2章
第10話 試験開始→最初の脱落
「氷結の
俺が口に出すと、リーゼロッテが一瞬ピクリと反応する。
そして彼女にジロリとにらまれた。
ああ、今の声でシャワー室の受験生が俺だとわかったんだろうな。そしてこの視線は、口止めに念を押してるということだろう。今の彼女の胸はパッドで底上げしているのか、巨乳と言っていいほどに大きい。
わかってるって、もともと言うつもりはないから。
俺が何も言わないのを見ると、リーゼロッテは解説を始める。
「……ここはね、
リーゼロッテはスマフォを操作すると、頭上に掲げる。
「――
リーゼロッテが叫んだ瞬間、彼女の全身がまばゆく光った。
着ていた制服が消えたと思ったら、いつかの動画で見た氷結の
まるで子供の頃に見た、魔法少女のアニメの変身シーンのようだった。
他の受験生からは「さすがリーゼロッテ様」とか「カッコいいですわ」だとかの声が聞こえてくる。春日も尊敬のまなざしで、目を輝かせていた。
「……説明を続けるわね。そしてここ、
「すごいです。こんな設備があったんですね」
春日が感激していた。他の受験生たちも驚きの声を上げている。
しかしここで、リーゼロッテがその手の中に氷の剣を生み出した。
そして――
「でも覚悟することね。――痛みは、あるわよ」
その声に、受験生全員の表情が一瞬で凍りつく。
「ちょっと、何おびえた顔してるのよ。これからあなたたちには、あたしと戦わないといけないのよ?」
「ど、どういうことですか……?」
受験生の1人が、おそるおそる質問する。
「今年の受験は、実際の戦闘で合否を決めることになったのよ。あたしと勝負して、見事勝てたら合格、負ければ不合格ってこと。どう、わかりやすいでしょ?」
「そんな……っ」
春日だけじゃない。誰もが困惑していた。
氷結の
また別の受験生が、リーゼロッテに質問をする。
「あの……受験は毎年、面接をするって聞いてたんですけど……」
「残念だったわね。今年から変わったのよ。今頃は他の受験生も、別の先輩たちと戦っているはず。さあ、あたしたちもさっさと始めましょ――と、言いたいところなんだけど」
リーゼロッテは、
「試験管用のガイドには、受験生の志望動機と使用魔法の属性は、実際に確認するようにって書いてあるのよね。だから……受験番号31番の人」
「……は、はい!」
俺たちのうちの1人が、緊張気味に返事をする。
「志望動機は『世界のために自分の魔法を役立てたい』ってあるけど、合ってる?」
「はい! その通りです!」
「そ。じゃあちょっと、あなたの魔法を見せて」
「は、はい! わかりました!」
彼女は目を閉じて、両手に魔力を集め始める。
彼女を中心に風が舞い上がり、長い髪とスカートがふわりと揺れた。
次の瞬間、彼女の両手には――二本の刀が握られていた。
「これがあたしの
「じゃあ次は、もっとも威力の高い攻撃を、あたしにしかけてみなさい」
「……え? いいんですか?」
「いつでもどうぞ」
「じゃあ……」
31番の子が刀を構えると、刀身に魔力が伝わっていく。
突如、荒々しい風が巻き起こり、彼女の近くにいた数人がたまらず後ろに下がった。今の彼女は、まるで小型台風の目だ。
「ハァァァァ……ッ、
彼女が左右の刀をクロスするように振り下ろす。風の刃が×印を描いて、リーゼロッテ目がけてまっすぐ飛んでいく。その威力はすさまじく、刃が通ったあとの床がえぐれていた。
迎え撃つリーゼロッテは氷の剣を掲げると、縦に一閃させる。
風の刃はふたつに裂けると、リーゼロッテの両脇を抜けて後方へと飛んでいった。
リーゼロッテは余裕の表情だ。ダメージはまったくない。
周囲の受験生から感嘆の声が上がる。これは両者に対してのものだろう。
もちろん俺も驚いていた。魔法を使った戦闘って、やっぱりすごいもんなんだな。俺、魔法使えないけどだいじょうぶなんだろうか。一応、対策は練ってきたけど……。
「なかなかの魔法ね。新入生なら充分合格点よ」
「本当ですか!?」
リーゼロッテの言葉に、彼女が笑顔を見せる。
しかし次の瞬間、突然姿が消えたかのようにリーゼロッテが高速移動したかと思えば、31番の子の目の前に現れて――
「でも、試験は不合格ね」
ズブリ。
彼女の胸に、氷の剣を突き刺していた。
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