心象
第73夜 アルクアラウンド
(2017/10/18 06:55:19)
midori
「私と関わってる場合じゃない。夫婦ってそんなものなの?今はもっと考えるべきことがあるのよ。だから距離を置きましょう。しっかりご飯を食べてね。タバコはだめよ。今まで楽しかったわ。またね。」
ここ何年かで珍しく良識のある正論を説かれた。ぐうの音も出ない程その通りで、反論の余地は無かった。その日の帰り道、僕はタバコを1箱買った。
最初こそ哀しくて寂しかったが、寂しさを紛らせるための相手には不自由していなかった。彼女が言ったのは、こういう行為をヤメロという事だ。勇気を出して僕を突き放してくれたのに、僕は変わらないどころか更に泥沼にハマって行く。
1人で立って、強く歩く姿を彼女は望んでいるのだ。その理想を簡単に裏切る僕は、一体彼女の事をどう思っていたのだろう。
皮肉な事に、この状況になって初めて彼女の夢を見た。恋人同士の夢だった。街のアパートから花火を眺め、その後部屋のカーテンを閉めてキスをした。彼女との肉体的な関係をあまり考えた事は無かったが、それはそれで幸せなのかもしれないと思わせる夢だった。
単にその夢を見たから、ここに残すことにした。来年の僕。隣にいるのは誰ですか。それとも。
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