第5話
麗華は終礼が終わると、クラスの皆さんからノートを集めました。数学の宿題です。
『よっこいしょ』
40冊ほどのノートは重さを気にするほどのものではありませんが、とても重く感じます。まず、麗華の心が重いです、苦しいです。出来ることなら廊下の窓からこのノートを放り出し、『恋の神様のいじわるー前世のバカー』と叫びだしたいくらいです。
職員室はどちらかというとガラリとしていて、ドアから覗くとコピー機だけがシュィーシュィーとひたすらうごき、他の先生方は紙にパソコンに向かってにらめっこばかりしています。私は宮池先生の机に一番近いドアから『失礼します、宮池先生に宿題の提出をしにきました、2A3の悉です。』と定型文を口に出すと『ありがとうございます、ここに置いてください。』と宮池先生は定型文で返しました。私はここにノートさえおけば帰れるこの場から消え失せられるとそそくさ動きました。変に緊張していたので、ロボットのように方向転換してドアから出ようとした時、『これ』と宮池先生から手渡され、頭上にはてなマークを浮かべながら麗華はそれを受け取りドアから『失礼しました』と出ました。逃げるように出ました。下駄箱でまつゆうちゃんの元へ急ぎつつ手元にある先生からもらったそれは何かと見てみると、何やら付箋が。
(僕の勝手な思い込みかもしれませんが、僕のせいで悉さんの目をそんなに腫らしてしまったならすみません。 芝)
と、それはほっとアイマスクでした。
宮池先生は、私が思っていたよりずっとずっと大人で素敵で…ツンデレでした。と言ったら違うと言われるかも知れませんが。
駅の近くのコンビニでパフェを食べながら、ゆうちゃんにアイマスク事変について話しました。事変と言っても過言ではないです、麗華にとって。ゆうちゃんの感想は
『罪な男だねぇー宮池せんせー』
とのこと。まず、付箋に僕の思い込みかも知れませんがという前置きをつける謙虚さ、そもそも僕という一人称に萌えを覚えずに入られませんけれど、そして最後には 芝 なんて、いつもの癖なんでしょうか、麗華なんかに書くのなら 宮池 でいいものを 芝 だなんてなんて可愛いんですか。まず、このホットアイマスクをどうすれば、良いのでしょう、まずは宮池先生との関節タッチに酔いしれるべきでしょうか、それとも毎晩枕の下に引いて宮池先生の夢が見れますようにと祈願するべきですか、それともこの袋を見つめ続けることで萌えの教授マシーンと化すべきでしょうか。これをゆうちゃんに話すと
『普通に腫れた目を治すという選択はないのかね』という感想をいただきました。
なるほど、惜しまれつつもこの袋を開け、家でのんびり使わせていただきます、宮池先生、神様、感謝です。そう夕日に話しかけました。
それでも麗華はあきらめない 桜 木花 @konokono
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