第37話 ギルドと薔薇十字団

 名前はあれですが、あっち系のネタではありませんので、期待していた方ごめんなさい。


 中世に成立した職人の同業者組合(ギルド)にもいろいろあって、特に宗教的に反社会的とされる魔術や錬金といった学問を研究していた人たちが、異端弾圧を逃れるためにつくったギルドもありました。

 彼らが弾圧から逃れるために、相互扶助をする(まさにギルドですね)ことは防衛手段として有効なことで、こうして地下組織ができあがっていったようです。


 一つの例として、あるギルドに所属する人がバッジや合言葉を示すと、どこへ行っても他の開院から一夜の宿と食事を与えてもらえる。また宿を与える会員も他国の新しい知識を得るために交流を持とうとしていたということです。

 そもそもギルドの目的は同じ技術や知識(教養)を学ぼうとして集まったものですので、職人組合もあれば画家などの芸術家のための修行団体もあります。

 学ぶ方法も各種あり、各地を旅する人もいれば、親方の下で修行に励む人もいました。


 地下組織(秘密結社)に話を戻すと、大航海時代の裏で西欧で起こっていたルターやカルヴァンによる宗教改革は、これまで揺らぐことのなかった教皇権力に揺らぎを与えることになりました。

 宗教的な対立が始まると、それと平行して魔女狩りに象徴される異端弾圧も激しくなりました。

 こうした抑圧によって、地下組織が次々と誕生していきます。

 たとえば、アグリッパという魔術師が設立した「黄金十字団」、ストゥディオンという錬金術師が設立した「福音十字団」などがあります。


 こうした地下組織は、歴史の表舞台には登場することはほとんどありませんが、会員たちは秘密を厳守する強い結束と高い信念によって力を付けていきます。

 そうして、地下組織の会員数は拡大していき、歴史の裏側で強い影響力を持っていきます。

 薔薇十字団もこうした地下組織の一つです。



 社会的な背景から、地下組織は発展していきました。薔薇十字団もそんな地下組織の一つでした。


●薔薇十字団

 「古代アトランティスの長老たちの叡智の全てを、神は秘密組織を作ってその秘儀の中に託そうと計画した。そうして薔薇十字団が創設され、計画の推進者にローゼンクロイツが選ばれたのだ・・・


 これは、人智学の創始者ルドルフ・シュタイナーのお言葉である。

あ・・、あやしい・・・あやしすぎる・・。

 まあ、それはおいておいて、薔薇十字団に話を戻すと、薔薇十字団は一説によれば15世紀から、ひそかに活動を行っており、団員は絶対的秘密を守る誓いを立てていたので、組織の存在はある時期までほとんど知られなかった。


 1614年に「世界の改革」(著者ヴァレンティン・アンドレといわれているが詳しくは不明)が出版された。その付録として「薔薇十字団の伝説」という書物が刊行され、翌年には「薔薇十字団の信条」が刊行される。

 この謎に満ちたこの三つの著作が、これまで秘密に包まれていた薔薇十字団の一部を世に知らせることになった。

 この三部作は、西欧社会で話題となり、その後もたびたび版を重ねることになる。この著作で薔薇十字団に興味を持った人々は、なんとかしてその秘密を暴こうと試みた。

(有名どころでは哲学者のデカルトとかも入会しようと試みている・・。なにやってんだか・・まあ、この人ほど変ではないが・・)

 しかしながら、誰も十字団の本部がどこにあるかわからず、薔薇十字団の名を語って金品をかすめる詐欺師まで出てくる始末だった・・・。


 1622年には、パリの通りに薔薇十字団同士会のサインのあるポスターが貼られる事件が起こった。

 このときもまた、薔薇十字団の正体をつかむことはできなかったという。


 全く正体をつかめない集団であった薔薇十字団。では、この三部作にはどのようなことが書かれていたのだろうか。内容を軽く見てみると。

・クリスチャン・ローゼンクロイツの生涯

 1378年に生まれ1484年に死去。ローゼンクロイツは、ドイツの貴族の家に生まれ、早くして両親と死別する。

そのため幼児期を修道院で過ごした後、16歳のとき知識の欲求に狩られ東方旅行に出発する。

 ダマスカスまでやってきたとき、彼は世界地図に記載されていないダムカルという謎の都市を訪れ、カバラ学や錬金術に通じた神秘主義者たちが集まっている場所で東方の聖なる秘密の知識を学んだ。その秘密の知識は「Mの書」という書物の中にまとめられている。


