第5話
キーンコーンカーンコーン
チャイムがなったので俺は星羅院会長と話を終えると帰りの支度を始めた。一人で帰ろうとしたのだが、星羅院会長はまだ俺に話があると言うので二人で帰る事になる。立ち話もなんだから、と言うことで俺達は近所の喫茶店に入ることになった。
あれ?ここって、確か刹那先輩の出した報告書に書いてあった喫茶店だよな?
「あの、星羅院会長?ここって確か刹那先輩がーー」
「こ、こほん。いいから、早く何か頼みましょう。癪ですが、ここのケーキは本当に本っ当に絶品でっ!
......って、なんですか。そのだらしない顔は」
どうやら、俺はだらしない顔をしていたらしい。それはそうだろう。あの星羅院会長が、だ。
「いや、意外でした。星羅院会長って、意外と乙女なんだなと思って......いたっ!」
星羅院会長は木製のメニューで俺の頭思いっきりをなぐってきた。痛い......
今、メニューの角だったぞ......!?
「あなたは一体私をどう思ってるんですの。私だって人並みに乙女ですわ......って、そんな話をしに来たのではないのです」
そう言うと星羅院会長は店員に手慣れた様子でメニューを頼み終えるとこんな事を言い出した。
「神宮寺春翔。あなた、好きな人は、居ますの?」
えっ?
えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!????
俺がドギマギした様子で慌てていると、どうやら星羅院会長もようやく自分の言った事の意味に気付いたらしい。慌てて撤回して来る。
「ち、違いますわ!そうではなくて、あなたは幼馴染四人との今の関係をどう思っているのか、それを聞いているんですのよ!別に口説いているわけではないですわ!」
いや、俺もそこまでは言ってないです。
「まったく。でも、考えておいた方がいいですわよ?生徒会室でも話しましたが、もうあなたも高校二年生なんですから、そういう事になってもおかしくはないでしょう?」
そういう事、星羅院会長が言いたいのはつまり四人のうち誰かと彼氏彼女の関係にーーつまり、付き合うつもりがあるのかという事だろう。
みんなの事は好きだ、好きなんだけど......
「確かに、それはそう、なんですけど......俺にとって四人はそういうんじゃなくてもっと特別な、そう、家族みたいなものなんで」
「そう......まあ、遅かれ早かれそういう事になる可能性はあるんだからしっかりと考えておいた方がいいわ」
そんな事を話していると、ウェイターがケーキとコーヒーを持ってくる。
「さあ、食べますわよー今日は特別に奢ってさしあげますわ。あなたも一口食べれば気持ちがわかります、さあ!!」
「は、はぁ......」
ーーーーーーーーーー
ケーキと紅茶を平らげた後、いい加減遅い時間になってしまったと気付いた俺達は帰り道を急いでいた。
「今日は、ありがとうございました。その、色々俺達のこと気にかけてくれて。
......あれ、それよりこんな遅くまで大丈夫だったんですか?俺はいいですけど星羅院会長、お嬢様っぽいし、親御さん心配してるんじゃーー」
俺は途中で口籠る。それは、星羅院会長が、見たこともないような思いつめた顔をしていたからだ。
その様子を察したのか、星羅院会長は慌てて笑顔を作る。
「いえ、家には、できればその......あまり、帰りたくないのでーー」
「ケ、ケーキ!!」
星羅院会長はポカンとした顔をしている。
「え??」
「ケーキ、美味しかったですね!!また食べたいです。星羅院会長、もしよかったらまたケーキ食べましょう!」
「......」
「星羅院会長?」
どうしたのだろう、黙り込んでしまった。さっきの様子からして、まさか地雷を踏んでしまっただろうか......
「アリサ」
「え?」
「アリサでいいですわっ!!!」
そういうと、星羅院会長は暗闇の中を走って行った。
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