第3話 古代エジプトの医療技術

 ミイラを作る技術によって医療がかなり進歩していたエジプトについてです。


●エドウィン・スミス外科パピルス

 聞き覚えのない名前のパピルス(書物)だが、世界最古の外科文献であるエジプト新王国初期(紀元前1500年前ごろ)に書かれた書物である。

 詳しくは読めないし翻訳もされてないので、吉村作治氏の著書から内容を抜粋してみよう。


◆パピルスに書かれた症状

 まず、外科医は矢の傷跡を清潔にし、出血を止め、裂かれた肉を巧みに縫う。検査をし、患者の左腕と左足が麻痺していることを知る。

 彼は頭蓋骨の上のかすり傷を調べ、何の裂傷もないことを確かめる。しかし、麻痺は神経圧迫によるものであること、その圧迫を除去しなければならないことを認める。

◆症状の処置

 彼の外科手術の器具は、さまざまなかたちにまがった幾本ものナイフ、ドリル、のこぎりである。

 小さな尖ったのこぎりで、彼は頭蓋骨の一部を取り外し、神経が露出するように膜を切り取る。

 固まった血を静かにとり除きながら、また損傷を受けた組織を治めながら、彼は膜を元の位置へ縫いつけ、頭蓋骨の部分を元の位置に戻して、包帯と粘着剤によって、低位置に縛り付ける。


 この書物の内容が恐ろしいまでに現在にも通じる医療技術であることは、現在の我々から見て取れる。


●エジプトのおそるべき外科技術の水準

 さきほどの例に挙げた書物のような治療はすでに紀元前3000年ごろから施されていたそうである。

 エドウィン・スミス外科パピルスには、さきほどのような症状と処置について48例が記載されている。

 他の優れた例としては、骨折の処置方法として、ハチミツや脂身を幹部に塗布し骨折箇所を固定するといったものがある。骨折を固定するという処置は現在でも使われている処置だ。

 またエーベルス・パピルスという書にはなんと877例もの病気に関する処置方法が記されている。

 これらの優れた医学知識は、香油の注入と脳と内臓を取り出すミイラの作成技術によってもたらされたものである。


 しかしながら、病気の明確な原因がわからない場合、悪霊によるものだと結論つけたり、解剖を行っているにも関わらず、血液の循環に気がつかなかったりと漏れもあることがまだまだ古代だったのだと思わせる。

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