第2話 たらこ

授業が始まった。

いつものように席に座り、教科書を開くと近藤大河は気づいた。

「やっべ。ノート忘れた。」

すると後ろの席の葉山祐樹が近藤大河の肩をたたき、静かな声で言った。

「これ、ルーズリーフ。使いなよ。」

「え、使っていいのか?」

「いいよ。俺まだ数枚持ってるし」


チーン!!


近藤大河はもらったルーズリーフで鼻をかんだ。


葉山は近藤大河にさっきよりも大きい声で言った。

「おい何をしてるんだよ!もうつかえなくなっちゃったじゃねえか!」


すると近藤大河はきょとんとした顔で言った

「まだ数枚ルーズリーフあるんだろ。贅沢な奴だな。」


葉山はそれをきいて近藤大河と同じようにきょとんとしてもうそれっきり近藤大河と話そうとはせず、黒板の文字を写し始めた。


すこしして、横の席の新塚あきらが近藤大河のつくえをつつき、近藤大河が横を向くと、言った。

「あの、もしかして風邪ひいてるの?鼻水出てるし、使いなよ。」


カシミアの高級ティッシュをわたしてきた。

近藤大河はそれを受け取り、ティッシュに板書し始めた。


キーンコーンカーンコーン


授業が終わりティッシュを見るとびりびりに破けていた。

近藤大河は新塚あきらに言った。

「お前のティッシュ全然文字かけねえな」


新塚あきらはそれっきり近藤大河と口を利かなくなった。



授業がすべて終わり、放課後になった。

「今日はどうしようかなぁ。帰るのももったいないし、ゲーセンでも寄ってくか」

席を立ち、廊下を出て階段を下り、下駄箱からローファーを取り出したときローファーとともに紙が落ちてきた。

その紙は丁寧に封がされており、ハートのシールで固定されていた。

近藤大河は奇妙に思った。なぜ、だれが、いつ、下駄箱の中に入れたのかを。


封をとき、手紙を読むとそこには


「4922222」


と書いてあった。


「なるほど」


後ろから声がしたと思い振り返るとフェミニーナ斎藤 ジョセフがいた。

フェミニーナ斎藤ジョセフは今年この学校に転校してきた男で女子からとても人気があり、男子からは正直煙たがられていた。無論、近藤大河もフェミニーナ斎藤ジョセフのことはそんなに好きではなかったが嫌っているというわけでもなかったため、たまに絡み、たまに一緒に帰る仲だった。フェミニーナ斎藤ジョセフは近藤大河を気に入っているようで、フェミニーナ斎藤ジョセフから休みの日に遊びに誘ったりしていた。

もちろん近藤大河は断っていた。

「何がなるほどなんだよフェミニーナ斎藤ジョセフ。俺にはさっぱりわからねえ。フェミニーナ斎藤ジョセフに関係があるとは正直思えねえよ。それよりフェミニーナ斎藤ジョセフ、なんでここに?」



するとフェミニーナ斎藤ジョセフは言った。


「まず、俺の名前は田中健司だ。かすってなさすぎるあだ名はやめてくれないか。なぜここにいるかはなんとなくだ。」


近藤大河はきょとんとした表情を浮かべ、言った。

「この数列、どういう意味なんだ?」


するとフェミニーナ斎藤ジョセフ(田中健司)は紙を覗きながら言った


「これ、携帯の文字打つ時の数字だよ「あ」なら「1」。「か」なら「2」だったろ?」



「ここに書いてあるのは〔4〕〔9〕〔2〕〔2〕〔2〕〔2〕〔2〕だろ?つまり、〔た〕〔ら〕〔こ〕もしくは〔たらかかかかか〕だな。」


「たらこ。なるほどな。つまり俺の正夢ってわけか。サンキュー。フェミニーナ斎藤ジョセフ」


「お前わざと言ってるだろそのあだ名。じゃあな」





その夜近藤大河は起こったことをノートに書いてみたが、どう書けばいいかわからずとりあえず

「フェミニーナ斎藤ジョセフ」

とだけメモし、その日は眠った。




















次の日学校へ行くと、フェミニーナ斎藤ジョセフが死んだことを先生から知らされた。



つづく。

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