第16夜 かつては男と女

2016/12/05

一旦おさまりかけた雨は、また強く降り出し人々は傘を差しては通りに色を付けていた。


確かに最近、彼女の名を目にする機会が増え、意識していたことは間違いない。


雨をしのぐために入ったテント小屋に、金魚の飴細工を持った彼女は居た。

心拍数は上がり、息が苦しくなる。


3年間を経て、僕たちを取り巻く環境は大きく変わってしまった。

もし、声を掛けていたら。

彼女は笑顔で挨拶を返すだろうか。

彼女は僕の事を、何と呼ぶのだろうか。

僕は、彼女に、なんと言えばいいのか。



今日が有ったのは、あの日が有るから。あの日が無ければ、今日隣に居たのは彼女なのかもしれない。運命とは数奇なものだ。




人と離れること、1人になることは簡単だ。

人といることは難しい。

難しいから、得るものは大きい。


僕たちは離れたから、お互いに得たものが有ると思いたい。



手を伸ばせば届く距離にいる彼女は、あの時より少し、大人びた気がした。

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