第4話
学校に着くや否や憂鬱なことに気がつきました。今日は宮池先生の授業があるのです。しかも、授業変更のせいで二時間連続で。
『ゆうちゃん、いまから仮病で保健室に行ってもいいと思いますか?』
『ダメとは言わないけど、逃げてても始まらないんじゃない?どうせこれからも顔合わせなきゃダメなんだし。』
う、うぐぅ。この、昨日寝れなくて涙でいっぱいだったせいで、真っ赤に腫れ上がった目をどうごまかせばいいのでしょう。朝教室に入るなり、るみちゃんやゆみちゃん、さなちゃんにまで目が腫れてると指摘されたのに、先生が気づかないわけありません。きっと麗華の顔を見て気まずいだとか鬱陶しいだとかそう思うに違いないです。
そう思いつつ、始まった数学の授業でしたが、問題はそこではありませんでした。宮池先生の様子はいつも通りなにも変わらず、三次関数の曲線をなんの震えもなく美しく書き上げ説明する姿に麗華はおもわずうっとりしました。昨日のことなんて忘れて。そして、問題は起こりました。
とても……とても眠かったんです。
麗華は普段九時から六時までの九時間睡眠で生活しているのが昨日は六時間しか寝ていませんでした。それは眠くなるに決まっています。普段なら目を見開いて、なんなら輝かせて宮池先生のスーツを翻しながら伸びやかに伸びる声に耳を傾けているのですが、今日はその美しい声が麗華の幸せと困惑の気持ちを調和させ落ち着かせる子守唄かのように心に響き、思わず授業中にうとうとしてしまったのです。
『悉さん、眠いなら顔でも洗ってきたらどうです』
ふと、目を開けば麗華の目の前に宮池先生がたっておりました。あらまぁ…なんてものではないです。もう麗華は穴があったら入りたいどころか、穴があったらいっそその穴を掘り続けてブラジルに逃げたいとまで思いました。
『すみません』
そう苦し紛れに言うと、宮池先生は麗華を見下すような冷ややかな目線を残すかのように送り、教壇へ戻るとまた授業を始めました。
授業が終わると
『悉さん、寝ていたからといってはなんですが、放課後宿題を集めて職員室まで持ってきてください。では。』と言い残し教室を出て行きました。麗華のHPはただでさえ0に限りなく近いほどだったのに、また宮池先生のもとに行かねばならないと思うとMPまで削られてしまいそうでした。
『ゆ、ゆうちゃん……』
とゆうちゃんの方を見てつぶやくと
『どんまい……。』と力なく笑われました。
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