TARAKO

傲慢と偏見とたらこ戦争が終結した6月29日

タランコス帝国とハトサブレ共和国との和平条約調印式が執り行われ

正式にタランコス帝国の配下にハトサブレ共和国は置かれ、タランコスの特別司令部、通称GHXはハトサブレ共和国に多大な関税を敷き、今後の教育を取り付けた。


タランコス帝国49代目帝王のTA=I=GA=KO=N=DOはハトサブレ共和国の共通言語を「ハトサブ語」から「たら語」にするように指示した。

ハトサブレ共和国の国民はタランコスの移民に奴隷のように扱われ、地獄のような日々を過ごした。


苦痛で死にそうなハトサブレ共和国民は当時のハトサブレ共和国大統領に対するデモを起こし、条約改正を執り行うまで帰らないと大声で言い張った。

そのデモを止めたのが、タランコス帝国のGHX初代提督マッターカーだ。

マッターカーは、幾度となく繰り返される国民のデモに対しいつも「まったー!かーよ!」と言っては笑いを取り、これを忘年会の常套句にしようと思っていた。

しかし、そんなGHXが気を抜いている間に

タランコスハトサブレ条約の改正を求め、3人の男が立ち上がった。


それは当時の

ハトサブレ共和国外交官 ラムニク

ハトサブレ共和国国務長官 デブデス

ハトサブレ共和国特別指導 サムイネ


だった。


ラムニクは自分たちの文化は優れていることをタランコスに知らしめるため文化的に優れるものを国から集めた。

しかし、タランコスは文化を反映させるのは帝国のみであるという法律を作り、それを阻止、デブデスは食でハトサブレ共和国が優れていることを知らしめるため、精鋭を集め、おにぎりを握った。

しかし、タランコスはタランコスで作ったものしか食べることを禁ずとし、これもまた阻止した。

そして残ったサムイネは、前の二人に対して、言い放った

「君たち、サムイネ。僕ならこういう手段に出るね。」

そう、サムイネの異名は特攻馬鹿。大量の武器を裏ルートで揃え、TA=I=GA=KO=N=DOを暗殺しに行くと言って、タランコス帝国に潜入した。

聞くところによると、入り口で捕まってそのまま殺されたらしい。

そもそも、サムイネの役職である特別指導とはなんだったのか

それはこの歴史が語られる今でも、不明なものである。





近藤大河は歴史の本を閉じた


「は〜〜〜んで、どうなったんだよこれ。」


「教えてやろうか?」

後ろから声がした。

思えばなぜ自分は放課後に読書をしているんだとふと思った。

今日はフェミニーナ斎藤ジョセフの葬式に行くはずじゃ?

そもそも、フェミニーナ斎藤ジョセフが死んで悲しむやつがいるのか?

話によるとフェミニーナ斎藤ジョセフが死んだと報告したフェミニーナ斎藤ジョセフの親の声はどこか嬉しそうだったっていうじゃないか。どういうことだ。

でも、そういやフェミニーナ斎藤ジョセフが死んだとき泣いてたやついたなぁ

あいつそんなにフェミニーナ斎藤ジョセフと仲良くなかったのに、知ってるやつが死んだ途端泣くやつかよ、よくいるよなぁ、そういうやつ。さて、続きを読むか


「いや、あの、無視しないで、」


そういえば誰かに話しかけられた気がする。

ただ、これで振り返って僕が話すよりも、歴史本の続きを読む方がきっと有意義だ、そうに違いない。そう思った近藤大河は歴史本の次のページを開くために親指にものすごい量の唾液をつけた。


ページがめくられる。めくった部分が湿っている

なぜだろう。


「それ、ハトサブレは滅びるんだよ。ってか、タランコスが統一するんだけどね。」


近藤大河の左ストレートがしゃべってきた男の顔面にあたるのは無理のないことだった。


「な、何するんだよ!いきなり殴るなんて!」


「テメェ、ネタバレすん・・・フェミニーナ斎藤ジョセフ・・」


目の前にはフェミニーナ斎藤ジョセフがいた。

俺は混乱した。フェミニーナ斎藤ジョセフは死んだんじゃ?

そもそも、なぜ生きてたのか。今まで。謎だ。

謎が謎を呼んでいる。俺は左手をふーふーと息を吹きかけると

座って歴史本をまた読み返した。


「いや、色々質問あるだろ!なぜ生きてるんだとかさ!」


近藤大河はそれっきり返事をしなかった。

いや、近藤大河は一度も返事はしていない。彼は殴っただけだ。

殴って、独り言を言っただけだ。ネタバレが、許せなかっただけだ。

近藤大河はイヤホンをした。

流れてくるamazarashi の軽快なメロディ。

近藤大河は曲を口ずさみ、イヤホンを外し、空に銃を乱射した。


鳥が、息を呑んだ。



続く

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る