第15話 切なぁなった

 殻から飛び出て山なりなって、床に落ちてコンカラコロロ、居間に踏み入った足に踏み潰された。


「痛。何や、ピーナツか」











 何や。



 お前か。











 心の声で塗りたくられた、わしと娘の顔。

 順繰りに見て息子は止まった。


「た、だいま。地元の集まりのついでに寄ってんけど、え、何?」




 何で、今、ついでに寄んねん。




 昔から間ぁの悪い奴やった。

 誰に似たんや。


 思たけど、思い出した。

 そう言うたら息子と婿、そこそこ仲良かったわ。


 頼まれたんちゃうか?

 なんぼなんでも、この間ぁや。




「こっち座れ。それ拾て、いやちゃう、踏んだやつや」


 落ちたピーナツ、早よ拾え。向こうで見とるがな。

 せや、ほなこっちゃ来い。


 婿のこと、こそっと聞き出さんなん。

 こそっと……


「何で姉ちゃんおんの。何か機嫌悪ない?」


 隣に座った息子が、こそっと言うた。











 昔から、間ぁの悪い奴やった。











「美味いど」


 落花生の袋、横に押したった。




 息子が口、開けた。

 豆食う気やったんか、もの言う気やったんか。

 分かる前にわしは立った。


 聞こえてん。

 それも、ちゃう窓から。




 編戸の向こうに茶と黒のちっさいん見つけて、嬉しなってから、わし、切なぁなった。

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