第14話 龍神復活(ロリ)


 あれからジェノの家にやってきて、さっきのこととかこれからの事とかを聞こうとする俺に対してジェノは、今日の分の特訓してくると言い残して荷物やあの武器も置いてどこかへ出かけてしまった。まぁ、話したいことは色々あるけれどまた後でいいや。俺も試したいことがあるし。


 俺にあてがわれた元空き部屋で、ベッドに腰掛けてリラックスする。この世界に呼ばれてからようやくスキルを色々試せる時間が空いたんだし、活かさないとな。


 そしてしばらく色々やっていて、いくつか新しい発見があった。一部のスキルは後からパッシブ化出来る。やり方は脳内申請用紙を提出するだけ。これにより【水の使い手】や【弱体化】はパッシブスキルになった。もちろん、任意でオンオフが可能だ。それと習得するときにパッシブの指定も出来るが、効果によっては通らないようだ。


 具体的な例で言うと、【身体能力強化】のスキルはパッシブではもらえなかったので、アクティブスキルとしてゲットした。わざわざ【弱体化】してるのに何故このスキルかと言うと、もちろん本来のステータスを開放しなくても済むようにだ。制限時間付きとはいえあって困る物じゃないし。


 あとついでとばかりに、【空間固定】と【障壁】というスキルをパッシブで作成した。文字通り物体を指定した座標に固定するスキルと、防御シールド的なものを発生させるスキルだ。見た目かっこよくなるように緑色の六角の板状のバリアが出る。そこは単なる趣味だから許して欲しい。


 続いて検証したかったのは、全く使っていなかった【アイテム作成】。あんまりピンとこなくて放置してたから、いい機会だ。一緒に検証してしまおう。外に出かける必要があったので、ジェノの荷物も持っていくか。無用心だしね。






 そうしてやって来たのは龍神の広場。もう夕暮れ時でここなら人目もほとんどないし、特殊な結界が張ってあるから何かが起きても周りに被害は出にくい。一応【弱体化】をオフにしたところで、ジェノの革袋がもぞもぞと動いている。何事かと口を開くと、光の玉としか言えない輝く物体が中から飛び出して、少し前方で浮かんでいる。すると段々と人の形を作り、輝きが収まると今の俺と同年代くらいの女の子がそこにいた。一応言っとくけど12,3歳くらいの方ね。


「ようやく回復したぞ、あれだけ痛めつけおって、もっと我を敬って欲しいな!」


 髪は長く、前髪意外は膝くらいまである。色は薄水色で、その中に金色の毛が一房前に垂れている。ぱっちりとした金色の瞳に透き通るような白い肌、まるっこい顔、そしてかわいい唇。白いワンピースを着た姿はまさに美少女。突然のことで混乱してしまいまじまじと見つめてみると、その子は何故か鼻息荒く偉そうに胸を張っていた。


 えっと、誰?多分龍神の宝玉から出てきたんだろうから龍神なんだとは思うけど、何故にこんな姿なのか。威厳とか全く無い。ただひたすらに可愛いだけだ。


「もしかして、龍神か?」


「そうだ。ある程度回復したから実体化したのだ。ちなみにこの身体はそなたの容姿を真似て作ったから、傍目には姉妹のように見えるであろうな!」


 何故こんなに元気なのか。っていうかそれって俺の身体がこんな感じの美少女ってこと?正直見る機会なかったからびっくりした。髪型や髪の色は真似してないみたいだ。俺は今は後ろで結んでポニーテールだけど龍神は結んでいないし、俺は黒で龍神は水色だし。しかも声も似てる。


「これからはその姿で一緒に行動するのか?」


「うむ、我の力の大半は次代へ託したし、残った力もそなたに渡すからな。龍の姿に戻ったりと派手なことは出来んのう。そら、受け取るがよい」


 ふと新たなスキルを習得した。なになに、【龍神の加護】か。龍神の力の一部を使うことが出来るスキルだそうで、使い方は好みらしい。なら後でちゃんと考えておこう。


「ありがとう、龍神」


「あれだけ一方的に負ければ逆らう気も失せるというもの。いっそ気持ちよかったわ!あと、我のことはコノミズノカミと呼ぶが良い」


 殴られて気持ち良いってまさか・・・いや、よそう。んで本名はコノミズノカミね。どことなく日本っぽさを感じるけど、若干よびづらい。ニックネームでもつけるか。


「んー、呼びづらいからコノミでいいか?」


「うむ、それで構わぬ。それで、今は何をしておったのだ?」


「今はスキルの実験とか、練習とかかな」


 ついでに俺の正体とか、スキルに関して説明しておく。コノミは口を開けっ放しにして呆然としている。そりゃそうだろうね。しばらくしてから我に返ったコノミの口から出たのは「そんなの反則だ・・・」という言葉だったし。


