第62夜 スピカ

2017/2/26 22:53

距離があってこその関係なのに。近くに居ると次から次へと欲求が沸いてくる。明日が最後になるかも知れない。そんな思いで居ると、また暗い気持ちで不機嫌になってしまうのだろう。僕達は、この2週間で求め過ぎている。大好きで、共に過ごせない事を恨んでさえいる。


彼女はいつも、僕が冷めるまで時間が掛からないと言い放つ。それはそうやって終わりたいという希望なのだろうと思う。自分からは嫌いになれない。だから僕に突き放されてしまった方が楽だと思っているのだろう。思えばこんなに誰かの事を考えたのは久しい。当然この関係性を異常だと言うヒトも居るだろうし、理解されないことなんて分かっている。そもそも誰かに理解される必要などない。僕達は、僕達の不幸に目を逸らし続け偽物の幸せを楽しんでいるに過ぎない。こんなハリボテは近いうちに崩壊する事は分かっている。だから彼女は、たくさん思い出をつくろうと言うのだろう。


絶対に二人一緒の道は歩めない。絶対なんて無い世の中でも、それだけは絶対なのだ。そのおかげで今も生きている。もっと莫迦で屑な人間になりたい。そうすればきっとヒトを傷付ける事になんて気づかないのだろうから。




90歳になるまで、この関係でいたいな。

と少女のような事を言う彼女。


彼女の中でも大きな存在になりつつあることを、少し不安に思う僕。


僕達に明日は無いのだ。

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