第2話 依頼
「どうぞおかけください。」
黒咲は女性を事務所に招き入れソファーに座らせた。
先程テレビを見ていた所とは別の
手馴れた感じでお茶を注ぎ女性の前に置く、そしてテーブルを挟んで向かいのソファーに腰を下ろす。
依然として先輩は『ここは我の領土だ』と言わんばかりに自分の椅子に座ったままだ。
「それで、どの様なご用件で?」
黒咲は正面の女性の目を見ながら落ち着いた対応で話し始める。
「……あ、あのぅ。」
「あぁ、先輩が気になるのですね。心配しないでください、アレはゴミなので無視して平気です。」
「っちょ!!酷くない?ねぇ、我の扱い酷くない??」
「うっさい、黙って座っていて下さい。」
「はい……。」
「………。」
黒咲とその先輩のやり取りを見て唖然とした顔で女性は眺めていた。
「で、ご用件はなんでしょうか?」
黒咲は気を取り直した感じで再度女性に質問をする
「は、はい。実は………。」
「成程、ストーカー被害の調査依頼ですか。」
「はい。ここ2ヶ月近くになります。」
女性、
「最初は特に気にしていなかったのですが、日を追うごとに状況が悪化してきたのです。」
「と、言いますと?」
「初めは会社から出て数分後に背後に気配を感じ振り返ったのですが誰も居なく、気のせいかと思いました。しかし、1週間後にはそれが着いて来ているようになり。一ヶ月後には家の前まで気配が消えなくなりました。」
「その事は警察に?」
「はい。言いました。ですが警察は動いてくれませんだした。」
「それで、お主はストーカーの姿は確認したのか?」
「え?あ、いえ。見ていないです。」
「それなら警察は動かないなぁ。」
「何故です?先輩。」
突然会話に入ってきた先輩の言葉が気になり黒咲は質問をする。
「簡単な事だ。姿を見たのなら少しは動いてくれるが、見ていなとなれば話は別だ。被害妄想、現実逃避、世迷言でかたずけられる。」
「だからどうしてですか、彼女の状態を見れば…。」
「だからだ。実際に被害に有っているとしても、姿を見ていないとなればそれは他人からすれば精神的に参っている人の妄想で話が終わる。実際、警察の対応は雑だっただろう?」
「っ!!」
藤崎は自分が体験した事を言い当てられて動揺をしたように顔を強ばらせた。
「いいか眷属よ。警察は被害を受けて初めてその重い腰を動かす。何故なら被害が無くただ病んでいるかもしれない案件に使う人数がないからだ。だから我らのような探偵がいる。探偵の仕事は早い話、警察の手を付けない雑務をするのがメインと言っていい。」
「………。」
黒咲は自分に言われた言葉の意味を十分に理解していた。
だから探偵になる事を決意したのだから。
「それで、藤崎と言ったか。我に何を望む。」
そう言うとその男の口は嫌らしく歪ませ笑っていた。
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