第28話 謎の暗殺集団
サラディンに関係する記事なので、あげておきます。
●「鷹の巣」アラムート
鷹の巣を意味するアラムートの砦は、シリアなど各地にあるシーア派イスラム教ニザリ教団の総本山である。場所は、現在のテヘランの西100キロほどのムラヒダ地方のエルプルズ山。
山の長老と呼ばれた指導者ハッサン・ザッパーは1090年この渓谷に難攻不落の要塞を築き上げた。ここでは、ザッパーを中心にニザリ教団が自給自足の生活を行っていた。そして、彼らの真の仕事とは、政敵の暗殺からその手腕を生かしての暗殺請負業であったことから、ニザリ教団の別名は「暗殺教団」と呼ばれたのだった。
彼らの勧誘方法は、マルコ・ポーロの見聞録によると・・・
ニザリ教団は、12-20歳の若者をハッシッシ(麻薬)で眠らせ、教団の築いた壮麗な楽園に招き入れる。そこで、贅沢の限りと性的快楽を味合わせた。招かれた若者が、もうこの生活なしでは生きていけないほどになると、再びハッシッシで眠らせ、元いた場所で若者を目覚めさせる。
目覚めた若者に、ザッパー老子は尋ねる
「お前はどこからきたのか?」
「楽園からきました。」
「もう一度いきたいか?」
「はい、どんなことがあっても。」
「ならば、異端者を一人殺せ。帰ってきたら再び楽園に戻してやろう。たとえ死しても、天使がお前を楽園につれていってくれるだろう。」
もう楽園なしでは生きていけなくなった若者は、楽園を夢見て短剣一本で暗殺に旅立つ。また、ひとたび歓楽の味を知った若者はどんな困難にも耐え抜き、目指す相手を仕留めるという。
こうした若者たちは、献身者と呼ばれ、修道士・乞食・商人・召使などに変装して、シーア派に敵対するスンニ派の要人たちを次々と暗殺していったのだ!
これに黙っていなかったスンニ派も大軍を派遣して砦を三度包囲し、信徒たちの田畑を焼き払って兵糧攻めにし、教団を飢餓に追い詰めるが、ついに砦は落ちなかった。これにたいし教団も、スンニ派の要人を暗殺して報復したのだった。
●サラディンに伸びる魔の手
中世の理性・カリスマと後世の人々から尊敬を集める英雄サラディンは、スンニ派イスラム教徒で、彼が起こしたアイユーブ朝もまたスンニ派だった。
これを快く思わなかったシーア派のシリア王は、ニザリの暗殺教団にサラディンの暗殺を依頼。
二度にわたってサラディンは、暗殺者の刃に襲われるが、ニザリの噂を知っていた彼の準備は周到で、鎖帷子(かたびら)をまとっていたためかろうじで助かった。
二度にわたって襲われたサラディンは、ニザリ教団に報復を決意し、1176年シリアのマスヤーフ砦を包囲。しかし、この砦の長老ラシード・シナーンは後世に語られるほどの傑出した指導者であった。
ラシードは、使者をサラディンの募舎に送り込み、その使者は厳重な身体検査のあと、二人の衛兵に囲まれながらサラディンの前にたつ。
使者は突然、二人の衛兵に向かって
「今、もしわが師の名において、スルタン(サラディン)を殺せと命じたらどうするか?」
とたずねると、二人の衛兵はうなずき剣を抜き放ったのだ!
これにはさすがのサラディンも顔が青ざめた。最も信頼する部下が剣を抜いたのだ!
この後使者は、伝えることはこれが全てだと言葉を残し、二人の衛兵とともに立ち去った。
使者が去るとすぐさまサラディンは攻囲を解き、シリアから退却したのだった。
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