第2話 じじいとヤンキーとの出会い
「分かった。じゃあとりあえず、どうして俺を呼び出したんだ?」
見た目は石なのに、ひどく脆そうな床の上に立ち相手の様子を伺う。
魔法使いっぽい老人といい、床に描かれた魔法陣といい、何かしらの目的があって召喚したとか俺のよく読んでる小説的な展開が俺の身にも起きたんだろう。
だからとりあえず目的を聞いてしまって、それから真面目に考えよう。
夢かもしれないけど、夢なら夢で楽しめばいいんだし。
ジェノと名乗った男は一瞬驚いたような顔をするが、すぐに愛想の良さそうな笑顔を浮かべて一歩前へ出る。
そういえば苗字にあたる部分が無かったけど、ラノベよろしく苗字は貴族しか持ってないとかそういう世界観なんだろう。
「話が早くて助かるな。このオレと旅に出て色々な冒険に付き合って欲しい。んで、その為にオレと従魔の契約をして欲しい」
契約?ほほー、従魔となると、もしかして俺って人間扱いされてない感じなの?
「ごめん、多分違う世界から呼ばれたみたいでこの世界のこと詳しくないんだけど、その辺りも教えてもらっていい?」
気弱な俺にしては敬語も使わず馴れ馴れしく聞いてみる。
不思議なんだけど、何故か敬語を使う気がしないんだよね。
老人に対しても一緒で敬語を使わなくて当然という意識が俺の中にあるのを感じる。
理由は分からない。
しかし二人とも特に気にした様子も無く、老人の方が二歩前に出てジェノの横に並んだ。
どうやら説明は老人が行うようだ。
ジェノは見た感じあまり説明とかは得意そうに感じないから、きっとそういう理由だろう。
「まず名乗るとしようか。ワシはブロンス、しがない召喚術士をやっておる者じゃ」
「召喚術士・・・興味は沸くけど今は続きをお願いしようかな」
俺の中二心をくすぐるようなワードが飛び出すが、今は触れないでおこう。
響きから察するに、ジェノの依頼で俺を召喚する儀式を行ったといったところだろうし納得の肩書きではある。
「うむ。長々と説明するのも疲れるだろうし、さし当たって大まかにだけ説明させてもらうとするかの」
「ああ、出来れば早いとこ出発しちまいたいしな」
ブロンスと名乗った老人がチラリとジェノを見て、言葉を返すジェノは何やら落ち着きが無いように見える。
気が長いようには全く見えないが契約について判断する為に必要なんだから少しは我慢して欲しいところだね。
「それでいいよ。とりあえずこの世界について軽くと、俺を召喚した理由をもう少し詳しく」
思わずため息まじりに言うが相変わらず二人は気にした様子がない。
メンタルは相当に強いようだ。
「うむ。まずこの世界はグレイアストと呼ばれておる。そして今グレイアストでは主に3つに分かれておる。いくつかの大国や小国があるが、今はわが国セイルニア王国の名前だけ覚えておいたらええ」
「ん、分かった」
小さく頷きを返して言外に続きを促す。
ブロンスも察してくれたらしくすぐに口を開く。
「そしてワシらがいるのは、コウロの街じゃ。セイルニア王国の領土の中でもあまり大きくはないが、それなりにに賑わっておる」
セイルニア王国にコウロの街ね。
首都とか王都みたいな大きいとこじゃないみたいだけど、旅に出るっていうんならどうせそういうとこにも行くんだろうし、気にすることでもないかな。
静かに聴いているのを見てとったのかブロンスはそのまま続ける。
促さなくてもいいのは楽で助かる。
「どうしてお前さんを召喚したのかだが、この世界には冒険者と呼ばれる者たちがおってな。一般人では難しい依頼をギルド経由で解決して報酬を得たり、依頼や冒険で得た素材等をギルドに買い取ってもらって生計を立てておる。モンスター退治から頼みごとまで幅広くやっておるから、この世界に必須と言っても良い存在だ」
「なるほど。冒険者っていう言葉には覚えがある」
ファンタジー系のTRPGやラノベにはよくついて回る設定だけにもちろん良く知ってる。
異世界転移と言ったらやっぱり冒険者ギルドに冒険者として登録して活躍することだしね。
「ならば詳しい説明はしなくても良さそうじゃな。してその冒険者なんじゃが、この国では二種類に分かれる。それは、テイマーと、そうでない者じゃ」
あー、説明長くなりそうだからいっそかいつまんでくれないかな。
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