第4話




「星羅院会長、話っていうのは本当は現代社会研究部の活動内容について、ではないですよね?」


 そういうと星羅院会長は少し驚いた顔をする。


 それくらい俺でも気付く。何故なら、他にも我が現代社会研究部と同じような部活はこの学園にはいくつかある。俺たちだけが呼び出されると言うことは、公正平等をうたう星羅院会長としてはおかしなことだった。だとすると、なぜうちの部活だけを目の敵にするのか、それはつまり......



「あなた、思ったより察しがいいですのね。神宮寺春翔。


 それに、私、てっきり勘違いしていましたわ。あなたは、何らかの手を使って三人を籠絡しているものかと......


 さっきの様子を見る限り、どちらかと言えば他の四人が、あなたに依存しているように見えましたわね。そこに関しては勘違いしていましたわ謝罪いたします。




ですがーー」



 そう言うと星羅院会長は一呼吸起き、真剣な眼差しで話し続ける。



「巷で、あなた達五人組は神宮寺ハーレムなどと呼ばれていいる、と言うことはあなたも知っていますね?」



 やはり、その話だったか......



「言葉はキツイですが、あなた達はあまり、周りから良くは思われてはいませんわ。


 どこの運動部でも喉から手が出るほど欲しい人材である芒野ほのか、天才的な頭脳を持つ朝比奈刹那、地元の名士祁答院家の一人娘祁答院風莉。来栖杏梨は......まあ、いいでしょう」


 おい。


「と、とにかく。あなたは多くの生徒に才能溢れる彼女らを独占し、現代社会研究部の部室に、つまり自分のハーレムに囲っている。そう思われています」



「それは.....」



 それは、分かっていることだった。俺の幼馴染達は皆一芸に秀でている、その才能を俺は潰してしまっているのではないか、それは何度も悩んだことであり俺はつい顔をしかめる。



「あなた達が幼馴染であることは知っています。ですが、今のベタベタとした様子は、側から見ると異常ですわ。小中学生くらいならまだしも、あなた達は高校生なんですから......」


 星羅院会長は視線を伏せる。


「自分の今いる、慣れた暖かい環境に浸っている、それは別に悪いことではないですし、むしろ昔からの絆を大事にする、それは良いことですわ」



 そう言うと、星羅院会長は今までの厳しい表情を和らげる。いつも張り詰めている様子を見ているせいか、まるで別人のようだ。




この人は、こんな顔もできるんだな.....




「ーー別に、一切関係を切りなさいとは、言ってないんですのよ。ただ、もう少し適切な距離を保ちなさい、と言うことですわ。友情と依存は違うのよ、神宮寺春翔。」



 それは、俺も分かっている。俺は多分、四人に依存している。


 かつて、両親が亡くなった時、その孤独から救ってくれたのはほのか達だ、その時からずっと、俺は四人に依存していたのかもしれない。



「確かに、会長の言う通りでは、あります。俺だって、分かっていない訳じゃないんです。でも、もう少し距離を取れって言われても......別に俺は他に部活とかにも入ってないし。そんな、あからさまに距離を置くだなんてこと......」



 俺がそう言うと、星羅院会長は少しじっと考えた後、ひらめいた!と言う様子で手ポンと手を打つ。



「それなら、生徒会に入って下さらない?ちょうど書記が一人転校してしまって困っていたのよ。生徒会長である私になら四人も文句は言えないでしょう!」




星羅院会長は意地悪そうな顔をした後、とても優しい微笑みを浮かべていた。







そしてその日、晴れて俺は生徒会の書記に任命されたのであった。






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