第64話 中世の温暖期と赤毛のエイリーク

 人類の短い歴史の中でも、温暖期や小氷期といわれる時代があります。

 悠久の地球の歴史からみるとほんのわずかな気候変動なんですが。


 温暖や氷期といっても1度程度の違いです。そのわずかな気温差でさえ、生物に与える影響は大きいようです。


 カクヨムには画像が貼れませんので、URLだけ記載します。

http://blog-imgs-34-origin.fc2.com/d/o/l/dolmeke/2000_Year_Temperature_Comparison.png

 上記URLは温度の表になってます。元ネタはWikipediaです。


 中央の西暦1000年前後のあたりが中世の温暖期といわれる時代です。

その後、西暦1600年あたりが小氷期といわれる時代です。


 さて、話は飛びますが赤毛のエイリークについて見てみます。


●赤毛のエイリーク

 エイリークはノルマン人(バイキング)出身で、アイスランドに移住した後、殺人事件をおかし、3年間の追放の罪に服すことになる。この追放がきっかけで、彼の壮大な冒険が始まるのであった。


その前にノルマンについて少し詳しく見てみると、

■ノルウェー系ノルマン(バイキング)

 ノルウェー人は、8世紀末には、ブリテン島北部の島々(シュトランド諸島についてはトラックバック先のハイブリ様のとこで発見SSあります)、にあらわれここを根拠地とする。記録に残るノルマンの初の襲撃を起こしたのがノルウェー人であった(783年に北イングランド東沖の修道院を襲撃)。

その後、アイルランドやイングランド西北部に定住する。また、今回の主役エイリークは、ノルウェー人。

■デンマーク系ノルマン

 一般的にバイキングで想像するのは、彼らデンマーク人。北部フランス、イングランド東部に侵入し、フランスではノルマンディーを支配。その後、ノルマンディー公ウイリアムがイングランドを占領する。

 この二つとは別に、スウェーデン人は西欧に侵入することなく、主に東方地域と交流を持つ。彼らをバイキングとは通常呼称しない。


 さて、話を元に戻すと、アイスランド追放の刑に処されたエイリークは、この間にアイスランドよりさらに寒冷な島を発見する。アイスランドは地名が「アイス」とつけてしまったため、思うように人口が増えなかった。そのため、エイリークはこの島を「グリーンランド」と名付ける。

 そうして、エイリークは服役中にグリーンランドを調査。刑が終ったあとには、アイスランドに戻り985-986年にかけて、入植者をつのる。

 このグリーンランドの入植なのだが、最盛期には約280ほどの農場があったと伝えられる。しかし、気候の悪化もあって13世紀以降衰退し、1500年ごろには無人島となる。

 ここから先は、伝説の範囲であるが、エイリークの息子レイブは、ニューファンドランド(アメリカ大陸ですね!)を発見・調査(1000年ごろ)し、殖民活動を行うが、現地住民との衝突などの理由から失敗する。(ヴィンランド伝説)


 エイリークはアイスランド・グリーンランドに殖民をつのりました。

グリーンランドの入植はアイスランドからヴァイキングがまず入植し、その後カラーリットが入植しました。グリーンランドはご存知のとおり?非常に寒冷な地で、北欧式の生活ではまず長続きしません。

しかしながら、このヴァイキングたちは温暖期には生存しました。この時代にはグリーンランド南部に森林があったそうです。

その後、カラーリットは少数ながら生き残りましたが、15世紀ごろにはヴァイキングたちは全滅します。

気候の図を見ると、15世紀の気温は温暖期に比べかなり低くなっています(小氷期にあたります)。


 次に北米に到達した、レイブのほうを見てみましょう。

レイブの伝承によると、


 997年に西へと探検航海に出た。最初に漂流者のルートをたどって西に赴くと、岩に覆われた陸地があり、彼らはこれを「岩の国(ヘルランド)」と名づけた。次に南下した彼らは木に覆われた陸地を見つけ、「森の国(マルクランド)」と名づけた。さらに海を南に下った彼らは、小麦の自生する豊かな国へとたどり着いて、そこを「ブドウの国(ヴィンランド)」と名づけて前線基地を置き、グリーンランドに帰った。西暦1000年のことであったという。

 wikipediaより


 とあります。

 ここでポイントなのは、「ブドウの国」です。北米地域でブドウとなるとだいたいニューヨークのあたりまで南下します。ところが実際にヴァイキングの遺跡はニューファンドランド島の北西部にありました。

 当初ブドウの国は、レイブの伝記からニューヨークあたりと見積もられていたのでそのあたりを調べていましたが、ニューファンドランド島でヴァイキングゆかりの遺品が発見されたことでニューファンドランド島にあることが確実となりました。

 当時の気候を頭に入れて探索にあたっていれば、もっとはやくにこの遺跡が発見できたかもしれません。


 この例のように、当時の気候は当時を調べる上で重要な要素になってきます。古代エジプトも植生を調査すると、時代によって植生が変化しています。エジプトのピラミッドといえば砂漠のイメージですが、過去に緑豊かな時代もありました。現代の気候のイメージに捉われず当時の気候を空想すると、いろいろなものが見えてくるかもしれませんね。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る