「まぁまぁ、そのお陰でこうして仲良く出来るんだし、いいじゃない」


「ふん、まぁ、そういうことにしておいてやるかの!」


 腕を組んでそっぽを向くコノミ。ほっぺたも膨らんでいてなにこれ可愛い。


「じゃあ【アイテム作成】を試すその前に・・・これも気になるんだよね」


 取り出したるはジェノが愛用している武器、太陽の煌きというらしい。価値があるのはこの宝石だけで柄の部分は使いやすいようにつけただけの物だそうだ。


「これが、どうかしたのか?」


「魔力をこめると太陽鉄っていう特殊な金属を精製して武器になるんだってさ。これに俺の魔力を流したらどうなるかと思って」


「ほほう、それは確かに気になるのう」


「それじゃあやってみる。ふい!」


 【弱体化】をオフにして右手に持つ宝石へと魔力を叩き込む。特に何も考えずに、ある程度全開で。もしかしたら壊れるかもと思ったけど、すごいアイテムだとか言ってたしきっと大丈夫だろう。どんな武器が出来上がるのか。果たしてその結果は・・・


 ずしーんと鳴り響く音、そして何か重たい物が着地したかのような衝撃。目の前には、見上げてるほど巨大なオレンジ色の物体があった。足っぽいものしか見えないがかろうじて人型だというのは分かる。


「さぁ勇気ある者よ、私に乗り込むのだ。さすれば闇を打ち砕く剣となら」


 魔力を断ち切った瞬間に何事かを喋っていた何かはすぐに消え去った。そして数秒後に太陽の煌きが降って来た。いやいやいや、なんで巨大ロボットが現れるんだよ。しかもなんか喋ってたぞあれ。とんでもないなジェノの家の家宝。


「すごい武器だのう・・・。あれはおそらく一国にも匹敵する力を持っておる」


「いや、さすがにあれを武器と呼びたくないんだけど」


 何故失敗したのか。そもそもあれは失敗とかそういうものでもない気はするけど。


 首を傾げつつ太陽の煌きを拾い上げていると、コトミが魔力が多すぎたのではないか?とアドバイスをくれた。おお、きっとそうだ。というわけで再チャレンジ。今度は魔力が多くならないように、少なく、とにかく少なくをイメージして魔力を流す。水を一滴流すようなイメージで。


「お、出来た」


「なるほど、本来はこうなるのだな」


 宝石の部分から、10cmくらいのナイフみたいな刃が生えている。これだけ小さいと実戦には使えそうに無いけど、ただ試してみたかっただけだし問題ない。さっきのは問題ありすぎる。とりあえず試しに振ってみると、シュパッ!っと小気味良い音がした。いやー、刃物を振るのってなんか楽しいよね。


「ん?なんだこれ」


「んん?糸、か?」


 試しに振るってみた空間をよく見ると、一筋の線のような物が空中に浮かんでいる。しばらく見つめていると、段々広がってきてそれが切れ目だということが分かってきた。それは尚も広がっていきその向こうには


「やばいやばいやばい!」


パァン!と、音の衝撃が身体に伝わり周囲の結界が震えるほどの勢いで、開きかけた切れ目を上下から手で叩く。なんだこの切れ味、空間切り裂いちゃったぞ!


 なんとか力づくで切れ目を消し去り、安堵の息を吐く。すると、コノミがとある方向を見つめているのに気づいた。あっちは確か、領主の屋敷があった方角だ。


「どうかした?」


「なにやら慌てた様子で向かってくる者がおるの。・・・この気配はおそらくポーツタフ家の者であろうな」


「やばい、さっきの巨大ロボ見られたか。行こう!」


「やれやれ、強引なのは嫌いじゃないぞ」


 また見つかればしばらくの尋問は免れない。俺はコノミの手をひったくるように掴むと、夕暮れの町を駆け出した。






ステータス


名前:スプリ

種族:ムゲン

筋力:S 魔力X はやさ:S 頑強さ:S 生命力:S

スキル

【スキル創造】

【アイテム作成】

【ステータス鑑定】

【ステータス偽装】

【水の使い手】

【弱体化】

【時間停止】

【空間固定】

【障壁】

【身体能力強化】

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