副作用:脱毛
抗がん剤治療を始めてから2週間。
大量出血も何とか乗り越えたジェイソンは、様々な副作用に苦しみながらも仲間に支えられ、なんとか耐え抜いていた。
この日、ある副作用が現れ始めた。
抗がん剤で指折りの有名な症状、脱毛。
平たく言えば、体中の毛が抜けてハゲるという症状。
枕には抜けた毛が塊で落ちており、メンバーは皆複雑な表情になっていた。
普通なら男子でも凹む(女子なら死ぬほど辛い)脱毛症状でも、ジェイソンは変わらない、穏やかな表情で笑っていた。
“抗がん剤治療をする時点でわかりきってた事だから”
そう言って、ニコニコ笑って。
メンバーがつられて笑顔になると、ジェイソンはケラケラと笑った。
「もし完治して髪の毛生えたら、ジークみたいなヘアになるかな?」
そんなジェイソンの発言に、ライアンが噴き出し、それを皮切りに皆が笑い出した。
「じゃあ、ジェイソンがジークぐらい髪の毛伸びたらジークとツーショット撮ろうぜ!」
なんてチャドがジェイソンの肩に腕を回して。
「いいね、1日1日写真を撮って…伸び具合の比較とか楽しいかもしれない!」
ジェイソンはそう言って大笑いしていた。
そんなこんなで始まりだした脱毛は、数日でジェイソンの髪の毛を奪った。
ジェイソンはツルツルスキンヘッドになり、皆で撫で回したりして、次の日には三角バンダナをプレゼントした。
三角バンダナは、シャーペイとライアンがアルバイトしていた時に支給された奴をフルトンさんにお願いして、持って来てくれていた。
ジェイソンはバンダナを受け取って締めると、「似合う?」なんて尋ねる。
皆は笑って「似合うわ」「ああ、バッチリだ!」って声をかけた。
ジェイソンは楽しそうに笑っていた。
まるで、副作用なんて無かったかのように。
皆と話している時だけは…副作用の辛さを忘れて欲しい。
それが、皆の願いだった。
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