第63夜 秘密

2017/3/1 0:37

13時前に彼女のアパート近くのコンビニへ付いた。コンビニで用事を済ませると海へと向かった。太平洋は広大で只只蒼かった。僕と彼女の黒く淀んだ関係を正すかのような深い蒼だった。海を見るといつも人生が変わってしまうような感覚を覚えた。あの時もそうだった...


彼女の選んだ映画を観た。マイ・インターン。アンハサウェイとロバートデニーロのコメディドラマだった。作中でアンハサウェイの夫の不倫が発覚する場面があったが、彼女は僕の手を握ったままだった。


映画を見終わり、僕は暖炉に薪を足した。最初は着火剤があったため、燃え続けたが段々と上手く燃えずに火は長く続かなかった。まるで僕達の行く末を見ているようだった。




昔ながらの喫茶店に入り、彼女は早めの夕食を、僕はケーキセットを注文した。この日は安定した精神で過ごせたように思える。カレーに付いた福神漬けを避けて食べる彼女と他愛もない会話をしていた。こんな時間がいつまでも続いてほしいと切に願った。



「私は、あなたの事が本当に好きなんだなとしみじみ思う。」という彼女。

そう、寂しい悲しいのは僕だけではない。

僕達が選んだ道は、本来あるべきではない道。茨の道なのだ。それでも幸せを口にし合える僕達。身近に感じていたい。

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