第7話

「じ、神宮寺春翔です。よ、よろしくお願いします」



 俺は生徒会室で軽く自己紹介をすると、他のメンバーから拍手を受ける。慣れていないので少し、気恥ずかしい。



「ようこそですわ、神宮寺春翔。私たちはあなたを歓迎します」


 アリサ会長はどうやらご機嫌の様でニコニコしている。いや、今までは俺が勝手にとっつきにくいと思って居ただけで、もしかしたらこっちが素なのかもしれない。



 生徒会メンバーは俺を除くと女子3人、男子4人の全部で7人。俺が入って男子5人という感じだ。どの人も人が良く、話しやすい人ばかりだった。



 会話の内容は今は特に何の行事もなく暇だということで、大体は他のメンバーから俺に質問、という感じになってしまった。


 アリサ会長から生徒会に誘われた経緯なども聞かれたが、そこはアリサ会長がうまく誤魔化してくれたので、顔合わせはとても楽しい時間だった。



 昼休みも残りわずか、というところで会長がお開きにしようと言い出した後。俺は生徒会室の鍵の置き場所を教えるから、と庶務の後輩の女の子に連れられ二人で廊下を歩いていた。



「今日は、先輩と話せてよかったです。



 ......知ってますか?先輩に憧れてる女子結構いるんですよ?」



「えっ?」


 俺は突然かけられた言葉に戸惑いながらそう答える。



「先輩って、かっこいいからいつも可愛い女の子達に囲まれてたじゃないですか?普通の私たちじゃ近寄りづらくて...あ、鍵の場所ここです」



 後輩の女の子は手慣れた手つきで生徒会室の鍵を所定の場所に戻す。



「それじゃ、先輩。私は上の階なので急ぎます!同じ生徒会役員同士、仲良くしてくださいね!」



 そういうと後輩の女の子は風の様に階段をかけて行ってしまった。憧れてるか、そんな事初めて言われたな......少し照れくさく思いながら、俺は教室へと戻った。




ーーーーーーーーーー



 放課後、ほのかと共に校門の前に行くと、いつもの様に刹那先輩達が待ってくれていた。



「遅い。まったく、はるとは今日は昼休みも部室に来ないし、何をしているんだ。それより昨日行くはずだったス◯パラ、今日こそ行くよ」


「まあまあ、でも確かに刹那さんのいう通り。今日はすぐには帰しませんよ?」



 どうやら2人とも昨日俺抜きで帰らされたことに相当腹がたっていたらしい。ああ、今日もまたケーキか。甘いものは好きだけど、2日連続となると......



「あ、小鳥さん達さよならーっ!」



 なんか1人、また小鳥達と戯れてる奴もいる。仲良いな、最近。なにを話してたんだろう?





ーーーーーーーーーー



 あー今日はラッキーだったなー。


 生徒会庶務の梅野桜子は舞い上がっていた。学園二大アイドルの1人、神宮寺春翔とお近づきになれたからだ。桜子は二大美アイドルのもう1人の皇賢人のようなチャラいタイプは好みでなく、春翔のような素朴なタイプの方が好みであり、只今、いままでの人生の中で最高の気分で自分の幸運に浸っているところだった。



 すると、夜遅くまで一人生徒会室に残って庶務としての雑務を終えた桜子は、1人の人影に気づく。



「あれ?あの......どうしたんですか?こんな夜に......それに......それ、持ってるのってバットじゃ......っ!?」



 ガンッ!という音と共に桜子は頭に強い衝撃を受ける。


 視界が赤く染まり、頭が熱い。まるで体中の熱が頭に移動してしまったかの様に熱かった。そして、焼ける様に熱い頭とは対照的に、自分の体からどんどん熱が失われて行くのを桜子は感じていた。



「なん......っでぇっ、こんな......」






 バットを片手に持った少女は狂気の笑みを浮かべ、蔑む様な目で縋り付く桜子を見つめている。






「私の春翔に近寄るな。汚い虫が」




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る