第4話 チート能力発覚

 ジェノママ曰く、それはムゲンという名で太古の伝説として語り継がれている最強の存在。無限の魔力と、無限のスキルを持つ。故に“ムゲン”。そして俺がそのムゲンだという。


「あの馬鹿息子はまた厄介なものを呼んだものだ」


と語るジェノママが教えてくれたステータスはこちら


種族:ムゲン


筋力:S 魔力:X 頑強さ:S 早さ:S 生命力:S


スキル

スキル創造

アイテム作成


「ほとんどSだけど、魔力だけ・・・ばつ?それにスキルも二つしかないし」


 突込みどころがいくつかあるんだけどどこから聞いたらいいものか。首を傾げてみせると、ジェノママは苦々しい顔のまま教えてくれる。


「ステータスのそれはばつではなくエックスだ。最高ランクのSすら越える規格外の証だよ」


 なるほど、Sよりさらに上があったのか。さすがに無限の魔力を持つとかいうだけはあるね。だけどこのスキルは名前で意味は分かるけど、そんなにすごいのか、と思ってしまう。


「このスキルは、思い描いたスキルを申請して通れば習得できるスキルだ。必要な魔力などの条件は自分では決められないが、効果さえ考えてしまえばやりたい放題だ。もう一つの方も、アイテムに好きな効果をつけられる。素材さえあればアイテムに変換してそのままマジックアイテムのようなものが出来上がる」


 なるほど、それはまたとんでもない・・・とりあえず一つ試してみるか。


 「【スキル作成】」


 早速試してみると、何かを消費した気がした。これがきっと魔力なんだろう。すると頭の中に、二つのウィンドウのようなものが浮かんできて『スキルの名前と効果(必須)を書き込んでください』と書いてある。


 その文字に従って頭の中で言葉を思い浮かべて当てはめていく。『生物のステータスを鑑定する』っと。名前は必須じゃないし適当でいいな。一人満足すると、そのウィンドウがすっと溶けていき『申請を受理しました』という言葉だけが残っていた。


「おお、何だかよく分からないけど使えた・・・のかな?」


「スキル作成を使ったのか?内容によっては時間もかかったりするが、許可は下りたか?」


「申請と許可ってそんな役場じゃないんだし・・・って許可下りた!」


 頭の中には『許諾しました』の文字が。ほんとにお役所みたいだな!


「・・・ああ、確かに【ステータス鑑定】のスキルが増えてるな。これでそのスキルが使えるはずだ」


 マジか。でも言われてみると確かに、手や足の動かし方が分かるようにスキルの使い方が分かる。俺は自分の右手をジェノママの顔に向けて呟く。


「【ステータス鑑定】」


 すると頭の中にジェノママのステータスがイメージとして結ばれていく。ふむふむ、種族は人間で・・・おーすごい、魔力がBもあるし他も結構高めだ。だけどスキル欄の【鬼殺し】って何。


 ああいやいやいや、このスキルがすごいのは分かったけど、気になることが出来てしまった。


「確かに使えたけど、どうしてそんなに詳しいんですか?」


「ああ、それは私も“ムゲン”だからだよ」


 な、なんだってー!?最強のモンスターだとか言われたと思ったら実は私もそうですなんて、一体どういうことだ。混乱してきた。というか、ジェノママが“ムゲン”だということはもしかして・・・。


「いや、ジェノは“ムゲン”ではない。落ちてたのを拾ったんだ」


 拾ったって、あいつは子猫か何かか。あんなヤンキーみたいな子猫嫌だ。


「でも今の【ステータス鑑定】では種族のところに人間って」


「それは私が【ステータス偽装】のスキルを持っているからだな。ちょっとやそっとじゃばれることはない」


 それが“ムゲン”の力ってことか。なるほど、確かにそれくらいしないと騒ぎになるものな。真似させてもらおう。


「とまぁせっかく同種族に会えたのだから少しくらいの手助けはしよう。とはいえ、少しだけ先輩として助言をするだけだが」


 すっかり無表情になったジェノママを有難いことを言ってくれる。26歳無職の男が突如異世界に飛ばされて女子中学生みたいな身体になってしかも最強のモンスターとか心細すぎて意味分からないから心強い。


「とりあえずステータス偽装は必須として、君も別の世界から来たんだと思うが翻訳システムに少し不具合があるようだ。【翻訳】のスキルをとっておくのをおすすめしておく」


「ステータスを偽装するスキルは確かに欲しいというか、取るのは確定してます。無いと不便そうだし。けど【翻訳】かぁ・・・」


 実は何故異世界に突然来た俺が普通に話せるのか気になったので先ほどついでとばかりにフロンスに聞いてみていた。フロンスの 説明によると、召喚術で呼ばれたモンスターは聞く言葉話す言葉が自動的に翻訳されるという特典がついているらしい。しかしある程度の知能が無いと会話が出来ないので、全てのモンスターと会話が出来るわけではないそうだ。


 実際話していて気づいたんだけど、相手の口の動きと聞こえてくる言葉にズレを感じていた。さながら雑な日本語吹き替えといった感じだ。なので普通に日本語しか離せなくても意思の疎通が出来ているわけだけど、不具合とは何なのか。


「今の世界と元いた世界で全く同じでなくとも似たようなものであれば同じ言葉になってしまう。全く同じものが存在していれば同じなのは勿論だが、全く同じものが存在しないものはある程度近い物の中で一番近いものがその名前になる。その違和感が私にはダメだった」


 とのことらしい。とはいっても異世界のものだから日本と名前が違うっていうのも自動翻訳としては不思議な話しだし、大して気にならないからこのままでいいかな。スキルやアイテムの名前も、俺の知る言葉でいくら捻っても結局同じ意味の向こうの言葉に直るらしいから、多少適当につけても大丈夫だし。


 かっこいい技名などを付けるのは中二心が大変くすぐられるんだけど、正直そういうセンスの無い俺だとすぐにネタが切れるだろうし、結局変わらないと思うと面倒という気持ちが強くなる。やはりかっこよく伝わってこそだと思いたい。


「そうか、本人がそれでいいなら私から言うことはない。後は色々試してみるといい」


「はい、そうします」


「・・・」


 って、助言とやらはこれだけなのか!


 ジェノママは満足そうに椅子から立ち上がってジェノを呼びに部屋の外へと出て行く。あーなんか色々すごいことになってきたけどこれからどうしよう。とりあえず【ステータス偽装】をとってみるか。あといくつか試してみたいこともあるしね。

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