骨髄抑制


抗ガン剤治療開始から1週間目の夕方。


部活を早めに切り上げたらしい、いつもの仲間たちがベッド周りに集まる。


ジェイソンは今日は副作用が起きた後でも比較的調子が良いようで、楽しそうに笑っていた。


「皆、色々と大丈夫なの?僕のお見舞いに来てくれるのは凄く嬉しいんだけど、皆が自分のことをほったらかしにしてないか心配だよ」


なんてジェイソンが話せば、皆口々に「大丈夫!」「自分のこともちゃんとやってる!」って言って笑った。


そうして笑い声に包まれた病室。


不意に、ケルシーが呟いた。


「ジェイソン、腕に痣が出来てる…大丈夫?」


ケルシーがジェイソンの腕の痣を指差した。


そこには、紫色の痣が出来ていた。


皆、一様に驚いていた。


「うーん、ぶつけた記憶もないし…なんで痣が出来たんだろ」


ジェイソンは不思議そうに首を傾げた。


「…皮下出血よ」


テイラーがぽつりと話した。


「…抗ガン剤の副作用の一つで、血小板の減少で起きるのよ」


「一応、ナースコール押しとくわ」


テイラーはナースコールを押すと、またぽつりと話し出した。


「この時期は白血球や赤血球、血液の機能が落ちるから、気をつけなきゃいけないわ」


ガブリエラがテイラーを見つめながら頷き、変わるように話し出した。


「ジェイソン、直ぐにでもマスク付けた方が良いわ、白血球の機能が落ちると免疫落ちてすぐ風邪とかひくし、感染症とかにかかっちゃうから」


ジェイソンは驚きと恐れが入り混じった表情をしつつ、棚の中からマスクを一枚取り出し、付けた。


「う、何か鼻がむずむずする…」


ジェイソンはそう言って目を細めると、軽く鼻を擦った。


「あー、たまにマスクつけるとあるよなー、アレたまにイラつくよな」


チャドが鼻を擦る身振りをしながら話す。


と、ジェイソンはそれにつられたのか、大きなクシャミをした。


「大丈夫か、ジェイソン」


トロイが笑いながら肩に手を置いた、瞬間。


トロイの顔が一瞬にして引きつった。


何故なら、ジェイソンのマスクが血で真っ赤に染まっていたから。血は顎を伝って、一滴、また一滴と落ちて服や布団に染みを作った。


「「「きゃああああああああ!」」」


女性陣の絶叫が病室中に響き渡った。


ライアンは慌ててナースコールを連打した。


チャドがジェイソンのマスクを外し、ジークが持って来たタオルで鼻を抑えた。


「大丈夫か、ジェイソン!」


チャドが問いかければ、ジェイソンは少し頷いた。


ナースが来た頃には、出血が酷かったためにジェイソンの顔色は青白くなっていた。


止血治療が施されたジェイソンは眠らされていた。


再度また酷く出血が起きる場合は輸血などで血小板の数値を増やす治療が施される、との事だった。


皆んなはホッと胸を撫で下ろし、今日のところは解散した。

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