インスタント・ヒィロォ
ふと上を見ると、ちかちかとした不愉快な光を感じる。
真下にローテーブルを移動させて背伸びすると、どうにか光源に手が届いた。
悪戦苦闘の末、照明のカバーを外す。
見ると、私の部屋の六つの棒状蛍光灯は両端以外が全てちかちかと点滅していたのだった。
最後に替えたのはいつだっけ。多分ホームセンターで一番安いやつを買ったんだと思う。
もう買い換え時なのか。ケチらずにいつものやつにすれば良かったなぁ。
カバーを戻すのも面倒になって、私はコーヒーをまた一口だけ飲んだ。安物のインスタンスコーヒーは早くもぬるくなっていて、あんまりおいしくはなかった。
何で今まで気づかなかったんだろう。上を見上げて私は思う。蛍光灯は依然として不愉快な光で部屋と私を照らしている。
————。
『警告。警告。
「げっ、私の地区じゃない……」
私一人の部屋に「はぁー」と私のため息一つ。
ぐびっ、とぬるくてまずいコーヒーを飲み干すと私は立ち上がった。
再びローテーブルの上に立って蛍光灯へと手を伸ばす。指先でくるっと九十度回すと蛍光灯は簡単に外れた。
「まぁ今回はこれでもいけるか」
二つ蛍光灯を抜き取って両手に一つづつ携える。
テレビでマッチョの人が散々叩き割っているけれど、蛍光灯って見た目より硬いのだ。
横開きの扉を足で開けると、私は夕日の街に繰り出した。
ふっ、と短く息を吐いて、呼吸を整える。
「今日もいっちょやりますか!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます