A/Z

 もう一度、会いたいな。

 時の坂道の途中で、私を見つけてくれた、あの人に。


 どれくらい先にいるんだろう。

 どれくらい後にいるんだろう。

 どれくらい離れてるんだろう。


 もう一度、会いたいな。


 ——また願ってしまった。


 瞬間、空間がゆらめく感覚。地面と空気と水と私が溶け合って混ざり合って、一つになる。

 瞬間、時間がゆらめく感覚。今と未来と過去が一つになって私を祝福し、同時に憎悪する。

 自分がどこに立っているのか、もしくはどこに漂っているのか、わからなくなる。永遠にわからなくなる。


 不確かな主観のベールがはだけ、私は、世界に溶けていく。私は、世界システムと一体になる。


 人は本質的に孤独な生き物だ。

 人は人の主観でしか世界を見れない。

 人は人の主観でしか物事を語れない。


 時の数直線の限られた一点で、人が他者に自分の主観を真に理解してもらうことは、絶対的に不可能だ。


 しかし。

 ——否。だからこそ、人は主観を必死に伝えようとする。言葉を話し、文章を書く。人と繋がり、愛を育む。


 孤独だから、わかり合おうとする。

 孤独だから、手を繋ぐ。

 孤独だから、ずっとそばにいる。


 人は、人とは。人だから。人だからこそ。人であるがゆえに——。


 ——世界わたしは人がうらやましい。


 さて、どれくらい経っただろう。

 宇宙の座標のある一点、時の数直線のある一点で、私は覚醒する。


 A/Zは再び、覚醒する。




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