第9話 知らなくていいこと
考えれば考えるほど分からなくなる。
勇者とアリスティアが話していた頃、サヤは屋敷の図書室にいた。
先日新聞から渡された新聞、勇者一行がノーデルへ来る、その記事とノーデル国の歴史書などを見比べため息を吐く。
記事の内容からして、まるで勇者たちがノーデル国へ来るのは何か目的があり、そのうえ訪れるずっと前から決まっていたことのように書かれている。
大体何の目的で、と言うよりメリットで?あの時は元の世界に戻る手掛かり欲しさのあまり盲目になっていたけれど、スートリアのトップが代わったタイミングで公的にセードからノーデルへ、だなんてスートリアを煽っているとしか思えないし、スートリアよりも腫れ物であるノーデルを“あの”セードが選ぶなんてあり得ない。
サヤは新聞を綺麗に畳むと本を枕にするように机に伏せた。
アリスティアはきっと“何か”知っているのだろう、知ったうえで自分に尋ねたのだ、そして自分は会いたいと肯定した。
あの男はあれでいて、いい意味でも悪い意味でもやると言ったら徹底的にやる男だから、どんなツールを使うかは知りもしないけれどきっと、いや、必ず近いうちに勇者をこの先に連れて来る。
勇者と会わせることで、きっとその先に起こりうる何かを求めている。
思っていたより面倒なことになりそうだ。サヤは願わくばこれ以上の苦しみはないようにと祈った。
この先どう転んでもノーデル国は戦争をすることになる。
サヤを探していたのかメイドが焦ったように図書室へ入り込み声をかけてきた。
「旦那様がお呼びです、第一の客間へお急ぎください」
なんとなく、取り返しがつかないことが起こる気がする。そう思いながらサヤはメイドにお礼を言いアリスティアの元へ急いだ。
勘は嫌なことばかり当たるものなのだ。
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