 それから三年後、今度はフェス(モロッコの都市)を訪れ、ここでも賢者たちと交流し、様々な知識を身につけた。

特に彼が積極的に身につけたことは、自然界の精霊と自由に交信する方法で、土や火などの精霊たちと触れ合い、自然界の大いなる秘密を我が物にしたという。

 こうして、古代アトランティス以来のあらゆる叡智を身につけたローゼンクロイツは、世界改革という大きな使命を帯びて、ドイツに帰還する。

しかし、世界はまだ神が地上に送り込んだこの男の偉大な叡智を受け入れる用意ができていなかった。


 ローゼンクロイツは西欧の賢者や王族たちに、自ら翻訳した「Mの書」を進呈して理想郷の実現を訴えた。しかし、返ってくるのは冷笑と軽蔑だけあった・・・・。

改革の機がまだ熟していないと悟ったローゼンクロイツは、自ら院を作り、そこに引きこもって研究生活を送ることにした。「精霊の家」と名づけられた院には、やがて少数の忠実な弟子が集まってきた。



 ローゼンクロイツはいろいろな場所で神秘的な秘儀を学んだ後、弟子にそのすばらしい秘儀を伝授します。


 ローゼンクロイツは7人の弟子を取り、自分が学んだ叡智の数々を授けていった。ローゼンクロイツと7人の弟子は、薔薇十字団の創設メンバーだと言われている。

 こうして発足した薔薇十字団は、年に一度「精霊の家」で定期報告会が行われた。


 その席では

・無料で旅人を治すこと。

・特別な服装をしたり、特別な習慣を身につけたりしないこと。

・毎年一回、精霊の家で会合を持つこと

・死に際に各自が一人ずつ自分の後継者を指名すること。

・R・Cという文字を我々の唯一の認印・記号・符号とすること。

・向こう100年間は団の存在を世間から隠しておくこと。

といった教団の教義を作成し、これを守ることを誓い合った。

このような掟を守り、彼らは善行を世界各地で行い、華々しい活動ではなかったが、特に学問や芸術の分野で着々と成果をあげていったのだった。


 ローゼンクロイツは106歳で亡くなる前に、


「私は120年後にもう一度よみがえるだろう」


 との予言を残した。


 彼の言葉どおり、120年後にはローゼンクロイツの墓がある会員によって偶然発見され、埋葬室と墓の内容が明らかになったのだった。

 その部屋には、「私は120年後にもう一度よみがえるだろう」という言葉が扉に書かれており、教団の秘儀を使った様々なグッズが副葬品として並んでいた。

 代表的なものは、「永遠のランプ」というもので、これは、何世紀たっても永遠に燃え尽きない黄金の油に芯が使っているランプだという・・・。


 薔薇十字団の秘儀は錬金術にまで及ぶといわれており、錬金術師が捜し求めている「賢者の石」を持っている者がいると信じられているそうだ。


 というのは、ある会員からもらった金貨が。いつの間にか銅貨に変わっていたとか、見たこともないような巨大なサファイアの指輪をしている会員を見たとか・・・ いろいろなあやしげな噂があったからだという。


 またさきほどの「永遠のランプ」の製造秘儀といった機械の作成技術にも優れており、代表的なものとしては、アルキメデスの鏡・光学機器・自動人形・永久運動装置・人口の歌(蓄音機)といった機械が彼らによって発明されたものだという・・・。


 極めつけは、魔術である。会員は自由にあちこちに姿を現したり、消したりする術や不治の病を治療する術などを駆使していたという・・・・。


 最後に、ローゼンクロイツとはドイツ語で薔薇十字を意味するが、ローゼンクロイツという人物が本当に存在していたかどうかは今なお不明である・・・・。

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