第21話 古代の環境破壊(メソポタミアとマヤ)

 古代文明の時代から人類は環境破壊をしてきました。四大文明の中でもシュメールやバビロンが出たメソポタミア文明の環境破壊について今回は記載します。


●メソポタミアの環境破壊

 オランダ・イングランド・フェニキアと環境破壊で深刻な被害を受けた国は古今東西いろいろあるが、人類の文明は生まれたてのそのときから、環境破壊が始まっていた。

 世界最古の優れすぎた文明・・・メソポタミア文明でも実は環境破壊が起こっていたのだ。

 まずは、メソポタミア人の文明がいかに優れていたかを見てみよう。


◆メソポタミアの驚くべき農業技術

 メソポタミアの地理条件は決して恵まれたものとはいえなかった。その地理的条件は、ほとんどが平坦な沖積平野だったのだ・・。沖積平野とは、河川の堆積作用によって形成された平野のこと。

 この環境は、人類の文明に必要な石や木材を手に入れることも困難な環境である。

通常、農業が発展しなければ文明としての発達が遅れるのが普通であるが、メソポタミア人は厳しい環境だからこそ、すばらしい知恵を発揮して農業を発達させたてきた。

 メソポタミア人の知恵とは、世界で始めての「人口灌漑」の技術で、彼らはこの技術によって、紀元前8000年もの太古に大麦・小麦・豆類などの穀物生産を可能にしたというわけだ。

 そして、最初は羊・山羊、後にはさらに生産性の高い牛・豚の飼育も可能となったのである。

 これは、現在も残る穀物栽培と家畜の飼育を組み合わせた農業で、「地中海式農業」と呼ばれている。

 この農業の発達によって、メソポタミア人の人口は20-50倍に膨れ上がり、ますます繁栄していくのだった。

 さらに驚くなかれ、彼らの麦の生産性は種まき量のおよそ50倍!の収穫があったそうだ!

 この50倍という数字・・・現在の日本の麦の生産性とほぼ同じだというのだ!(ちなみに、中世ヨーロッパでは5倍程度・・・・)


◆大打撃を受けるメソポタミアの農業

 人口灌漑の技術で繁栄を極めたメソポタミア文明だったが、紀元前2500年ごろに、気候が乾燥していって、人口運河の水が蒸発していく・・。

 そのため、灌漑用水はどんどん蒸発していき、そこに含まれる塩分が土壌に蓄積していってしまったのである。

 これに拍車をかけたのが、川の上流域の森林伐採である。木を切り倒すことで、土壌が侵食され、塩分を含んだ土が下流に蓄積していって塩害をさらにひどいものにしてしまった・・・。

 紀元前2400年ごろには、1ヘクタールあたり平均2536リットルの大麦収穫量(現在のアメリカの収穫量に匹敵するほど!)を誇ったメソポタミアは、この塩害によって紀元前2100年ごろに・・なんと・・4割程度の収穫高にまで落ち込んでしまったのだ!

 この塩害の被害が南メソポタミアのシュメール文化の衰退に大きく影響しているといわれている。


 次はマヤ文明の環境破壊を見てみます。

●焼畑農業の知恵

 メソポタミアが農業に適していない地域で、灌漑農業によって発達し繁栄したが、塩害によって大打撃を受けた。これに対し、古代マヤ文明でも焼畑農業と言われる技術が発達していた。

 そもそも農業というものは、農業生産性を高めるために豊かなしっかりとした土壌を確保しなければならない。

 マヤ文明の地域は熱帯地域に属し、熱帯の土壌は森林と密接な係わり合いを持っている。それはどういうことかというと、森林を恒久的に伐採して畑を作った場合、土壌にラテライトという堅い層ができてしまい、農業に適さない土壌になってしまうのだ。


◆ロクツノの説明コーナー

 やあ諸君。歴史ミステリー調査団通称HMRのロクツノだ。今出てきた謎の物質ラテライトについて我がミステリー調査団が解説しよう。

 ラテライトとは、熱帯地域特有の土地に見られるもので、「紅土」とも呼ばれる。その材質は、酸化鉄やアルミナといったものが多く含まれ、赤黄色をした堅い土地である。

 簡単にいうと、ラテライトが形成されてしまうと農業は絶望的になってしまうということだ。

 今回はこのへんで・・。では諸君!また会おう。


 このラテライトへの対策としてマヤの人たちが使った技術が「焼畑農業」という技術。

 焼き畑農業とは、森林を完全に伐採してしまうとラテライトが形成されてしまうので、森林をいくつかの区画に分けて、耕す予定の農地を晩秋から初冬にかけて森林伐採を行う。

 そして、切り離した木が乾燥するころにそれらを燃やし、そこに種を植える方法である。

 翌年にはまた違う区画の森林を燃やし、また種を植える・・・これがエンドレスに続くというわけ。

 ようは、1.2.3.4.5という区画があれば、

 1→2→3→4→5→1と戻るわけだが、1に戻るころには森林が再生されていてまた焼畑できる仕組み。

 こうすることによって、恒久的な農地を作りラテライトが形成されてしまうのを防ぐことができる。


 昨今、この焼畑農業が森林破壊の元になるとやたら叩かれているが、本来焼畑農業とは、森林を再生させることを目的とした農業なので、田んぼにしてずっと農地化するよりずっと環境に優しい農業と思えてならない・・。

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