゃダメですよ。


 ところで、そろそろ、今日杏梨さんに秘密で部室に来る様にと言った理由を教えてくれませんか?」



「そうだね、こうしてるのも楽しいけど、私もそろそろ知りたいです。はるくん」



 ほのかと風莉さんが不思議そうな顔をしている。そうだな、くつろいでるのもいいけど今日、わざわざ家のペットショップの手伝いで部室に来れない時を選んで杏梨以外のメンバーを呼んだことには理由がある。



「うん。今日わざわざ集まってもらったのは杏梨の事なんだ。


 杏梨が今年入学してから、まあ俺達がいるからって事で我が現代社会研究部に入部したわけだけど、まだ歓迎会的な事って、してないだろ?そういうのって、なんだかんだ大事だと思うんだよ。


 だからその事について、みんなに意見を......って、刹那先輩、まだ怒ってる?」




「べつに」


 刹那先輩はまだ怒っていた。ちゃんと聞いていてくれてたらいいけど。



「確かに!さすがはるくん。名案だね!」


「まあまあ、確かに歓迎会。楽しそうです」



 よかった、ほのかと風莉さんも賛成してくれている様だ。問題の刹那先輩は......?



「ん。杏梨は大切。歓迎会、すべき」



「よし、じゃあみんな、今度の部活のために、これから色々買いに行こう!」



「「「おーー!!」」」


ーーーーーーーーーー



「で、結局。なんでこうなってるんだっけ?はるくん」


 はるかが呆れた顔でこっちを見て来る。だが、ちょっと待ってほしい。今いいところなのだ。



「ちょっと待ってほのか!今、いいところ......あーっ、また負けだぁーっ!刹那先輩もう少し手加減てものを......」


「ふっふ。まだまだ甘いね、はると。十年はやいよ」



 歓迎会と言っても高校生の俺たちが大それた事ができるわけでもなく。結局、簡単に部室を飾り付けしてお菓子やジュースなどで小パーティーでもしようという事になった。



 俺達は、飾りの買い出しをほのかと風莉さんペア、お菓子やジュースの買い出しは流石に男手が必要なので、俺と刹那先輩ペア、という風に二手に分かれて行動していた。



 ちなみに、ペア分けのじゃんけんは異様な殺気が渦巻いていた。一体なぜだろうか?



「で、なんでゲーセンで対戦してるのさ!せっちゃんも何してるの!」



 どうやらほのかが怒っている、それはそうだ。発案者がゲームして遊んでるんじゃ怒っても仕方がない。でもさ、しょーがないじゃん?新作出てたんだもん。



「す、すまん、ほのか。最初はちゃんと買い出しやってたんだけど、ゲーセンがあったから、つい」


「ほのか。ごめん。私が強すぎてはるとがムキに」



 おい、このロリ先輩全然反省してないぞ。




「全く、2人ともちゃんとしてくださいよね!」



「あらあら、まあまあ」



 そんなこんなで俺と刹那先輩はほのかに捕まり、引きづられて買い出しを続けるのだった。




ーーーーーーーーーー


「杏梨!ようこそ現代社会研究部へ!!!」




 パン! パン! パパーン!



 俺たちは部室に入ってくる杏梨に向けてクラッカーを放つ。当の本人は何が起こったのか、と目を丸くしていた。


「は、はるにい......? ど、どーしたのさっ!これっ!ほのねえたちも!え、どう言うこと!?」



「ほら、杏梨はなんだかんだいって俺たちが高校に上がってからもうちの部室に上がり込んでたから新入部員って感じしなかったけど、実際は新入部員だろ?だから歓迎会の1つでもしてやらないのは、おかしいかなって」



 俺がそう話すと杏梨は顔を伏せる。暫しの沈黙の後、何かまずいことしたか?と心配になった俺は声をかけようと顔を覗く。すると、杏梨は涙で目を潤ませていいた。あ、あれ?そこまで感動することだったか!?



「は、はるにいっ......はるにいーっ!!」



 杏梨はそう言うと、俺めがけて思いっきり飛びついてくる。杏梨は小柄だから倒れこそしなかったが、それにしても今、凄い勢いだったぞ!??



「あ、あぁー!!! あ、あんちゃん!離れっ......離れてください!離れてくださいーっ!」



「あんり!卑怯!はるとからは、な、れ、る!!」



「あらあら、まあまあ。それじゃあ、私も春翔さん引っ張っちゃいます!それー!」



「ちょ、ちょっとー! きょうはボクの歓迎会なんだよー!おねえ達は離れてーっ!」




 い、痛い。それに重い。体が千切れる。やばい。だ、誰か助けてくれ〜!




 

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