第52話 最大で最後のガレー同士の戦い

 スペインは、弱体化したハフス朝のチュニス、アルジェを攻略し、勢いにのっていたのだが、ハイレディン・バルバロッサによって、アルジェを奪い返されてしまう。 アルジェを奪還したハイレディンは、オスマントルコと結び、勢力を拡大する。

 それに対し、スペインは、東地中海の覇権を狙うヴェネチアとローマ教皇と結びハイレディンとプレヴェザで交戦するが、圧倒的兵力であったスペイン連合軍は、指揮官アンドレア・ドーリアのやる気のなさと、ハイレディンの有能さの前に敗れ去ってしまう。(プレヴェザもいずれ)

 その後、復讐に燃える連合軍は、再びオスマントルコにレパントで戦いを挑むのだった。


●レパントの海戦

■戦力

<連合軍>317隻 84000人

オーストリア公ドン・ジョン(総司令官) 64隻

ドリア 54隻

バルバリゴ 54隻

サンタクルズ 30隻

<オスマン軍>242隻 88000人

アリ・パシャ 94隻

ウルチ 93隻

シロッコ 54隻


■配置

<連合軍>

サンタクルズ(後衛中央)

ドリア(右翼)、ドン・ジョン(中央)、バルバリゴ(左翼)

<オスマン軍>

ウルチ(左翼)、アリ・パシャ(中央)、シロッコ(右翼)

向き合ってるので、この並びとおりにぶつかり合う。


 ここで、オスマン軍は全てガレー船。連合軍は、巨大な要塞船ガレアスが6隻、ガレオン26隻、ブリガンティンやフリゲートなども76隻用意していた。

 ほぼ全ての艦隊がガレー船となった歴史上最大で最後のガレー船の海戦がこのレパントの海戦であった。



●レパントの海戦(1571年10月7日)

 午前9時半ごろ、両軍は互いに正面から敵に接近してく。オスマン司令官アリ・パシャは連合軍の中から現れる大型の船影に驚く・・・・。

 連合軍の中から、超大型のガレアス船が姿を現したのだった!

 アリ・パシャはガレアス船に驚き一瞬ためらいつつも、全軍に突撃の命令を出す。


■右翼の戦い(オスマンシロッコ対連合軍バルバリゴ)

 午前10時半ごろ両軍の戦闘が始まるが、連合軍のガレアスが牙をむく。そのガレアスの砲撃によって、オスマン右翼のシロッコ隊が混乱状態に陥ると、シロッコ隊の最右翼は海岸まで押しやられてしまう。

 優れた傭兵術をもったシロッコは、海岸線を巧みな航海術で沿岸航行し、連合軍バルバリゴの左翼横に回り込もうとする。しかし、バルバリゴはその動きに気がつき、シロッコ隊のさらに左翼に回りこんだため、シロッコ隊の混乱はもう抑えきれなくなってしまう。

 敵が大混乱中とはいえ、相手はオスマンの名将シロッコ。戦闘はかなり激しいものとなり、バルバリゴ隊はかなりの損害を出す。

 また、バルバリゴは敵の矢を受けて重傷を負ってしまう。かわって指揮をとったコンタリニもすぐに戦死してしまうが、シロッコ隊を壊滅させることに成功した。


■中央の戦い(オスマン司令官アリ・パシャ対連合軍司令官ドン・ジョン)

 右翼から30分ほど遅れて中央でも戦いが始まる。ここでも、連合軍のガレアス船2隻がアリ・パシャの旗艦へ猛砲撃を敢行し、アリ・パシャを苦しめる。

 歴戦の猛将アリ・パシャは、激しい砲撃をかいくぐり、敵旗艦に突撃し、接舷に成功する。

 両軍は互いに切り込み部隊を投入し、さらには、お互いの増援部隊も加え、激しい白兵戦が行われる。

 しかし、数でまさる連合軍は、コロンナに率いられ、アリ・パシャの旗艦に接舷し、小銃で甲板員の掃討に成功。

 続けてすぐに、連合軍旗艦から切り込み隊が送り込まれ、このときに、アリ・パシャは額に銃弾を受け倒れてしまう。そのため、アリ・パシャは捕らえられその場で斬首されてしまう。

 旗艦を失ったオスマン軍は、この時点で敗走することになる。


■左翼の戦い(オスマンウルチ対連合軍ドリア)

 連合軍のドリアは、敵に包囲されるのを危惧して、隊を南に進めると、ウルチもそれを追って南に進軍する。ここで、ウルチは、中央隊との距離があきすぎたことに気がつく。

 そこで、急遽反転し、空いた中央隊の右側面に襲い掛かる。この連合艦隊のピンチにいち早く気がついたサンタクルズ候は、連合軍の予備兵力を全て右側面に急行させ、危機を救う。

 さらには、ドリア隊もすぐさまきびすを返し、中央に向かうと、脱出経路を確保するために、ウルチは、せっかく捕獲した船を手放さねばならなくなってしまった。

 その後ウルチは、中央の戦いで司令官を失ってしまったため、敗走したのだった。


 こうして、レパントの海戦は、連合軍の勝利で幕を閉じ、連合国はプレヴェザの戦いの復讐を果たし、東地中海の制海権をオスマンから奪い取ったのだった。

 レパントの戦いは、キリスト教国家にとってのオスマンへの勝利であったが、オスマントルコにとってこれが致命的な敗戦になったわけではなく、両勢力の小競り合いはまだまだ続くのだった。

 しかし、この戦いで、ガレー船は歴史の表舞台から姿を消すことになる。

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